不動産取引ガイド

良い家の条件とは

住宅購入を検討されている方は皆さん「良い家が買いたい」と思われていると思います。
それでは良い家とは何なのでしょうか?
今回は令和時代の住宅購入における「良い家」についてご説明いたします。

■デザイン性に優れた家は良い家なのでしょうか

昔、建築家が携わった一風変わった住宅を紹介するテレビ番組がありました。また、リフォームで住環境が生まれ変わる様子を紹介するテレビ番組は非常に話題となりました。
デザイン性に優れた家と言っても定義が曖昧なので、ここではテレビ映えのする普通の住宅とは異なる間取りの家のことをデザイン性に優れた家として取り扱います。

結論から申し上げると、デザイン性に優れた家は良い家とは言えません。
こだわりや想いを詰め込んだ住環境は、その人にとっては良い家と呼べるかもしれませんが、令和時代の住宅購入は、買う時だけでなく売る時も考慮しなければなりません。

奇抜な外観の建物や、カフェ風の内装などは、そういうのが好みの人には刺さるかもしれませんが、圧倒的多くの普通の人は選んでくれません。

何より普通の住宅とは異なるという点で、建築やリフォーム費用が高額になる傾向にあるのですが、自分で選んで建築するのであればまだしも、他人が作ったデザインのために、普通の家よりも高額のお金が必要となると、買い手を見つけるのが更に困難になると予想されます。

「普通と違う家」の最悪なケースは、高額になる建築費を補うために、土地代を削ってしまうことです。
土地代を削るということは、都市部ではなく郊外の土地を選んだり、普通よりも狭い土地を選ぶといった住宅購入となります。
不動産の価値は立地が全てと言われるので、ご自身は満足して暮らしたものの、いざ売ろうと思っても買い手が一向に見つからないということも容易に想像できます。

この考え方から言うと、デザイン性に優れた家よりは、普遍的な家の方が良い家と言えるのではないでしょうか。

■ハイスペックな住宅は良い家なのでしょうか

工務店の方がよく言われるのですが、耐震性や断熱性能など住宅性能に優れた家を指して「良い家」と表現されることが多いです。
住宅性能は住宅の価値の一つの要素でしかないので、住宅性能が良いだけで本当に「良い家」として良いのか疑問が残ります。

ハイスペックな住宅は先ほどご紹介したデザイン性に優れた家と同じような問題を抱えます。
普通の家よりも高い性能を実現するために建築費がかかるのです。

どれだけハイスペックな家にしたとしても、役目を終えて売却する時には、相応の築年数を経た中古住宅です。
普通の家より性能向上のために費用を費やしたとしても、その分高く売れる保証はどこにもありません。
もちろんハイスペックな住環境で満足度の高い生活を送ることができる(できた)という価値はあるのですが、売却時のことを考えると建築にかかる費用が多くかかるというのはマイナスポイントと言えます。

■良い家とはいつでもすぐに現金化できる家です

令和時代の良い家とは、いつでもすぐに現金化できる家です。
冒頭からこれから家を買おうというのに売る時のことばかりだという印象を持たれた方が多いと思いますが、これから家を買う方は、今よりもずっとシビアに売却時を想定する必要があります。

まず第一に、高齢者になった時の資力の問題があります。
ご存じのように日本は極端な少子高齢社会です。しかし高齢者を支える現役世代の負担は限界に近づいており、今後は年金など国の制度だけでなく、現役世代の頃から資産形成を行い、高齢者が自分で何とかしなければならない時代になると言われています。
ここで問題になるのが住宅資産です。
日本では「家は一生で一回の買い物」「終の棲家」「実家」という概念が横行しており、高齢期に今後の生活を快適に過ごすために住み替えを行うという選択があまりなされません。
住宅資産はご自身が亡くなった後にお子様などに遺す財産と認識されている方も多いです。
実際、ご自身で動けなくなるまで自宅で粘って、怪我や病気など何かのきっかけで高齢者向け施設へ住み替えるケースが多く、子供の立場からするとどれだけ施設費用の負担が厳しくても、実家を処分するというのは、帰る家を無くすことに繋がるので、結局亡くなるまで空き家で放置されるケースが多いです。
住宅ローンを完済した住宅は立派な資産です。
高齢期に差し掛かったら、まだ正常な判断ができるうちに余生を過ごす計画を立てる必要がありますが、その際に住宅資産が現金化できるかどうかが非常に重要となります。
どれだけハイスペックな住宅だったとしても、困った時に売れない家は良い家とは言えません。

続いて生活環境の変化です。
住宅購入からローン完済まで病気も転職もなく無事に過ごせる、というのはこのご時世少し考えにくいと思います。
新築偏重時代には、ローン返済スピードと資産目減りのスピードが合わず、売っても残債が残るケースが多かったため、「住宅ローンに縛られる人生」といった表現もよく使われました。
家を売るという選択ができないために、合わない職場にしがみついて体を壊してしまったり、本当にどうにもならなくなるまで粘ってしまい自己破産、一家離散などといった事例がたまに報道されたりします。
売ることを想定して購入するということは、資産価値が下がりにくい住宅購入を目指すということになります。
何か問題が起きれば、いつでも売ることができる、売却益が出ないにしてもそれほど残債が残らず売ることができる、場合によっては賃貸に出すことで問題を解決する、このようにいつでも現金化できる家を買うということは、人生における選択肢を大幅に広げる安心材料となります。

■まずはいつでも売れるエリアを選ぶ。快適な住環境はその次に検討する。

テレビ的に素晴らしく映る住宅でも、住んでいる方が不幸になるならその住宅は良い家とは言えません。
ですから、まずはいつでも売れる家を買うことが重要です。
快適な住環境を追及するのはその後です。

「いつでも売れる家」は立地重視の住宅購入です。
日本は人口減少社会ですが、より都市中心部に近い立地は、今後も人口を維持できる期待が持てます。
廃線の危機にさらされるような鉄道路線、バス路線が廃止になって車がなければ生活できないエリア、高齢者比率が高く一般商業施設ではなく高齢者向け施設(デイサービスなど)しかかないエリアなど、こういった人が集まらないエリアに手を出してしまうと、どれだけハイスペックな住宅を実現したとしても、買い手そのものが少ない、現金化するのに苦労する家を買ってしまうことになります。

人口減少問題は地方では既に顕在化していますが、大都市圏なら大丈夫という話ではありません。
東京都内であっても、最寄り駅からアクセスの悪い物件はどれだけ待っても売れない「負動産化」のリスクが高いと言えます。

仮に2024年に奇跡的にベビーブームが発生し、少子化問題が解決したとしても、その子供達が家を買うのは30年以上も先の話になるので、最低でも向う30年はこれから家を買う日本人が減り続けるのは間違いありません。

住宅購入と言うとまずは家に着目する方がほとんどなのですが、令和時代の住宅購入は、まずは人口が減りにくいエリア選びが重要で、快適な住環境を実現するのはその後だということを念頭に住宅購入を進めていただければと思います。

最後にお金以外で良い家とは何かを考えた時、個人的な意見としては「誰でも使いやすい箱であること」だと思います。
耐震や省エネなどの住宅性能は後付けがしにくいものもありますが、デザイン性や快適性などは住む人の工夫で何とかできる要素も多く、壁紙や床の色・材質といった細かな点に注目するのではなく、広さや部屋の形状、収納スペースの多さなど、箱としてのスペックが高い家は良い家と言えるのではないかと思います。

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