日々の生活に欠かせないモノやサービスの価格が上がるなか、賃貸物件で家賃引き上げを告げられたという声を耳にするようになっています。借りている側としては、すぐ応じるには困難な場合もある為、その対処方法等を解説したいと思います。一般的に不動産賃貸の繁忙期とは、主に1~3月を指します。何故そこまで忙しくなるかというと、3〜4月にかけて入学や卒業、また就職などが重なるため多くの人が引越しをするからです。一方、閑散期といわれる時期は、7~8月頃を指します。この頃は、部屋探しをするお客さんが少ないので、不動産会社は落ち着いている時期で、繁忙期にはできないような、情報収集やキャンペーンの考案などの業務を行って傾向があります。
■賃貸の「値上げ」相談の手紙が届くケースが増えている?!
「次の更新時に家賃を上げたい」という内容の家主からの手紙が届くケースが増えています。勿論、そのような手紙を受け取った方は、その依頼に応じなければ住み続けられないのか、また、トラブルを避けるために引っ越した方がいいのか、お困りになると思います。また借地借家法では賃料増減請求権が定められている為、家主は正当な理由があれば、引き上げを求めることができます。単に家賃収入を増やしたいというのではなく、例えば物価上昇もあって物件の維持コストが上がってしまった、周辺にある間取りや築年数などの条件が似ている物件の相場と比べて明らかに家賃が安いといったケースが挙げられます。ちなみに請求権は借りる側にもあり、周辺相場と比べて家賃が高いとすれば、引き下げできないか、交渉してみることも可能となります。
■賃料が上がるタイミングは何かしらの「変化」が行った場合となります!
家賃引き上げの通告を受けるタイミングとして最も多いのが、更新のタイミングと言われます。また、家主が変わったときに交渉を持ちかけられる場合もあるため、何かしらの変化が行われているケースとなります。家賃は一方的に引き上げられるものではなく、基本的には両者が話し合って合意してからということになります。拒むことも可能ですが、家主にも事情があって通告してきている事も考えられるため、無視するのではなく、しっかりと向き合って適切に対処するようにしていただきたいと思います。
交渉に当たってはまず冷静になることが重要です。驚き、慌ててしまいがちですが、感情的にならず臨んでいただきたいと思います。前提として契約書を読み返し、賃料の増減について「一定期間は行わない」といった取り決めをしているかもしれないからです。それから不動産情報サイトなどを活用し、自分自身でも周辺の家賃相場を調べる事も重要です。引き上げが適正かどうかの指標となり、家主側に根拠となる資料を見せてほしいと依頼することも重要となります。
■賃料の値上げ依頼が入った際には専門家に相談することも大切です!
交渉によって家主から譲歩を引き出せた例もあります。「気に入っている物件なので長く住みたい」「値上げ幅を小さくしてほしい」「生活苦で引っ越せない。」「引き上げ時期を延期してほしい」「家賃の引き上げには応じる分、更新料を減額してほしい」などと投げかけ、実際に引き上げ幅や時期が一部見直された人もいます。一方、引き上げ額が不当に高いなど、納得できない場合には相談窓口を利用する方法もあります。国民生活センターや全国の消費生活センター、住んでいる自治体の担当部署、不動産関係機関・団体の窓口などに連絡してみる事も一つです。
交渉がうまくいかなかったからといってすぐに強制退去とはなりません。しかし家賃は今まで通り払い続けるようにする必要があります。滞納してしまうと、債務不履行で契約解除となる事も懸念されます。家主側に正当な理由があって合意に至らない場合は裁判になる可能性もあります。
ここ数年、東京23区のマンション平均家賃は上昇が続いています。他の都市部でも似た傾向の地域が目立ち、マンション価格高騰で購入を断念して賃貸を選ぶ人もいるようです。その為、家賃引き上げの打診も増える事も懸念されます。思い切って、不動産購入をする決断をするタイミングかもしれません。今後の参考にお役立てください。
法人営業部 犬木 裕