不動産取引ガイド

相続税対策と建物の合体の登記

今回は、すでにお住まいをお持ちの方向けの、相続税対策についての事例紹介です。

平成27年の税制改正以降、相続税の基礎控除の金額が大幅に減額されました。

その結果、例えば都内に一軒家をお持ちの方の場合、相続税が発生してしまうケースがとても増えたようです。

持ち家世帯を保護する「小規模宅地の特例」

例えば、一軒家を所有していた方が亡くなり相続が発生した場合、その配偶者やお子様など同居の親族が引き続きその一軒家に居住する場合には、大幅に相続税を圧縮できる制度があります。

それが「小規模宅地の特例」といわれるものです。

適用の条件などは、税務署や税理士にご相談いただきたいですが、この制度が利用できれば、一軒家の相続税評価を8割カットできることになります。

相続財産の中で大きな資産割合を占める不動産の価格を圧縮できるので、相続税について大きな影響がある制度です。

一つの敷地に建物が2棟建っているケース

今回ご相談をいただいたケースでは、ひとつの敷地に、ご両親が居住する建物とお子様世帯が居住する建物が2棟建っている、という状態でした。

ただ、現地の状況としては、2棟の建物は物理的に繋がっており、1つの建物として利用していました。

一方で、登記記録上では、それぞれ独立した建物として登記がされている状態でした。

そして、建物の登記が分かれている現状では、先ほどの「小規模宅地の特例」が適用できない可能性があるという税理士の指摘があったのです。

そこで、2棟の建物を現況に合わせて「建物の合体の登記」を行うことになったのです。

登記の状態をアップデートする意味

そもそも、建物の増築や今回のように合体させた場合などは、その都度きちんと登記を申請することが法律で義務付けられています。

また、登記を怠った場合には、罰金の制度もあります。

登記の申請を長いこと放置してしまうと、建物図面や建築の契約書など、登記の申請に添付すべき書類が紛失してしまうリスクもあります。

今回のケースでは、建物の合体工事をした際の工事会社の請負契約書や、建物の図面等の書類がきちんと残っていたので、スムーズに手続きを進めることができました。

そしてこの建物の合体の登記が無事にできましたので、相続税も500万円以上安くすることができそう、とのことでした。

今回は相続税の関連でメリットが生じたケースでしたが、こうした建物の登記記録などをアップデートすることは、売却する際の信頼性や、資産価値の維持にもつながることです。

まずは、何か土地や建物について変更が生じた際には、必要な手続きがあるのではないか、と考えていただく習慣を持っていただき、少しでもご不明な点があれば、不動産エージェントまでお気軽にご相談ください。

税務署からの「お尋ね」が来たら、どうすれば良いのか?4前のページ

コロナ禍で住宅ローンを見直す際のポイントについて次のページ

ピックアップ記事

  1. 立地適正化計画をご存知ですか?
  2. 買ってはいけない物件を自分でチェック
  3. 危険な場所は 地形図で見分ける
  4. その家は人口減少した将来でも売ることができる家ですか?
  5. 建物インスペクションを実施する最適なタイミングとは?

関連記事

  1. 不動産取引ガイド

    電力自由化で別の問題がおきています。

    最近、CMなどで電力自由化を耳にします。2016年4月に、法律…

  2. 不動産取引ガイド

    ベタ基礎と布基礎の違いについて

    家を建てるときに外観や設備などについてはこだわる人が多いですが、家の基…

  3. お金・ローン・税金

    二重ローン問題 債務免除減額の手続きについて

    熊本の地震で被災された皆様には、心よりお見舞い申し上げます。&…

  4. 不動産取引ガイド

    介護を考えたリフォーム

    私にはは80歳を超えた両親がいます。現在は同居はしておらず、両親は…

  5. 不動産取引ガイド

    旗竿地のメリットとデメリット

    土地や戸建を探していますと、よく目にするのが「旗竿地」というタイプの土…

  1. お金

    700人に1人の割合?!自治体の間違いで固定資産税を過大に払っている?!
  2. 不動産取引ガイド

    空き家対策されていますか?
  3. かし保険

    安心R住宅の説明会に行ってきました
  4. 不動産取引ガイド

    2018 年5月度の不動産相場
  5. お金・ローン・税金

    タワーマンションの高層階は増税?!対象となるマンションとスタートの時期は?!
PAGE TOP