不動産取引ガイド

不動産売却によっては各種手当が受けられなくなる?

不動産を売って一時的に収入を得たときは、所得が高くなることで各種手当や控除を受けられなくなることがあります。ご存知でしょうか?児童手当など各種手当のほか、様々な給付金や控除にも影響を及ぼす為、気をつけなければなりません。また、今回は様々な給付金や控除について解説をしたいと思います。

■不動産の譲渡所得があった場合の所得制限の考え方について

助成金、補助金、手当などの各種給付金や、所得控除や税額控除などの各種控除を受けられるかどうかの基準のひとつに、「所得制限」があります。所得の範囲には、給与所得や事業所得のほか、不動産の譲渡所得の額も含まれます。しかし、譲渡所得の額を、譲渡所得の特別控除前の額とするか、特別控除後の額とするかは、制度により異なります。それぞれの手当や控除がどちらを対象としているかを見る前に、不動産を売ったときの所得「譲渡所得」とは何かを解説したいと思います。

不動産を売ったときに買い主から受け取る「譲渡価額」から「取得費」「譲渡費用」「譲渡所得の特別控除額」を差し引いた額を、課税譲渡所得といいます。

譲渡価格―(特別控除額+譲渡費用+取得費)=課税譲渡所得

「取得費」は不動産を買ったときに支払った額のことです。「取得費」が不明なときは、売却額の5%相当額を取得費とする概算取得費の特例を適用するか、ほかに合理的と認められる方法で算定した額を取得費としています。「譲渡費用」は、仲介手数料など不動産を売るためにかかった費用のことであり、リフォームをして設備交換等を行って販売する場合にも適用が出来ます。

「譲渡所得の特別控除額」は、一定の要件を満たしたときに譲渡益(譲渡価額から取得費と譲渡費用を差し引いた額)を限度に控除される額で、確定申告をすることで適用されます。例えばマイホームを売却したときの特別控除額は3000万円となります。

昨今、不動産価格が上昇している事もあり、安く取得したケースでは売却後の課税譲渡所得が大きくなるケースもありますので、利益が大きくなる場合には、注意が必要です。

■不動産の譲渡所得があった場合、各種手当や控除の変化について

以上の考え方を念頭に、本題の各種手当や控除を解説したいと思います。

給付型奨学金や扶養控除など各種控除はハードル高まります。
児童手当は、譲渡所得を特別控除後の額(課税譲渡所得)で判断する為、もし課税譲渡所得があるときは、減額や給付除外になる可能性があります。

児童手当の所得制限額は、前年末時点の扶養人数により異なる為、例えば、扶養人数が3人の場合、所得(会社員であれば給与所得控除後の額)が736万円超で一律5千円に減額されます。また、所得972万円超で給付除外となる為、不動産の売却益が大きいとこの給付除外となる事が懸念されます。収入目安でいうと給与収入のみなら960万円超で減額、1200万円超で給付除外となる計算となります。児童手当の受給対象となる所得者は、父母のいずれか恒常的に収入の高い方となります。譲渡所得を得た人が収入の低い方なら手当受給に影響はありません。

そのほか子どもやひとり親家庭などの医療費の窓口負担を助成する「医療費助成制度」、経済的に就学が困難な児童を持つ家庭を援助する「就学援助」、ひとり親世帯等への「児童扶養手当」なども、譲渡所得を特別控除後の額で判断しますが、所得は世帯で合算するので注意が必要となります。課税譲渡所得があるときは、受給に影響が出る可能性がある事を覚えておいて欲しいです。日本学生支援機構の返済不要の「給付型奨学金」は、譲渡所得の特別控除前の額で判断するため、譲渡益がある年は受給のハードルが高くなります。もし大学前のお子さんがいる世帯は中が必要となります。一方で、「貸与奨学金」は不動産売却等による一時的な所得は計算に入りません。ちなみに、生活に対する給付金等のほとんどは非課税所得と定められているため、所得の範囲に含まれません。しかし、支給根拠となる法令等や所得税法の規定により非課税所得と定められていない給付金は、所得の範囲に含まれるため気をつける必要があります。

例えば、東京都千代田区は、児童手当の対象外になった人に向けて独自の手当を支給していますが、これは雑所得に含まれる計算となります。所得制限の計算に影響するだけでなく、所得税や住民税、国民健康保険料を課す対象にもなっています。

■不動産の譲渡所得は自宅の相続や空き家にも影響が出る?!

注意が必要となるのは「住宅借入金等特別控除」、「配偶者(特別)控除」、「扶養控除」、「基礎控除」などの控除です。これらは譲渡所得を特別控除前の額で判断する事となる為、譲渡益がある年は、控除対象外となる可能性があります。勿論、マイホームに限らず、実家の空き家を売却するなどして不動産売却益を得ることもありえます。もし、両親が他界し、不動産の「取得費」が分からないようなケースだと「取得費」が不明なケースとなり、売却額の5%相当額を取得費として計算する為、売却価格が大きいと所得が大きくなるケースとなります。

いずれにせよ、不動産の売却をする際には、売却後の各種手当の状況も視野に入れて対策を考える必要があります。

今後の参考にお役立てください。

法人営業部 犬木 裕

瑕疵(かし)保険とは?前のページ

住宅ローンを吟味する時間がない場合はとりあえず「固定金利」を選択しましょう次のページ

ピックアップ記事

  1. 立地適正化計画をご存知ですか?
  2. 買ってはいけない物件を自分でチェック
  3. 住宅購入は不安でいっぱい
  4. 建物インスペクションを実施する最適なタイミングとは?
  5. 危険な場所は 地形図で見分ける

関連記事

  1. マンション

    マンションだって過度な重さは耐えられない!

    最近、アメリカのフロリダ州のマンションの一部が崩壊した事故がありました…

  2. 不動産取引ガイド

    よく出る質問 その1「割安な物件はどう見つけるのか」

    「割安な物件はどうやったら見つけられますか?」お客様からよく出…

  3. 不動産取引ガイド

    行政の不動産情報が統合され、便利な世の中になる?!

    政府は全国に広がる空き家や空き地を整備するため、国や自治体がそれぞれ持…

  4. 不動産取引ガイド

    保有不動産の資産価値を使い切る活用法

    住宅金融支援機構が提供する、60歳以上を対象にした住宅融資保険付きリバ…

  5. 不動産取引ガイド

    時間ない中で 効率よくお住まい探しをしていく方法。

    家探ししていたらこんな経験ないですか?不動産ポータルサイトで物件情…

  6. 不動産取引ガイド

    【住宅ローン減税6】所有権移転後に耐震基準適合証明書を発行する方法

    戸建ての詳細に入る前に、所有権移転後に耐震基準適合証明書を発行する方…

  1. 不動産取引ガイド

    売る時に資産価値が下がりやすい物件とは(防犯上心配な1階の住戸)
  2. 不動産取引ガイド

    新様式の住宅
  3. 不動産取引ガイド

    終電が早くなる!?
  4. 不動産取引ガイド

    住宅購入 最初に理解すべきこと
  5. 不動産取引ガイド

    長期優良住宅とそうではない住宅
PAGE TOP