不動産取引ガイド

土地取引の重要な選択肢「公簿売買」と「実測売買」を正しく理解する?!

2024年から2025年にかけて、日本の不動産市場は活況を呈しています。
首都圏では土地価格が上昇傾向にあり、2024年の㎡単価は26.40万円に達しました。
こうした市場環境の中、土地の売買を検討する方が増えていますが、その際に必ず理解しておくべき重要な概念が「公簿売買」と「実測売買」です。

■不動産の取引において、面積の違いが生む重大な影響

土地売買において、対象面積は売買代金を決定する最も重要な要素の一つです。
登記簿に記載されている面積(公簿面積)と、実際の土地の面積が異なるケースは決して珍しくありません。
この違いをどのように扱うかによって、「公簿売買」と「実測売買」という二つの取引方法が存在します。

■不動産取引における、公簿売買(登記簿売買)とは?

公簿売買とは、登記事項証明書に記載されている面積を基準として売買代金を確定し、後に実測を行ったとしても面積差による代金の精算を行わない取引方法です。
実測の結果、公簿面積より実際の面積が少なくても買主は代金減額を請求できず、逆に多くても売主は代金増額を請求できません。
かつては山林や原野、田畑など、広大な土地で単価が低い物件の取引に主に用いられていましたが、近年では測量コストや時間を省けることから、宅地取引でも公簿売買が増加しています。
特に、既に実測済みで公簿面積と実測面積が一致している場合や、面積差があってもトラブルを避けたい場合には、契約書に「実測面積と差異が生じても取引金額は変更しない」旨を明記することが一般的です。

■不動産取引における、実測売買の仕組みとメリット

一方、実測売買は契約締結時に実測が完了していない場合に、売主が引渡しまでに測量を行い、決済時に測量図を買主に交付することを義務付ける方法です。
公簿面積と実測面積に差異があれば、単位面積当たりの単価を基準に売買代金を精算します。
実測売買では、売買契約時に1㎡あたりの単価を確定し、とりあえず登記簿上の面積で売買金額(概算)を決めておきます。
その後、残代金決済までに行われる実測に基づいて最終的な売買代金を確定させるのです。
なお、坪単位での精算は3.30578という小数点以下の計算が煩雑になるため、1㎡単位の単価で精算するのが一般的です。
実測売買は公簿売買と比べて手間や費用がかかる一方で、境界や越境の問題を未然に防ぎやすく、買主・売主双方にとって公平な価格設定が可能というメリットがあります。

■不動産取引における、境界トラブルのリスクを軽視してはいけない

土地の境界トラブルは依然として多く、隣地との認識の食い違いや、所有者不明土地の存在が問題となっています。
2020年の国土交通省調査では、全国の所有者不明土地の割合は24%に達しており、2024年4月に相続登記が義務化されたものの、すぐには解決しない状況です。
境界トラブルがある土地は売却が困難になり、価格交渉も厳しくなる傾向があります。
また、境界トラブルは近隣トラブルに発展し、刑事事件に至るケースも報道されています。
不動産売買契約書の標準ひな形にも「境界の明示」という条項が盛り込まれており、境界を示した上で不動産を引き渡すことが前提とされています。

■2025年の市場環境と賢い選択

2025年の不動産市場は、海外投資家による積極的な投資や、インバウンド需要の高まりなど、活発な動きが継続しています。
政策金利の動向や日米の政治環境の変化など、不確定要素も多い状況です。
こうした市場環境下では、土地取引における面積リスクを適切に管理することがますます重要になっています。
初めて不動産取引をする買主の方は特に注意が必要です。
公簿売買と実測売買の違いを十分に理解しないまま契約してしまい、後になって「面積が違う」とトラブルになる事例は後を絶ちません。

■不動産取引において、どちらを選ぶべきか?!

公簿売買は取引がスピーディーで測量費用も不要というメリットがありますが、将来的な負担やリスクを後回しにしている側面があることを忘れてはなりません。
一方、実測売買は時間とコストがかかりますが、境界を明確にすることで後々のトラブルを大幅に回避できます。
土地の資産価値を正しく評価したい場合や、将来的に建物を建て替える計画がある場合には、実測売買で境界をクリアにしておくことが推奨されます。
契約時には、売買契約書の精算基準をよく確認し、どちらの方法を選択するのか、その理由とリスクを十分に理解した上で判断することが大切です。
信頼できる不動産業者に相談し、物件の特性や取引の目的に応じて最適な方法を選択しましょう。
土地取引は人生における大きな決断です。
最低限の知識を身に付け、後悔のない取引を実現してください。今後の参考にお役立てください。

法人営業部 犬木 裕

 

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