不動産取引ガイド

住宅購入前に「老後2000万円問題」を考慮し、住宅ローンと上手く付き合う?!

住宅ローンを組んでご自宅を購入する際には住宅ローンの完済後の生活をイメージしておく事が必要です。最近は住宅ローンを借りる年齢が上昇しており、老後の暮らしに悪影響を及ぼす可能性があります。晩婚化に伴う借入時点の平均年齢の上昇、住宅価格の上昇(借入額の増加)、物価上昇リスクなども考慮して返済期間の長期化には注意をしてもらいたいと思います。

■不動産購入前に知っておきたい「老後2000万円問題」について

ちなみに、2019年には「老後2000万円問題」が大きな話題となりました。「老後2000万円問題」とは2019年に金融庁より発表され、老後資金が2000万円不足するという報告書が話題となりました。この問題は政府が幕引きを図ったことで収まりましたが、老後の経済不安がなくなったわけではありません。つまり、老後の備えは住宅ローンを支払いながら準備をしておく必要がありますので、不動産購入時には頭の片隅に「老後2000万円問題」の内容をイメージしておいていただければ幸いです。

■老後に必要な資金の内訳を把握しておきましょう!

2018年の家計調査から70歳以上世帯の消費支出を書き出し、老後に必要な資金の内訳を把握しておきましょう。

食料: 6万9234円
交通・通信: 2万5919円
教養娯楽 :2万2794円
光熱・水道 :2万1882円
保健医療 :1万5135円
住居 :1万4347円
家具・家事用品:9582円
被服及び履物:6745円
教育:482円
その他の消費支出: 5万0913円

合計:23万7033円

この内訳を見て、住居費の安さが重要なポイントです。じつは家計調査によれば、老後に賃貸住宅で暮らす人は約1割程度となり、そのため金額の平均はかなり低くなってしまいます。高齢世帯における家賃のボリュームゾーンは4~6万円なので、賃貸住宅で暮らす場合は、その分の家賃を計画しておく必要があります。この内訳をみてみると、
住宅ローンが組みやすい若い頃に住宅購入を行った方が、老後の住居費を抑えた生活が可能となる事を表しています。

住宅金融支援機構のデータを調べてみると、借入時の平均年齢は2010~11年度ごろは38歳程度でしたが、2014年度以降は平均年齢が40歳程度になり上昇しています。また、借入時点の平均約定期間も2009年度の約25年から2019年度には27年に長期化しています。住宅ローンを借りる時点で退職金の一部を返済に回すことを想定していることがうかがえます。つまりは現在の終身雇用制度の問題もあり、常に同じ会社に勤めて、また毎年年収が上がっていく状況は難しい事を想像すると、退職金での完済や完済後の老後生活を考えるとなるべく早く老後に必要な資金準備を行っておくことが大切です。

2021年4月から70歳まで働き続けたい人に就労機会を用意することが企業の努力義務になりましたので、完済年齢が上昇しても問題ないと考える人もいるかもしれません。しかし、現在の給与水準が上昇していく、あるいはそのまま変わらないということは考えにくく、再雇用という形態ならば収入は大きく落ち込む可能性があります。65歳以降の住宅ローン返済は決して楽観視できない事と、上記にある70歳以上世帯の消費支出の為に貯蓄を増やす努力が必要です。

■「老後2000万円問題」には住宅リフォーム等の費用は考慮されていない!

「老後2000万円問題」の中には、介護費用や住宅リフォーム費用などが含まれていないことです。一般的には住まいを購入してから30年程度経過すれば外壁や屋根の防水処理だけでなく、水回り設備の交換やバリアフリー化の改修などが必要になります。その費用は数百万円に上ることもありますので、2000万円では足りない事態も考えておく必要があります。

某テレビCMでは「ご利用は計画的に・・・」という有名なキャッチフレーズがありますが、住宅購入の際にも将来の事を考慮し、計画的に老後生活が送れるように住宅ローンとも上手く付き合っていく必要がありそうです。今後の参考にお役立て下さい。

法人営業部 犬木 裕

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