2025年から不動産業界の「囲い込み」が処分対象となると、国土交通省が見解を発表しました。宅地建物取引業法の通達を改正し、2025年から囲い込みを確認すれば是正の指示処分の対象となります。
その為、今回はこの「囲い込み」に関して解説を行い、法改正の内容や影響、そして不動産会社が取るべき行動について解説します。
■不動産業界における物件の「囲い込み」について
そもそも、不動産業界における物件の「囲い込み」とは何なのでしょうか?
不動産業界における「囲い込み」とは、特定の業者が顧客や物件情報を独占的に管理し、他社との情報共有を制限する慣行を指します。
この行為は、物件や顧客データを囲い込むことで、自社の利益を優先させる傾向があります。売り手と買い手の双方から仲介手数料を取ろうとする行為の事であり、両手仲介案件を狙う行為となります。
結果として、不動産取引の透明性が損なわれ、消費者の選択肢が制限される可能性があります。2025年からこの慣行が処分対象となることで、業界全体の健全化が期待されています。
物件の売却依頼を受けた不動産業者は公的なデータベース「レインズ」にある一定以上の預かり方により物件情報を載せ、取引状況を公表しなければなりません。
取引状況は「公開中」「書面による購入申し込みあり」など3段階で表示でき、囲い込む場合は「申し込みあり」と偽るケースが多いといわれます。
「申し込みあり」とした場合、物件の購入希望をもつ顧客をかかえる不動産業者を遠ざけることができ、売却依頼を受けた業者は自ら買い手を探して成約させることで、売買の両者から手数料を得られます。手数料は法律に基づく告示で「売買価格の3%プラス6万円」が上限の目安となっている為、この「囲い込み」が成立すれば、2倍の手数料収入が得られる事になります。
■「囲い込み」を行うことで、売主の早期売却等に影響が発生する!
囲い込みが問題となっているのは、購入希望をもつ顧客が現れても、自社で買い手を探そうとするあまりに売却が遅れることにあります。
高値での購入希望者が現れても、自社で受けた購入希望を優先しようとするために、低い価格での売却を迫られることもあります。物件保有者の利益を損ねている可能性が指摘されています。
国交省は取引の透明性を高めるため、宅建業法の解釈や運用に関する通達を2024年6月末に改正し、囲い込みは処分対象だという見解を明確にしました。レインズへの登録内容に虚偽があるとわかれば処分する方針となります。
こうした取り決めを2025年1月に施行して、発覚した場合は宅建業法に基づく是正や再発防止の指示処分の対象となります。従来は発覚時の罰則が明確でなく、囲い込みを許すもとになっていました。
■想定とされる物件「囲い込み」の罰則について
囲い込み行為に対する罰則は、違反の程度に応じて段階的に設定される見込みです。
軽微な違反の場合、指示処分が科される可能性があります。一方、重大な違反や繰り返しの違反には、業務停止命令や高額の罰金が課されることが予想されます。
最悪の場合、宅地建物取引業者免許の取り消しという厳しい処分も想定されます。さらに、違反事業者名の公表による社会的制裁も検討されており、業界内での信用低下や顧客離れにつながる可能性があります。
これらの措置により、不動産業界全体のコンプライアンス意識向上が期待されています。
■大手不動産事業者は「囲い込み」を行っていないのか?
実は大手不動産事業者でも、購入申し込みがないにもかかわらず、申し込みがあるとウソをついて内見を断るケースがあるそうです。
レインズに関しては、仲介業者が売却を希望する物件の価格や面積、間取りなどを入力して掲載し、買い手側が検索できる仕組みとなっており、取引状況は必須の登録項目となっています。
近年の住宅価格の高騰を受け、新築に比べて安価な中古住宅を選ぶ消費者は増えています。内閣府の2024年度の経済財政白書は住宅の着工戸数と中古住宅の取得戸数から中古の割合を試算しており、2022年度は約30%と10年前の約15%から上昇しています。
このような時代背景を踏まえ、不動産業界は顧客本位のサービス提供へと大きく舵を切る必要があります。
囲い込み規制への対応は、単なる法令遵守にとどまらず、ビジネスモデルの根本的な見直しを迫るものと言われます。
透明性と公平性を重視したサービス提供が不可欠となり、顧客の多様なニーズに柔軟に応えられる体制づくりが求められ、これは業界全体の変革を促す好機となります。
いずれにせよ、これから不動産を購入・売却を検討される方はこの物件の「囲い込み」というものが発生する場合がありますので、注意が必要です。
ぜひ、このような不安を払拭しての取引をご希望の方は、リニュアル仲介にご相談ください。
今後の参考にお役立てください。
法人営業部 犬木 裕