不動産取引ガイド

マンション修繕積立金 3割超が資金不足であることをご存知ですか?

国土交通省はマンションの修繕積立金を巡り、積み立て途中での過度な引き上げにつながらないよう目安を設ける事を検討中です。負担金の増額幅が大きすぎて支払いが困難になるケースが生じているため、引き上げ幅に一定の制限をかける事を目指します。また、そのような積立金不足が生じないよう、管理組合に計画的な積み立てを促す狙いもあります。

■マンションの規模ごとに積立額の基準を示すガイドラインをご存知ですか?

管理組合が修繕計画をつくる際に参考にする国土交通省の指針を改める事を検討されています。マンションの規模ごとに積立額の基準を示すガイドラインなどにも負担金の目安を盛り込む方針となります。

<積立額の基準を示すガイドライン>
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001600153.pdf

国土交通省によると、指針に強制力はないものの、ほとんどの管理組合は指針をもとに計画を立てているといいます。一般的なマンションは築年数の経過に伴い、壁面や柱などを大規模に修繕工事します。現在、多くのマンションで修繕のための積立金の増額幅が大きすぎて住民合意ができないトラブルが相次いでいます。2001年に竣工したあるマンションでは計画当初に比べ、最終段階で積立金が5.3倍になる徴収計画をたてました。2013年に管理組合の総会で値上げを決めようとしたところ、一部から強い反対を受けて断念し、資金不足で修繕工事は延期されたようです。

国土交通省によると、計画当初から最終年までの増額幅は平均3.6倍となっています。10倍を超える事例もあるというから、そのマンションを購入した時とその後の時間経過でビックリするような金額となるようでは、住人の不安は募ります。

■国土交通省が5年に1度実施するマンション総合調査をご存知ですか?

国土交通省が5年に1度実施するマンション総合調査では、2018年度に修繕計画に対して積立金が不足するマンションは34.8%に上りました。前回調査の2013年度の16%から倍増した結果となったようです。足元では資材費や人件費の上昇でさらに増えている可能性がありますが、倍増とはビックリします。

<2018年度 マンション総合調査>
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_fr5_000023.html

古いマンションほど修繕積立金などの滞納割合が高く、1969年以前に竣工したマンションのうち42.9%で滞納がありました。2015年以降の物件よりも27.5ポイント高い結果です。計画通り集金できなければ、修繕工事の遅延などが相次ぐ恐れがあります。

こうした問題を受け、国土交通省は積立金の引き上げ幅の目安を示す必要があると判断し、上げ幅について管理組合の決議が成立した範囲などを調査し、妥当な水準を探ります。

マンション管理に地方自治体がお墨付きを与える制度の基準も見直す。負担金の上げ幅を適正に抑えているかを認定の審査項目にする案があるそうです。

■マンションの修繕計画や積立金の状況を自治体が確認する仕組みを設けました。

政府は2022年4月、修繕計画や積立金の状況を自治体が確認する仕組みを設けました。認定を受けた築20年以上の建物は居住者の固定資産税が軽くなる。計画的な積み立てに向けて新築物件を対象に加えることも検討しています。国土交通省は10月末にも有識者による作業部会を設置し、2024年夏までに対策をまとめる方針となります。

積立金が不足するのは積立金の徴収方法に要因があり、徴収法は修繕計画に基づいて毎月同じ額を徴収する「均等積立」と、段階的に額を増やす「段階増額積立」の2つが主流となります。国土交通省は管理組合の決議がいらない均等積立を推奨してきていますが、これに反して10年以降に完成した築年数が浅い物件では6割強が増額積立でした。分譲時に当面の経費を少なく見せることができる事が大きな要因です。建物の老朽化が相次げば影響は深刻となり、外壁の剥落や鉄筋の腐食が進むと居住環境を維持できず、周辺の安全も保てなくなります。

これから不動産購入を検討される方は、マンションの場合は、毎月の修繕積立金が気になるところだと思います。その金額は低ければ安心してしまう方もいると思いますが、そのようなケースでは逆に今後、金額が上昇するリスクもある事を把握しておいて欲しいと思います。
また、弊社ではSelFinという「買って良い物件かを判定する」無料のWEBシステムのツールを提供しています。

SelFinでは、独自の価格査定エンジンから、対象不動産の想定価格を算出し、価格の妥当性を表示します。販売履歴の多いマンションは取引事例から、そうでないマンションは想定賃料から想定価格を算出します。その他に、流動性の判定(流動性の高い不動産ほど売却しやすくなります)、耐震性能(建築年月などから耐震性を判定)、住宅ローン減税の可否等を判定します。また、マンションの資産価値を高く保つには、きちんと管理されていることが重要です。
設定されている管理費・修繕積立金が妥当かどうかも判定します。

ぜひ、今後の不動産購入にご活用下さい。

法人営業部 犬木 裕

不動産購入の価格交渉術前のページ

2023年12月 フラット35金利のご案内次のページ

ピックアップ記事

  1. 危険な場所は 地形図で見分ける
  2. 住宅購入と 生涯の資金計画
  3. 買ってはいけない物件を自分でチェック
  4. 住宅購入は不安でいっぱい
  5. 土地価格の相場を知る方法

関連記事

  1. お金・ローン・税金

    トイレは10年ほどで故障や不具合が出てくる?!最近のトイレ事情とは?!

    家庭のトイレは、新築の場合なら短くみても10年は十分に使用に耐えること…

  2. 不動産取引ガイド

    昨年の台風19号の影響から注目される『立地適正化計画』?!

    昨年の台風19号が通過した後はJR武蔵小杉駅周辺(川崎市)の道路は軒並…

  3. 不動産取引ガイド

    「高齢者の地方移住を促進する新型交付金とは?!」

    「高齢者の地方移住を促進する新型交付金とは?!」…

  4. 不動産取引ガイド

    不動産購入前に注意したい!水没危険地域の実態!

    住宅の水没リスクがある地域への人口流入が止まりません。河川の洪水で住宅…

  5. お金・ローン・税金

    競争力急上昇!固定金利住宅ローンの定番「フラット35」が使いやすくなりました!

    2018年4月1日から、住宅金融支援機構の「フラット35」の制度が大き…

  6. 不動産取引ガイド

    太陽光発電コスト安価に!

    毎日暑い日が続きますがこの太陽光を使ってエネルギーに変える取り組みはす…

  1. 不動産取引ガイド

    出生数が初の100万人割れ、また出生率低下が不動産取引にも影響を及ぼす?!
  2. 不動産取引ガイド

    「マンションは管理を買え」って聞いた事ありませんか?!今後、マンション管理の認定…
  3. 不動産取引ガイド

    火災保険ってどこの保険に入っても一緒と思っていませんか?
  4. 不動産取引ガイド

    AI住宅・スマートハウス・スマートホームの違い
  5. 不動産取引ガイド

    床上浸水した時の対処法
PAGE TOP