不動産取引ガイド

建物状況調査に関する少し深い情報 その4

建物状況調査シリーズです。一旦今回で終わります。

建物状況調査(インスペクション)を実施する目的は何なのでしょうか?
前に記事にまとめたように、建物状況調査(インスペクション)はあくまで現況を見るだけなので、調査を行っても建物性能は変わりません。

※人間ドックを受診しても、治療しないと健康にならないのと同じです。

手続きとして診るだけの建物状況調査(インスペクション)にはあまり価値はありません。

重要なのは問題点を明らかにして、改修方法と改修費用を知ることです。
どれだけ古い物件でも、状態の悪い物件でも、改修費用が予算内に収まっていれば危ない取引ではないのです。

中古住宅購入にまつわる不安の多くは「お金の問題」です。
現行基準との差、マイナス部分を明らかにして、そのマイナスを補うための費用が明らかになれば、中古住宅の不安はかなり払しょくされます。
改修費用を知るという目的での建物状況調査(インスペクション)はかなり有効だと思います。

建物状況調査(インスペクション)を実施して、指摘された事項の改修工事を実施しても、場合によっては雨漏れなどの事故が発生することがあります。
そこで活用したいのが既存住宅売買瑕疵保険です。瑕疵保険を利用するには、検査基準に合格する必要があり、そのために建築士によるインスペクションが必要です。
言い換えると、瑕疵保険が付保できる状態の建物は、一定の基準をクリアした建物と判断することができます。
予期せぬ雨漏れなどに備えるのが瑕疵保険の目的なので、瑕疵保険に加入できる物件はそれだけ安心ということです。

さらに、瑕疵保険に加入するプロセスで、第3者の建築士および瑕疵保険法人も建物の状態をチェックします。
第3者の検査が入る時点で、売主が都合の悪いことを隠そうとしても、完全ではないのですがおおよそ発見することができます。

まとめると、建物状況調査(インスペクション)そのものにはあまり価値がありません。改正宅建業法で契約書類などが変わったために建物状況調査(インスペクション)を実施しましょう、というのはものすごく残念な利用方法です。
中古住宅なので何らかの改修工事は想定した方が現実的です。単に建物状況調査(インスペクション)を実施するだけでなく、不具合があった場合に改修方法や改修費用を提案してもらえる事業者にインスペクションを依頼した方が良いです。

当面は買主依頼のインスペクションが主と考えられます。実施のタイミングは買付申込のタイミングです。これより後ろのスケジュールになると、いろいろと無理な判断を迫られることになります。

個人的には売主にメリットはないものの、売却を決めたらインスペクションを実施して欲しいと願います。修繕工事までは求めません。改修費用の目安だけ提示しておいてもらえれば、その物件を購入するにあたって必要なコストの算定が楽になるので、結果的に早く売れる要素になると思います。

内見に行ったら当たり前のようにインスペクション報告書を提示してもらえる、そんな取引環境になってもらいたいと願います。

リニュアル仲介の稲瀬でした。

***************************************************

■不動産の資産価値を即座に判断

セルフインスペクションアプリ「SelFin」

https://self-in.com/ (ご利用は無料です)

**************************************************

このマークをご存知ですか?!ヒントは『家財を守る』です!前のページ

注文住宅の建築中は「無保険」!?建築中に死亡したらつなぎ融資はどうなる?次のページ

ピックアップ記事

  1. 建物インスペクションを実施する最適なタイミングとは?
  2. 買ってはいけない物件を自分でチェック
  3. 土地価格の相場を知る方法
  4. 住宅購入と 生涯の資金計画
  5. 危険な場所は 地形図で見分ける

関連記事

  1. 不動産取引ガイド

    アスベスト(石綿)含有の事前調査の義務化とその影響

    2022年4月からアスベスト含有物の事前調査結果等の「届出」制度が始ま…

  2. 不動産取引ガイド

    ユニットバスの壁は『吸盤』のものが付きにくい?!実は磁石製品の活用がおススメです!

    中古住宅購入時に水回りのチェックは必須項目だと思います。その際にお風呂…

  3. お金・ローン・税金

    減税を受けるために必須の書類

    今回は、不動産取引において減税を受けるために必須の書類「住宅用家屋証明…

  4. リニュアル仲介通信

    平成27年1月 「工法」「構造」によって耐震診断・かし保険ができない場合があります。

    住宅の工法とは、家の躯体(骨組み)をつくる方法のことです。工法によって…

  5. 不動産取引ガイド

    老後に移住希望19%、「高齢者を地方へ」は難しく?!

    内閣府が10月17日にまとめた「国土形成計画の推進に関する世論調査」で…

  6. 不動産取引ガイド

    東京圏、転入超過11万人=続く一極集中!

    おはようございます。リニュアル仲介の犬木です。 先日、「東京圏、転入超…

  1. 不動産取引ガイド

    耐震基準適合証明書は売主と買主のどちらが申請するものなのか?
  2. 不動産取引ガイド

    「アパートバブル終息?」から学ぶ住宅購入術
  3. 不動産取引ガイド

    人口減少時代の住宅購入 20年後に買ってくれる人がいるか?という視点
  4. 不動産取引ガイド

    その価格、売主さんの「言い値」じゃないですか?
  5. 不動産取引ガイド

    不動産購入の際に注意すべき担保評価の落とし穴
PAGE TOP