先月の日本経済新聞に「コンパクトシティーに逆行」という記事が出ていました。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO29624670Q8A420C1SHA000/
内容としては「人口減時代に向けたコンパクトな街づくりが進まない」といったものでした。
住宅や商業・公共施設を中心部に誘導する計画を作った自治体が、郊外の開発案件すべてを事実上黙認している実態が日本経済新聞の調べで判明したようです。3割の市町は郊外開発の規制を緩めているようです。人口が減るのに生活拠点が拡散すると財政負担が膨らむ為、このままの状態ではかなりまずい状況が予想されます。都市の衰退を避けるため、より効果的に街を集約する制度が必要になってきました。
●「スプロール現象」をご存知ですか?!
国の推計では2045年に7割の市区町村の人口が15年比2割以上減ると予想しています。かたや地方を中心に地価が安い郊外開発は進んでいるようであり、公共インフラが後追いする「スプロール現象」が止まらないとの事でした。このままでは自治体の税収が減るのに過剰ストックの維持費だけがかさむ為、いずれ資金的な問題も発生します。
このリスクを抑えるのがコンパクトシティーの形成が必要との事です。都市密度を高めれば1人あたりの行政費用を減らせる。国土交通省は14年度から補助金などを通じ、具体策となる「立地適正化計画」の策定を自治体に促しました。年々、立地適正化計画に手を上げる自治体が増えてきており、この状況については、非常に良いと思いますが、まだまだ意識の低い自治体も多く目立ちます。
●「立地適正化計画」をご存知ですか?!
立地適正化計画は「居住誘導区域」と、店舗や病院、学校を集める「都市機能誘導区域」を設定しています。区域外の開発に届け出を義務づけ、建設の変更を事業者に勧告できるため、無秩序な開発を止める効果に期待が集まっています。
日本経済新聞社は17年末までに計画を作った116市町に進捗を問う調査表を送付し、聞き取りを含め全市町の回答を得たようです。そこから浮かんできたのは計画の実効性が乏しい実態だったようです。個人的には非常に残念に思います。
●住宅購入時には「立地適正化計画」の実態を把握する?!
日本経済新聞社の調べでは1月末までに誘導区域外で開発届けがあったのは全体の56%にあたる65市町で、計1098件だったようです。うち32市町、件数の58%が何も手を打たなかったようです。制度説明や規模縮小の依頼など「情報提供・調整」をしたのは42%あったようですが、建設計画を変えた事例はなかったとのこと。
届け出が175件と最多だったのは熊本県熊本市であり、事業者に情報提供をしていなかったようです。農地から宅地への転換が多く、診療所や大型店の建設も進んでいるようですが、熊本地震で被災した市民病院の移転先は都市機能誘導区域外だったようです。担当者は「適当な土地がなかった」と釈明しているようですが、復興のタイミングが整備できるタイミングでもある為、非常に残念な対応だと思います。
また別のエリアである茨城県水戸市は福祉施設や保育所など誘導対象の郊外開発が12件あったようです。「駐車場を確保でき、地価が安い郊外に事業者は流れる」のが実情で、区域内の新設はなかったようです。
唯一の勧告は神奈川県藤沢市のマンションに対する1件だけだったようです。津波で浸水の恐れがある地区だったとのこと。しかし、地下住戸の取りやめを求めただけで、立地は元の計画のままであり、本来の趣旨に沿う対応とは言いがたい内容だった模様。
米国の一部都市では中心部に移る人に補償金を出す制度や、空き家を自治体が保有して利用希望者に渡す仕組みがあるようであり、今後の自治体運営は「立地適正化計画」を意識したマネジメントが強く望まれます。住宅購入をする際には、本計画の推進が上手くいっていないという話だけではなく、いつでも貸せたり・売れる不動産を持っておくといった考え方を忘れずに、「居住誘導区域」内での住宅購入を意識したいものです。
法人営業部 犬木 裕