現在、東京23区を中心とした首都圏の賃貸市場で、ある「異変」が起きています。
それは、これまで一般的だった「普通借家契約」に代わり、「定期借家契約」を採用する物件が急速に増えていることです。
つまりは賃貸市場の「ルール」が変わり始めているという事です。
特に港区や渋谷区などの人気エリアでは、新規募集物件の約2割近くが定期借家であるというデータもあり、かつての「転勤の間だけ貸す」といった特殊な事情による契約形態から、「戦略的な賃貸経営」のための標準的な選択肢へと変貌を遂げています。
なぜ今、定期借家が増えているのか。
そして、それがなぜ「家賃の上げやすさ」に直結するかについて、最新の不動産市況を踏まえながら、そのメカニズムと今後の展望を詳しく解説します。
■「定期借家契約」とは何か? 普通借家との決定的な違い
まず、基本的な仕組みを整理しておきましょう。
日本の賃貸契約には、大きく分けて2つの形があります。
「普通借家契約」、「定期借家契約」です。
普通借家契約(従来の主流)は更新が前提であり、 借主(入居者)が希望する限り、正当な理由がない限り貸主(オーナー)は更新を拒否できません。
つまり、家賃改定の難しさについては、家賃を上げるには借主の同意が必要であり、協議が整わなければ裁判手続き等が必要になるなど、ハードルが非常に高いのが現実です。
しかし、 定期借家契約(増加中)は期間満了で終了する契約となる為、契約で定めた期間(例:2年)が来れば、自動的に契約が終了します。
「更新」という概念がなく、住み続けたい場合は「再契約」を結ぶことになります。
また、再契約の主導権は貸主にあるといった点も大きく、貸主側が「次回の賃料はこの金額なら再契約します」と条件を提示し、借主が同意しなければ退去してもらうことが可能です。
この「再契約時に賃貸条件をリセットできる」という点が、現在のインフレ局面においてオーナー側から強く支持される最大の理由です。
■なぜ都心で定期借家が増えているのか?
東京都心で定期借家が選ばれる背景には、3つの背景があり、近年の極端な不動産市況の変化があります。
1つ目は、「止まらない家賃の上昇トレンド」という事です。
東京23区の家賃相場は、2025年から2026年にかけても上昇し続けています。
建設コストの高騰や、利便性を求める共働き世帯の都心回帰により、需要が供給を圧倒的に上回っているためです。
普通借家契約では、一度入居した人の家賃を相場に合わせて引き上げるのは困難です。
しかし、定期借家であれば、2年ごとにその時の「最新の相場」で契約をやり直せるため、オーナーは収益機会を逃さずに済みます。
続いて、2つ目は「物価高・コスト増への防衛策」という点です。
修繕費、管理費、固定資産税など、マンション経営にかかるコストも軒並み上昇しています。
こうしたコスト増を家賃に転嫁しやすい仕組みとして、定期借家が選ばれています。
最後に3つ目は「優良な入居者の選別」という点です。
定期借家は、騒音トラブルや家賃滞納などがある入居者に対し、「次回の再契約を行わない」という選択肢を貸主に与えます。
これは資産価値の維持を重視するプロの投資家や大手デベロッパーにとって、リスク管理上の大きなメリットとなります。
■「家賃が上げやすい」メカニズムの裏側
定期借家契約において、なぜ家賃改定がスムーズ(貸主有利)に進むのか、その具体的な構造を見ていきましょう。
1点目は「更新」ではなく「新規契約」の扱いという事です。
普通借家の更新では、現在の賃料からの「増額交渉」になりますが、定期借家の再契約は、法的には「全く新しい契約」です。
極端に言えば、近隣相場が20%上がっていれば、貸主は「20%増の賃料でなければ再契約しない」という強い姿勢を取ることができます。
また、「借地借家法第32条(賃料増減請求権)の特約」が挙げられます。
定期借家契約では、特約によって「期間中の賃料減額請求を認めない」といった規定を置くことが可能です(※事業用等でより顕著ですが、居住用でも活用されるケースがあります)。
これにより、貸主側の収益の見通しが立てやすくなります。
■借主(入居者)側のメリットとリスク
一方で、入居者にとって定期借家は「デメリットばかり」なのでしょうか?
メリットについては初期費用の安さや物件の質の高さが挙げられます。
定期借家物件は、契約期間が決まっているという制約がある分、「相場より少し安い賃料」や「礼金なし」などの条件で募集されることが多くあります。
また、分譲マンションの賃貸出しなど、設備グレードが高い物件がこの形態をとることも多いのが特徴です。
逆にリスクとしては、「住み続けられる保証がない」という事です。
最大の不安は、やはり「2年後に追い出されるかもしれない」という点です。
しかし実際には、多くの定期借家(特に再契約型)では、トラブルさえなければ再契約を前提としているケースがほとんどです。
ただし、その際の「賃料アップの受け入れ」が実質的な条件となります。
■配信者として伝えたい「今後の対策と心構え」
このトレンドを踏まえ、情報配信としてどのようなアドバイスをすべきでしょうか。
ターゲット別に整理すると、マンションオーナー・投資家へのアドバイスとしては、出口戦略を明確にすることが重要です。
将来的な売却や建て替え、自己居住の可能性があるなら、定期借家は必須の選択肢です。
また、賃料改定条項の整備についてです。
再契約時の基準を明確にしておくことで、入居者とのトラブルを防ぎつつ、適切な収益を確保できます。
逆に、これから家を探す入居者へのアドバイスとしては、「再契約可能か」の確認は今まで以上に重要となります。
定期借家には「再契約不可(完全終了)」と「再契約相談可」の2種類があります。
必ず重要事項説明で確認しましょう。
家賃上昇のリスクを織り込むという事です。
2年後の再契約時に、周辺相場に合わせて家賃が上がる可能性があることを念頭に置いた予算計画が必要です。
■日本の賃貸市場も「欧米化」が進む
アメリカや欧州の主要都市では、数年ごとに契約が終了し、その都度マーケットプライスで契約し直すスタイルが一般的です。
日本でも、特に都心の高価格帯マンションにおいては、この「市場連動型」の定期借家契約が主流になっていくと考えられます。
「長く安く住み続ける」という従来の常識が通用しにくくなる中で、貸主も借主も、より柔軟で情報の透明性が高い賃貸経営・住まい選びが求められる時代が到来しています。
今後の参考にお役立てください。
法人営業部 犬木 裕




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