不動産取引ガイド

不動産購入前に把握したい、セカンドライフの資金?!「2000万円問題」とは?!

定年退職で家計の行方がわからなくなり、夫婦で不安を抱えて過ごしています。友人らは「何とかなるものだ」と言うのですが、老後に必要な資金の見当がつきません。(50代男性)

不動産購入を検討されている方向けにこのような記事を書く事に抵抗を覚えますが、数十年後には必要な老後資金の問題、「2000万円問題」について解説をしたいと思います。

公益財団法人生命保険文化センターの「生活保障に関する調査」(2019年度)によると、夫婦2人世帯でゆとりある生活を希望する場合、平均で月36.1万円の生活費が目安になると公表されています。また、この調査結果が元となり老後は年金の他に2000万円必要という「2000万円問題」が出て大きな話題となりました。

■そもそも「2000万円問題」の2000万円の内訳とは?!

第21回 市場ワーキング・グループ 厚生労働省の報告書より試算すると、2017年の高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)の毎月赤字額(実収入-実支出)の平均値は約5.5万円となります。2017年の平均寿命は男81.1歳、女87.3歳との事ですから、定年退職後の20年、30年の生活を考慮すると、下記のような数値計算となります。

5.5(万円)×12(ヵ月)×20(年)=1,320万円

5.5(万円)×12(ヵ月)×30(年)=1,980万円

生涯の赤字額は1,320万円~1,980万円と計算できました。ざっくり2000万円あれば、老後資金としては足りるとの話が、「2000万円問題」と言われるものです。

では、現状この赤字額に対して高齢者はどのように対処しているのかというと、次の事実から推測できます。

2017年の高齢夫婦無職世帯の平均純貯蓄額(純貯蓄額=貯蓄現在高−負債現在高)2,484万円

2017年の定年退職者の退職給付額は平均で1,700万円~2,000万円程度

つまり、退職金を中心とした貯蓄の取り崩しでまかなっていると考えられます。というよりも「貯蓄額を考慮し、毎月5.5万円を取り崩す範囲で生活している」と表現した方が正しいのかもしれません。

■「2000万円問題」はあくまでも平均的な考え方の目安?!

確かにひとつの目安にはなりますが、住むエリアや持ち家か賃貸かなどによっても必要な金額は大きく異なります。あくまでも個人的な見解ではありますが、なるべく早く賃貸生活から脱出し、老後の支払いで住居費への支払いをなるべく減らせるようにしていただくだけでもかなり老後問題を払しょくする事につながるものと考えます。

現在の生活費がわからないという方も、直近約3ヶ月間の生活費全体を把握することをお勧めします。なぜなら、一般的にセカンドライフの生活費は現役時代の7割程度とされるからです。仮に現役時代月40万円で生活していた方は、28万円の生活費がかかるイメージです。

そこでまず年金の受給額を確認しましょう。厚生労働省によると、夫婦2人分の標準的な厚生年金額(老齢基礎年金含む)は月約22万円。月28万円の生活費が必要ならば、差し引き約6万円を別途補う必要があることになります。「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で自分の年金額を確認しておきましょう。

https://www.nenkin.go.jp/n_net/ (ねんきんネット)

■「2000万円問題」を回避する為の秘策について

仕事を引退する年齢も、セカンドライフの期間が変わるため、必要な金額を考えるうえで重要な要素です。65歳で引退する場合、セカンドライフはおおよそどのくらいになるでしょうか。

参考になるのが平均余命です。ある年齢から平均的にあと何年生きるかという考え方で、19年簡易生命表の概況(厚労省)によると、65歳の平均余命は男性約20年、女性約25年です。65歳で引退した男性は約20年がセカンドライフの期間となります。

これらを踏まえ、すぐ実践可能な「セカンドライフ対策」は大きく分けて3つです。

1.生活コストを下げる

2.働く期間の延長する

3.資産運用を実施する

新型コロナウイルス禍で不安な状況が続き、収入の減少もあってか、セカンドライフの資金を気にする方が増えています。不安の払拭にはまず「自分はいくら必要なのか」を知り、不足分を補う手段を実行する方法が考えられます。

重要な事は不動産購入前にセカンドライフ時のお金の事を把握していただき、将来に対する備えも同時進行であることを認識していただきたいと思います。

今後の参考にお役立て下さい。

法人営業部 犬木 裕

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