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不動産購入時の住宅ローン事情!物件価格は年収の7倍までに抑える?!

3月に入り、不動産が最も動く時期となっています。それも新生活シーズンとなり、転勤、就職、進学による引っ越しが増え、企業の異動シーズンに伴う転居が多く、また、需要が高いため、賃貸・売買ともに価格が上がりやすい時期となります。

そのような時期に不動産購入をされる方は住宅ローンの組み方にご注意いただきたいと思います。住宅ローンの金利タイプ選択には3000万円の壁があり、ここを超えると一気に変動型を選ぶ割合が高まるというデータが三井住友トラスト・資産のミライ研究所社にあるようです。その為、このデータを元に住宅ローン事情について、解説をしていきたいと思います。

■まずは住宅ローンの金利について

住宅ローンには返済中に金利が変わることがある変動型と、返済中の一部期間もしくは全期間の金利が変わらない固定型があり、また最近では固定金利期間選択型があります。

一般的に「変動金利」は下記のような特徴があります。

特徴: 金利が半年ごとに見直される
メリット: 低金利の時に借りると、返済額が少なくなる
デメリット: 金利が上がると、返済額が増えるリスクがある
向いている人: 短期間で完済する予定の人、金利の変動リスクを取れる人

次に「固定金利」には下記のような特徴があります。

特徴: 借入時の金利が完済まで変わらない
メリット: 返済額が一定で、将来の計画が立てやすい
デメリット: 変動金利より金利が高めに設定されていることが多い
向いている人: 長期的に安定した返済をしたい人

最後に、「固定金利期間選択型」には下記のような特徴があります。

特徴: 最初の一定期間(3年、5年、10年など)は固定金利で、その後は変動金利か再度固定を選択
メリット: 初期の金利が比較的低めで安定している
デメリット: 固定期間終了後の金利がどうなるか分からない
向いている人: 最初の数年間は安心して返済したいが、その後の金利変動にも対応できる人

三井住友トラスト・資産のミライ研究所社の2024年調査では当初借入金額が多くなるほど変動型が選ばれていたようです。1000万円刻みでみると、特に「3000万円以上4000万円未満」になると、1つ下の「2000万円以上3000万円未満」より一気に約10ポイント高い65.3%に上昇しているようです。

借入額が大きくなれば毎月返済額も膨らむので、なるべく低い金利にして負担を抑えたい心理が働く傾向があるようです。一般にローン金利は変動型が最も低く、固定する期間が長いほど高くなっていきます。足元では変動型と全期間固定型の金利差は1.4%程度と、過去約7年間で最低だった2019年9月と比べると3倍弱に拡大しているようです。

■値上がり不動産購入時には目先の負担が減る変動型を選択している?!

ここ数年は都心マンションを中心に、住宅価格も上昇し、ローン借入額も膨らみやすくなっています。ここで変動型と固定型の金利差の拡大が目立ってくれば、将来に向けての金利上昇リスクへの対応より、まずは目先の負担抑制を優先する人が増えた可能性は高いです。実際、三井住友トラスト・資産のミライ研究所社の2023年以前の調査をみると3000万円(3000万円の壁)を境に変動型割合が高まる傾向は年々、強まっているようです。

もっとも、借入額は近年、1億円以上も借りる人がいるなど人によって様々となります。現在の全期間固定型金利は年1.9%程度。よく選ばれる35年の元利均等返済で計算すると、3000万円の返済額はおおむね年100万円を突破する水準となります。ちなみに2000万円なら、返済額は年80万円弱にとどまります。計算をする前は金利上昇リスクを避けたいと考えていた人だとしても、返済負担が年100万円の大台に乗るとわかれば心理的な抵抗が強まり、低金利の変動型が魅力的に見えてきても不思議ではないという見立てとなります。

■物件価格は年収の7倍までに抑える?!

住宅ローンの借入額が年収の何倍になるかを計算するのが年収倍率と呼ばれるものです。一般に7倍程度までに抑えるのが望ましいとされています。年収に対して借入額が過度に多ければ、ほかの生活費に振り向ける支出の余裕がなくなるうえ、もし転職や失業、配置転換などで減収に見舞われると返済も行き詰まりかねません。

国税庁によれば、1年を通じて勤務した民間給与所得者の平均給与は最新の2023年調査で約460万円となります。この金額にローンの年収倍率の目安である7倍をかけると3220万円になります。つまり平均的な人にとって借入額3000万円は、年収に対する負担感が重く感じ始める境目である可能性も高いと言えます。

変動型と全期間固定型の金利差が今の半分、0.7%程度まで縮まることがない限り、今後も3000万円を超えて多く借りるほど変動型の利用率が高まる傾向は大きくは変わらないと予想されています。

■物件価格は年収の7倍までに抑えても変動型を選んだ場合、「浮いたお金」は…

日銀は今後も利上げ継続の姿勢を示し、変動型の金利も現実に上がり始めました。変動型の低金利で生じた家計の余裕を浪費せず、貯蓄したり、流動性の高い資産で運用したりして、金利上昇に備えていただきたいと思います。余裕資金が十分にあれば万一、大幅な金利上昇があっても繰り上げ返済などで家計負担は調整可能となります。

逆に言えば、変動型の低金利を選択しても、なお貯蓄や運用に回すお金の余裕が生まれないなら、そもそも借入額がその家計にとって過剰ということになります。まだ検討中なら借入額の見直し、既に借りた後なら他の支出の見直しや増収に向けての取り組みを急ぐ必要があります。少なくとも、長く金利低下が続いた過去とは異なり、これからは金利が常に上がり得ると想定した行動が欠かせません。

今後の参考にお役立てください。

法人営業部 犬木 裕

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