不動産取引ガイド

被災住宅の各種手続きについて

熊本の地震で被災された皆様には、心よりお見舞い申し上げます。

私の父方・母方、両方とも熊本市内に実家があり、多くの親せきが被災しております。

阪神淡路大震災をきっかけに住宅の耐震化に携わることになった私が今できることとして、少しの知見ではありますが、過去の災害ボランティア活動からの経験で情報を発信します。少しでも何かお役に立てればと思います。

早く元の生活に戻りたい一心で、家の修繕を始められる方もいらっしゃいます。しかし、り災証明・損害認定などが無いと「公的支援が受けられない」「損害保険が支払われない」という事態が発生します。手を加えられる場合には、なるべく写真・動画などで正確に証拠を残しておく必要があります。

以下、被災住宅の手続きの順番でお伝えします。まずは、応急危険度判定、り災証明書の申請を最寄りの自治体にされることをお勧めいたします。(混乱していて、受付対応が十分でなかったり、調査がずいぶん先になることも予想されます。)地震保険に加入されている方は、保険会社に保険金払い出しの請求をされることをお勧めします。

 

①緊急判断

緊急性が高いこととして、そもそも荷物を取りに行ったり、片づけに家に入ってよいかということです。相次ぐ余震で倒壊するかもしれません。この判断は、建築士がいればお願いし、少しでも建築に携わったことのある人に意見を求めることです。これは、公的な立場・手法ではありませんが、緊急性が高い場合はやむをえません。折れている柱が1本でもあった場合、既に垂直荷重を受けられていないので、住家に入ることはやめた方が良いでしょう。この段階は、平成28年4月23日現在、もう過ぎているように思います。

 

②応急危険度判定(http://www.kenchiku-bosai.or.jp/oq/index.html

公的な危険度判定です。判定士の資格を持った建築士が全国から集まり、自治体を通じて「調査済み」「要注意」「危険」の3種の判定をします。本来は急いで行う必要があるものですが、人命救助、最低限のライフラインの確保、避難所の整備等のほうが緊急性が高いため、少し落ち着いてから順次行われます。避難所生活の皆様は早く家に帰りたいところですが、判定を受けてからが安心だと思います。

参考:熊本県の被災建築物応急危険度判定窓口 土木部 建築課 TEL:096-333-2533

 

③り災証明書

自治体による被害認定です。「全壊」「大規模半壊」「半壊」「一部損壊」の4種の判定をします。「被災者生活再建支援金」の支払いを受けられることもあります。この支援金を受けるにあたり、必要となる書類が「り災証明書」で、これは住居の被災の程度を示す書類です。

参考:熊本市のり災証明について

http://www.city.kumamoto.jp/hpkiji/pub/detail.aspx?c_id=5&id=2451

災害に関わる住家の被害認定基準運用方針

http://www.bousai.go.jp/taisaku/pdf/shishinall.pdf

 

④損害保険会社の損害認定

被保険者からの請求に応じて、専門の判定員が派遣され損害認定を行います。損害保険会社は全国から判定員となる建築士を募集して派遣するので、多少時間がかかると思います。損害保険会社による損害認定と自治体による被害認定の内容は同じではありません。両者の認定基準が異なるため、損害保険会社で半損と認定された損害でも、自治体による認定では全壊と認定されることがありえます。

 

⑤耐震診断

今までのものは、危険性の判定や被災状況の認定であり、構造的にどうであるかを見るものではありません。危険性の判定、被災状況の認定の手続きを経てから、耐震性の確認という流れになると思います。被害住宅の修繕と耐震性の確保、ついでにリフォームなどを検討することになります。耐震診断や改修については補助金が出る場合があります。しかし、戸数限定であったり(熊本市の耐震診断費用助成は平成28年度分は2戸)、平成28年4月23日現在は、年度替わりのタイミングでもあるので、執行が5月に入ってから(熊本市の耐震改修費用の補助は平成28年5月6日から)だったりします。ほとんどの自治体は、申請後に耐震診断の申し込み、耐震改修工事の請負契約をしなければならないので、注意が必要です。詳しくは、最寄りの自治体にお問い合わせください。

参考:熊本市耐震診断費用助成

http://www.city.kumamoto.jp/hpkiji/pub/detail.aspx?c_id=5&id=1330

熊本市戸建木造住宅耐震改修事業

http://www.city.kumamoto.jp/hpKiji/pub/detail.aspx?c_id=5&id=1284&class_set_id=3&class_id=633

住宅の耐震性に関するよくある「勘違い」前のページ

地震保険金の早期お支払いに向けた対応について次のページ

ピックアップ記事

  1. 危険な場所は 地形図で見分ける
  2. 建物インスペクションを実施する最適なタイミングとは?
  3. 住宅購入は不安でいっぱい
  4. 立地適正化計画をご存知ですか?
  5. 住宅購入と 生涯の資金計画

関連記事

  1. 不動産取引ガイド

    家を買うなら知っておきたい「品確法」のポイント!

    品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)が施行されたのは2000年…

  2. 不動産取引ガイド

    土地の所有権の上下の限界!

    土地を所有している方はその土地のどこまでが所有権の範囲かご存知でしょう…

  3. お金・ローン・税金

    住宅ローン返済中に債務者が死亡した場合の残りの住宅ローンってどうなるの?

    住宅ローン返済中に死亡や高度障害になった場合でも、団体信用生命保険に加…

  4. 不動産取引ガイド

    怪しい緑と水の関係

    いわずもがな、日本と自然災害は切っても切れない関係にあります。…

  5. 不動産取引ガイド

    屋根裏部屋とロフトとの違い

    屋根裏部屋とロフトとの違いについて家族に質問されましたので調べてみまし…

  6. 不動産取引ガイド

    住宅ローン減税OK=新耐震ではありません!新耐震と旧耐震の区分

    2022年の税制改正で、住宅ローン減税の見直しが行われました。中古住宅…

  1. 不動産取引ガイド

    内水氾濫・外水氾濫をご存知ですか?!不動産購入時に知っておきたい情報について
  2. 不動産取引ガイド

    空き家対策されていますか?
  3. 不動産取引ガイド

    大人気『ポケモンGO』、AR技術を活用したアプリが不動産業界を変革する?!
  4. 不動産取引ガイド

    家を購入したけど、失敗してしまいました!?
  5. 不動産取引ガイド

    浮世絵で知る!不動産のリセールバリューとハザードリスク。
PAGE TOP