不動産取引ガイド

家を買おうと思ったら物件選びより先に資金計画とエリア選定です

「よし家を買おう!」そう思い立った時、ポータルサイトで物件広告を見ることから始める方が多いようです。
不動産会社に問い合わせをして、すっかり乗り気になり、実際に物件を見に行ったりする頃に、住宅購入に関するネガティブな情報も目にするようになります。
このまま家を買っても良いのだろうか?自分達に最適な家と言えるのだろうか?
不安に駆られて躊躇される方も多いです。
これらは検討するべきことを検討していないために発生しているケースが多いので、今回は住宅購入をしようと思ったら、物件探しの前に先にやっておくべきことについてご説明いたします。

□家を消費して良い方は自由に購入してください

親族の持ち物件に住むといったイレギュラーを除き、ほとんどの方は生活するために住居費が必要です。
これは賃貸であっても購入であっても変わりません。
賃貸の場合は毎月支払っている家賃は消費してしまうので、財産になることはありません。
購入された方は住宅ローンの返済になります。家賃と同じで毎月まとまった金額の支出になるので混同してしまう方が多いのですが、住宅ローンの返済のうち、金利は消費してしまうものですが、元本の返済分は単純に消費と割り切ってしまうのは雑な判断と言わざるを得ません。
かつて新築偏重時代は、家を買ったら価値が下がり続け、ローンを完済する頃には二束三文とよく言われていました。
また、バブル期の影響が強く、価格が上がることを期待して不動産を買ってはいけないという根拠のない風潮も見られ、住宅と資産価値は切り離して考える方が意外と多いです。
新築偏重時代ですら、最終的には土地として販売できていたので、価値がなくなる=住宅ローンの返済は消費である、という考えは正しくないのですが、実際に買った家を売却するのは何年も先の話になるので、不確定要素は考慮しないと、頑なに住宅と言う資産に向き合わない人がいます。

住宅は資産ですよ、ということを分かりやすく解説したページを見つけましたので、参考にしてください。

「賃貸と持ち家、どちらがお得か」と考えることが間違い…不動産屋が絶対に教えてくれない「住まい選びの鉄則」

将来住宅を資産として活用するには、購入時に売却のことを想定して住宅を選択する必要があります。
言い換えれば、将来家を売らなくて良い、経済的に不利な状況に陥っても絶対に家は手放さない、という方は、住宅ローンの返済が消費されても良い訳なので、ご自身の都合を最優先に、自由に家を選択することができます。
反対に、少しでも将来の売却のことが想定される方は、将来年数が経過していても売れる家を選択する必要があります。

□まず初めに行うべきなのは資金計画です

住宅購入において物件探しよりも大切なのは資金計画です。
気に入った物件が見つかるまで住宅ローンの事前審査すら行わない方が意外と多いです。
資金計画で行うべきことは住宅購入予算を正しく把握することです。

冒頭に記載したようにポータルサイトで物件探しを行うことからスタートするとします。
この進め方だと、ご自身に最適な購入予算が不明瞭なままです。
本来ならもう少し良いエリアを選択できるのに気が付かないとか、現在の収入では無理のあるエリアにしがみついてしまうなどの状況が起こり得ます。

新築やリフォームなど建築費がかかる購入の場合はさらに深刻です。
自分たちの希望を叶える工事を行うために、肝心要のエリアの選定が疎かになるケースが多いためです。

資金計画を行わずに住宅購入をすることはあり得ません。
いずれ必要になることなので、家を買おう!と思ったら、まず初めに住宅ローンの事前審査などを行い、しっかりとした資金計画を立てることが大切です。

□これからの住宅購入は物件探しの前に街選び

もう1点物件探しの前に行うべきことがあります。
それは街選びです。
将来的に資産として活用することを考える場合は、将来に渡って人が集まり続ける街、人口減少時代においても選ばれる街を選択することが大切です。
日本は人口減少社会です。
これから家を買う方、特に子育てを目的としたファミリータイプを購入する方はどんどん減っていきます。
住宅ローンの返済が終わった頃に、敢えてそのエリアを選択する人はいないだろうと言われるほど不便な地域になってしまったら、どれだけ値を下げても買い手が一向に見つからない状況に陥ります。

