不動産取引ガイド

住宅ローンの安心材料「団信」について

住宅ローンを組まれて、不動産購入をされる方は、もしもの時の安心となる団信(団体信用生命保険)が付帯される事をご存知でしょうか?団信とは、住宅ローンの契約者が死亡や高度障害状態になった場合に、住宅ローンの残高に相当する保険金が支払われる制度です。ちなみに、住宅ローンの団信には、下記のような特徴があります。

・加入を住宅ローンの利用条件としている金融機関が多い。
・保険料は住宅ローンの金利に含まれている場合が多く、別途支払う必要がない。
・一般的な生命保険と比較して保険料の負担が割安な場合がある
・加入には保険会社の審査が必要で、健康状態の告知や健康診断結果の提出が必要となる場合がある。
・保障内容や加入年齢、取り扱い条件などは団信の種類によって異なる。
・保障が手厚くなれば、その分上乗せされる金利や保険料も大きくなる。

また、団信には、下記のような種類があります。

・一般団信:死亡や高度障害を保障する基本的な団信で、金利上乗せなしで加入できる。
・がん団信:がんと診断確定された時点で保障が適用される団信。
・3大疾病保障団信:死亡や高度障害に加え、がん、急性心筋梗塞、脳卒中などの3大疾病を保障する団信。
・8大疾病保障団信:三大疾病のほか、高血圧症、糖尿病、慢性腎不全、肝硬変、慢性すい炎を保障する団信。
・ワイド団信(引受条件緩和型団信):通常の団信よりも引受条件が緩和されている団信。

下記に各種団信について、こまかく解説をしていきたいと思います。

■住宅ローンの団信:一般団信について

「一般団信」といわれるタイプは保障が死亡時と高度障害状態の場合に限られます。しかし、このところ、保障の範囲を一般団信よりも広げたものを扱う金融機関が目立つようになってきました。こうした団信では、借入金利にさらなる上乗せが必要になることが多くあります。

■住宅ローンの団信:がん団信について

最近よく目にするようになったのは、がん保障が付いた「がん団信」というものが存在します。保障対象のがんであるという医師の診断確定により、ローンの残りが完済されます。上乗せ金利はおおむね0.1%程度となりますが、契約年齢によって異なることもあります。上乗せ金利はない一方で、保障額がローン残高の50%になるケースもあるので、注意が必要です。

■住宅ローンの団信:3大疾病保障団信について

範囲がさらに広い「三大疾病」の保障付き団信もあります。がん、脳卒中、急性心筋梗塞の際にローンの残りが完済となるものです。金融機関によって保障の要件は異なりますので、該当する方は、あらかじめ金融機関への相談が必要となります。購入する不動産が決まってからの相談ですと時間に制約がありますので、ご注意ください。脳卒中や急性心筋梗塞については60日以上の入院などが一般的でしたが、最近は入院開始や手術のみでも対象となるなど、要件が緩和されている例がみられます。上乗せ金利は0.2%程度です。

■住宅ローンの団信:「八大疾病」や「全疾病」の保障付き団信について

もっと広く「八大疾病」や「全疾病」の保障付き団信などもあります。八大疾病は一般に、三大疾病のほか、高血圧症、糖尿病、慢性腎不全、肝硬変、慢性すい炎を加えたものとなります。全疾病となると、一部はずれるものはありますが、八大疾病以外の病気やケガまで対象になります。こうした保障範囲の広い団信では原則として、病気などによって仕事ができない(就業不能)状態が一定期間継続していることが要件となります。ただし一部の疾病では就業不能状態の期間を要件にしていないものも存在します。

具体例を挙げてみよう。対象となる病気による就業不能状態が継続して30日を超えると、最大1年間、毎月のローン返済相当額が保障されます。上限の1年を超えてこの状態が続くと、ローンの残りは完済となるといった具合です。保障要件の違いで上乗せ金利も変わり、ゼロから0.3%程度まで幅があります。

団信は保険の一種であるため、健康状態の告知などが求められます。もし団信に加入できなければ銀行などでローンを組めないのが一般的です。持病などがあっても加入しやすい引受条件緩和型団信(ワイド団信)もある事をご存知でしょうか?しかし、金利は一般的な団信よりも0.3%程度上乗せになります。団信加入が任意となっている住宅金融支援機構の「フラット35」で借り入れるのも手です。とはいえ団信に加入しなければ、万一のときでもローン返済をし続けなければならなりません。

他にも注意点はあります。団信は返済途中の加入や解約、保障内容の変更はできないのが普通です。また、保障額は基本的にローン残高までとなるため、ローンの繰り上げ返済をしていくと、団信による保障額が減ってしまう点は知っておきたいポイントです。

ローンを選ぶ際には、まず借入金利の水準によって絞り込み、さらに団信の保障内容も考慮するのがよさそうです。金利の上乗せによって、返済額はどう変わるのか。例えば借入額5000万円、返済期間35年、借入金利1.9%の条件だとした場合、上乗せ金利0.1%となると、毎月の返済額は約2600円増え、総返済額は約107万円増えることになります。保障額に対するコストを団信ではない「がん保険」と比べると、基本的には割安となります。

いずれにせよ、多くの方にとっての不動産購入は数千万円を超える買い物となる為、住宅ローンを組んでの購入が一般的です。現金一括で購入する方も居ますが、この団信の考え方を考慮して、住宅ローンでの返済を計画的に進めていく事も安心材料となります。

今後の参考にお役立てください。

法人部 犬木 裕

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