2024年10月から火災保険が改定されました。保険料は引き上げられるほか、豪雨など「水災」のリスクに応じて住む地域により差がつく仕組みが導入されました。自然災害の被害が増える昨今、火災保険の内容も再確認したいものです。これから不動産購入をされる方には必要なものだと思いますので、ぜひ、今後の参考にお役立てください。
■そもそも火災保険とは?!
火災保険は火災や落雷、ガス漏れによる爆発・破裂以外に、風災や水災、雪災、雹(ひょう)災など自然災害(地震を除く)、建物の水道管からの漏水による水ぬれなど、住まいに関わる損害を補償するものです。建物と家財それぞれで契約ができ、自宅がある人は両方、賃貸でも家財のリスクに備えたいものです。ぜひ、この保険内容を確認し、必要な時にはきちんと利用できるようしたいものです。
火災保険をはじめ損害保険商品の保険料は、保険金支払い実績などを基に「損害保険料率算出機構」が示す「参考純率」を目安に、損保各社の判断で決められています。ご興味のある方はこの「参考純率」をご確認ください。
火災保険についての参考純率は2023年6月に全国平均で13%引き上げると発表されていましたので、これが2024年10月以降の火災保険料に反映されたことになります。
■なぜ、火災保険の参考純率が上がってしまったのか?!
火災保険の参考純率引き上げの背景としては、台風や豪雨、大雪といった自然災害による大きな被害が近年相次ぎ、加入者への保険金の支払いが増えたことなどが理由と言われています。築年数の古い住宅の増加がリスクになるうえ、資材費や人件費の上昇で修繕費も高騰しています。すべて支払保険金の増加要因となっておりました。
参考純率引き上げはこの10年間で5回目となりますが、今回はこれまでと違い、「水災料率の細分化」が導入されています。水災リスクは豪雨で河川が氾濫する「外水氾濫」、下水道の処理が追いつかずに水があふれる「内水氾濫」や「土砂災害」などがあり、その被害が増えています。
火災保険料は基本的に建物の構造や所在地によって決まりますが、水災に関する部分(水災料率)は全国一律となっていました。今回、各地域を水災リスクの高さに応じて5つのグループに分類し、1等地から5等地に分けられました。これからは住む場所によって水災料率に差が生じ、契約者が支払う保険料にも反映されることになります。
自分の住んでいる地域の水災リスクが低いと考える人のなかには保険料を抑えたいからと水災の補償を外す傾向もみられました。しかし、マンション上階でも内水氾濫によって排水管から逆流したり、河川から離れていても土砂災害の被害を受けたりする例はあります。加入者間で保険料負担の公平感を保ちつつ、必要な補償を継続できるようにするのが細分化の狙いとなります。
地域の区分けは市区町村単位となっています。外水氾濫は各地の洪水ハザードマップ、内水氾濫や土砂災害は国土交通省の水害統計や国立研究開発法人防災科学技術研究所の地形データなどを活用しながら、地域ごとの水災リスクの程度を見込んでいます。
水災リスクが最も低いとされ、保険料も安くなるのが1等地となります。2等地から5等地まで、順にリスクも保険料も高くなっていくものとなります。損保料率機構によると、5つのグループに分類した場合の保険料(火災なども含めた補償全体)は分類しなかった場合と比べて1等地で約6%低く、5等地では約9%高い水準になる計算となります。
■気になるエリアの「水災等地」を検索してみませんか?!
損保各社の判断もあるので実際の契約にそのまま当てはまるとは限りませんが、気になるエリアが何等地に該当するかは把握しておいた方が良いです。これから不動産購入をされる方の希望エリアは何等地でしょうか?機構のサイトにある「水災等地検索」を使うと、市区町村単位の区分が調べられます。
もちろん現実には同じ市区町村内でもエリアによって水災リスクの差があります。自治体が用意するハザードマップも忘れずに参考にしたいものです。自治体のサイトのほか、国交省の「ハザードマップポータルサイト」から全国各地のマップを確認することもできますので、下記サイトも参考にお役立てください。
機構の調査によると、火災保険への水災補償の付帯率(2022年度時点)は64%ほどとなっています。全体の3分の1ほどは付けていません。水災料率の細分化により、従来より保険料を抑えた形で付けられるかもしれません。近年、強い台風や集中豪雨が多発しているエリアにお住まいの方は、保険料負担は上がってしまいますが、火災保険改定を機に保険内容を改める事を検討していただきたいと思います。また、これから不動産購入をされる方は参考にしていただきたいと思います。
法人部 犬木 裕