これは将来の話ではなく、今現時点でも顕在化している問題です。
皆さんが今家探しをしているエリアに注目している理由は何でしょうか?
テレビやインターネットなどで過疎エリアの情報が報じられますが、そういったエリアに意識が向かない理由は何でしょうか?
そして、今は所謂田舎と言われる地域で起こっている現象が、大都市周辺部でも普通に見られる状況になります。

街選びと言ってもどう判断したらよいかわからない、と仰る方もいるでしょう。
わかりやすい指標は商業施設です。
スーパーマーケットなど生活に密着した商業施設が新設されるエリアはひと先ず安心です。
企業は将来の人口動態を推測して出店計画を立てるからです。(とは言え絶対ではないのでご注意を)
反対に危険な指標はコンビニエンスストアの撤退です。
コンビニ業界は小売業の中でも綿密なマーケティングを行うことで有名です。
コンビニエンスストアが撤退し、代わりの店舗が一向に出店してこないエリアは、人口減少が危険水域にあるエリアと言えます。

また、最寄り駅までの距離も重要な指針となります。
地方で主要幹線道路へのアクセスの方が重視されている地域もありますが、それでも最寄り駅や最寄り駅を経由して主要ターミナル駅への距離というのはわかりやすい指標になります。

もう1点。
これが恐らく最も難しい判断になると思いますが、現在時点で人口減少の悪影響が顕著にみられている場所の場合、根本的に住むエリアを考え直す必要があります。(隣の県へ移動するなど)
住み慣れた街という価値観もありますが、これから過疎に向かって転落するエリアを選ぶということは、そのエリアが抱える様々な問題も受け入れなければならないという選択になります。
商業施設の撤退で不便になるだけでなく、ゴミ収集体制が維持できなかったり、学校や病院といった主要な施設も集約されてしまう恐れがあります。
都市部ではなく郊外で検討している方は行政の動きにも注目する必要があります。

□将来のことを考えるとあんまり楽しくないなぁと感じるかもしれませんが…

住宅購入は本来であれば夢が叶う非常に楽しい、わくわくとしたものです。
特に資金計画もはっきりしないまま事業者に問い合わせをすると、住宅関連事業者は購入希望者の夢を膨らませるのが仕事なので、期待感が募ります。
しかし冒頭に記載した通り、どこかのタイミングで現実という壁に当たり、後ろ向きな情報にも触れなければならなくなります。

今回ご紹介した資金計画やエリアの選定などは最たるもので、あまり積極的に行いたくないなぁというのが本音ではないでしょうか。
将来売れる家かどうかを検討するというのは、夏休みの宿題のようなものです。
自分の都合を優先してしまうと、将来手痛いしっぺ返しを食らいます。
いつでも売れる家を買うというのは、令和時代の住宅購入の大前提となります。

将来の売却を十分に考慮して住宅購入を行うと、私たちの親世代が経験した新築偏重時代にはない、人生を楽にする強力な選択肢を得ることができます。
いつでも売れる家を買うことができれば、子育てが終わって広さを持て余した時、介護のためのまとまった資金が必要になった時、収入が減少しローンの返済が困難になった時に、家を売却してやり直す選択が可能になります。
もちろん大きな問題が起きなければ住み続けることも可能です。
これは住宅ローンの返済スピードが、資産価値目減りのスピードとバランスせず、家にしがみつく選択しかできなかったかつての買い方に比べて、大きなメリットと言えます。

「これから家を買おうと思っているのに売る時のことばっかり考えたくない」という気持ちもわかりますが、夏休みの宿題だと割り切って、必要な検討はきちんと行うことをお勧めします。

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