不動産取引ガイド

老後を考えるなら断然持ち家が有利です

気になるニュースを見かけたので記事にしました。
高齢者になると借りる家を探すのが思った以上に難しいようです。

【特集】「内覧さえさせてもらえない」高齢者というだけで断られる住居の“貸し渋り”の実態 2025年には“団塊の世代”全員が75歳以上に…支援に名乗り出た人々の活動に密着(読売テレビ 2024/2/25)

□賃貸VS購入 賃貸派の最後の姿

住宅購入に当たって、賃貸が良いか購入が良いかというテーマは、言わば鉄板ネタというもので、賃貸派・購入派それぞれに意見を交わしています。
賃貸派の意見としては「自由に住み替えることができる」というのがメリットとして挙げられることが多いのですが、それができるのも元気に働いているうちで、紹介したニュースを見ると、高齢者になると”自由に”住み替えできるというわけではなさそうです。
法律で賃借人の権利が守られているので、大家さんの都合で追い出されるというのは簡単には起きないのですが、家賃が払えなくなったなどお金の問題で退去せざるを得なくなった場合には困った事態になりそうです。

□老後資金問題

少し前に大きな話題となりましたが、私たち日本人は現役時代に、将来働けなくなった場合を想定して資金を確保しておかなければなりません。
先に紹介した賃貸VS購入において、お金については賃貸派は賃料及び諸経費で計算され、購入派は住宅ローンの返済額と住宅取得にかかかる諸経費、維持管理費などを計算し、金額差が大きくないのであれば、自由に住み替えができる賃貸の方が良い、というのが賃貸派の意見です。
しかし、この考え方には誤りがあります。
購入派が住宅ローンを完済し終えた場合、月々の支払いに大きな差が生じます。もちろん維持管理費用を考えなくてはならないのですが、老後を考えた場合は、住宅ローンを返済し終えた家を持っているというのは非常に有利です。
また、賃貸VS購入論争で常々疑問に思っていることなのですが、特に賃貸派のシミュレーションでは、購入した住宅を売却できることが想定されていません。
老後資金がショートしてしまう事態が発生した場合、賃貸派は住んでいる家から退去を余儀なくされ、冒頭にご紹介した”貸し渋り”のような問題に直面しますが、購入派は持ち家を売却するという選択肢が残されています。
もちろん買った金額を上回ったり、これまで返済してきた住宅ローンの金額に相当する額で売却できるなんてどこにも保証はありませんが、かと言って古い家だから価値がないとか売れないと切り捨ててしまうのも極端な判断だと思います。

□困った時に資金化できる家を買う

日本はかつて新築偏重の住宅市場でした。新築偏重時代は古い家には価値がなく、土地として売却し、上物は解体して新しい家を新築するという考え方でした。
この考え方で行くと、賃貸VS購入論争で賃貸派が古い家には価値がないと判断するのもわからなくはないです。
しかし今は中古住宅も普通に流通しています。建築技術も進歩して、一般の方が思うよりも長く住むことができるようになったので、新築偏重時代のように古くなったら無価値という判断にはならなそうです。
ただ、戸建ての場合は、最悪の場合でも土地で売ることができていたのですが、人口減少社会においては、そもそも住宅購入する人が減っているので、そのエリア(土地)に住もうと考える人がいない、売ることも貸すこともできなくなることが想定できます。

住宅購入を検討されている方は、20年後~30年後でも売ろうと思えば買い手が見つかる、人口減少時代にあっても人が減り過ぎない(あわよくば増えて欲しい)そんなエリアを選ぶことが非常に重要となっています。

□賃貸派も購入派も60歳~65歳で今後の住環境を考える

賃貸派の人は定年を迎えるまでに今後の住環境を考える必要があります。
仮に定年までに十分な貯蓄ができたとしても、高齢になればなるほど家を借りにくくなるからです。
現在の平均余命を考えると、85歳くらいまでは想定しておかないといけません。
65歳の時点で後20年くらい住み続けられる家なのかどうかを冷静に判断する必要があります。

購入派の人も定年を迎えるまでに今後の住環境を考える必要があります。
選択肢は「売る」「貸す」「住み続ける」のいずれかです。住み続けることを選択した場合は、賃貸派と同じく85歳くらいまで過ごせるように、家のメンテナンスをしておく必要があります。
悪くなってからリフォームするとお考えの方が多いのですが、高齢になればなるほどリフォーム工事が負担になります。
また、メンテナンスに必要なコストが高額になった場合は改めて住み替えを検討するきっかけになりますし、高齢者向け施設への入居が余儀なくされた場合には、何も手入れをしていない家に比べれば、売りやすいし、貸しやすい家になります。

賃貸派も購入派にも共通するのですが、後期高齢期の住環境問題を先送りにすると、困るのはご自身ではなくご家族です。
子供や親戚に迷惑をかけたくないとお考えの方は、しっかり判断できるうちに今後の住環境について計画するべきだと思います。

最後に高齢者の住宅環境を考えると購入派が有利です。
賃貸VS購入においては、住宅ローン返済中のリスク(病気・失職)が大きな懸念材料なのですが、住宅ローンを完済するまで到達できれば、持ち家がある方が圧倒的に有利です。
また、エリアや広さなど条件を同じにすれば、住宅ローン返済額よりも賃料の方が高くなりますので、将来に向けて貯蓄をしなければならないという観点でも、あまり語られることはないのですが、賃貸派の方が不利と言えます。(賃貸派は貯蓄ができるというのは比較条件がイーブンでない記事でよく見かけます)

賃貸のままでいいかな?と少しでも考えたことがある方は、今だけでなく、少し遠い将来にも目を向けて判断することをお勧めします。

不動産価格の四つの基準 その1前のページ

戸建ての場合の修繕箇所次のページ

ピックアップ記事

  1. 買ってはいけない物件を自分でチェック
  2. 危険な場所は 地形図で見分ける
  3. 立地適正化計画をご存知ですか?
  4. 住宅購入と 生涯の資金計画
  5. 建物インスペクションを実施する最適なタイミングとは?

関連記事

  1. 不動産取引ガイド

    備えあれば憂いなし!先日の地震は危険信号?

    先日の5月30日に小笠原諸島西方沖を震源とした地震が発生しました。その…

  2. 不動産取引ガイド

    低炭素住宅【 省エネ住宅シリーズ】

    省エネ住宅シリーズ、今回は低炭素住宅です。低炭素建築物として認…

  3. 不動産取引ガイド

    大事な老後資産 50歳になったら検討しましょう。

    現在、住んでいる「家」は自分達の老後の時期大丈夫ですか?広過ぎる、…

  4. 不動産取引ガイド

    2020 年12月度の不動産相場

    公益財団法人東日本不動産流通機構(通称:東日本レインズ)から、2020…

  5. 不動産取引ガイド

    片手仲介・両手仲介

    安心安全な不動産取引を実現するために私たち不動産仲介会社が売主様、買主…

  6. 不動産取引ガイド

    「新耐震」と「旧耐震」の境目の話

    ものすごく限られた範囲の話で、ほとんどの人が関係しない、そんな話題です…

  1. 不動産取引ガイド

    相続争いの火種 ~遺留分について~
  2. 不動産取引ガイド

    不動産の相続登記が一部無償になります!
  3. 不動産取引ガイド

    実際に住んで感じた旗竿地のメリットとデメリット
  4. お金・ローン・税金

    火災保険。10年超の契約引受が停止になってしまします。
  5. リニュアル仲介通信

    転ばぬ先の杖!?住宅購入時の火災保険の考え方
PAGE TOP