不動産取引ガイド

住宅ローンの返済方法は、全額返済or不動産売却だけではない?!

住宅ローンを利用すると、基本的には長期にわたって借入額を返済していくので、その分、利息負担が大きくなります。そうしたデメリットを避ける方法の一つが、ローンの返済途中で一括返済(全額返済)に切り替えること一括返済を効率良く行うためには、そのタイミング、あるいは住宅ローンの残額がいくら残っているかをあらかじめ確認する必要があります。
もしくは不動産売却で終える方法があります。誰かに売却が出来れば、その売却金額で住宅ローンの完済が可能となります。しかし、最近では、リバースモーゲージを住宅ローンの借り換えに使う人が増えているようです。

■リバースモーゲージをご存知ですか?

リバースモーゲージとは、自宅を担保に生活資金を借入れし、自らの持ち家に継続して住み続け、借入人が死亡したときに担保となっていた不動産を処分し、借入金を返済する仕組みです。いわば、高齢者向けの貸付制度と言い換えられます。直訳すると「リバース=逆」「モーゲージ=抵当・抵当権」という意味です。住宅ローンは、一括で受け取った融資額を月々返済していき、最終的に借入残高がなくなるのが一般的です。しかし、リバースモーゲージは毎月、あるいは一括で借入れた分の残高を最後にまとめて返済する仕組みです。そうしたことから、「リバース=逆」という名称がつけられています。

例えば、金融機関が取扱うリバースモーゲージには、「住宅金融支援機構と提携して貸付を行うもの」「金融機関独自で行うもの」などがあります。金融機関が取扱うリバースモーゲージでは借入をする人が生存中に毎月利息分のみを支払い、元金は借入人の死亡後に相続人が自宅を売却することなどにより一括で返済します。

一方、社会福祉協議会が取扱うリバースモーゲージでは、借入をする人の死亡などの理由で契約が終了したときに、相続人が借入元金および利息の返済をすることが必要です。どちらの場合も毎月の支払額を抑えることができるため、老後の生活での限られた資金を有効に活用することが期待できます。

老後の生活は、年金収入で日々の生活費をやりくりする方が多いでしょう。しかし、定年退職後に住宅ローンの支払いが残っている場合、住宅ローンの返済が困難になるという不安があります。そこで、考えられるのが、住宅ローンからリバースモーゲージへの借換えです。

「元金+利息」の返済から「利息のみ」の返済に変わるため、月々の返済金額を減額させることも期待できます。金融機関にもよりますが、融資額は1億円程度を上限としていることが多いので、あらゆる活用を検討できるでしょう。なお、自宅を資産として残したい場合は、借入期間中に元金を返済することもできます。

■リバースモーゲージを利用する人が増えている一方で潜むリスクもある

リバースモーゲージを住宅ローンの借り換えに使う人が増えています。金融機関の一部では借り換え利用が2割超まで増えた機関もあるようです。借り換えは目先の毎月の返済負担を軽くすることが目的だが、利息が長期的に家計を圧迫すれば、新たな老後破綻リスクとなります。主要機関から聞き取って推計した累計融資額は2023年6月末に2000億円(すでに返済された分を含む)を超えたそうです。2016年ごろから融資の拡大が目立ち始め、約7年で倍増した結果です。

民間と協力して展開する住宅金融支援機構のリバースモーゲージは直近の2023年4~6月の利用の22.3%が住宅ローンの借り換えに使われ、住宅金融支援機構とは別の仕組みで展開する会社でも借り換え利用は拡大傾向にあるそうです。

背景には老後資金への不安が上げられます。リバースモーゲージは通常、毎月の返済は利息のみで、元利返済の住宅ローンに比べて表面的な負担は数分の1に軽減される例が多く考えられます。しかし、毎月返済で元本は減らないため、返済期間が長引けば住宅ローンより原則として利息総額は膨らみます。

総務省の家計調査では住宅・土地関連の負債(負債のある2人以上世帯の平均)は世帯主が50代の場合、2022年で1067万円と6年連続で1000万円を超えました。60~70代も600万円前後となり、今後も高齢期のローン負担は残るものと予想されます。

■三大都市圏のマンションを初めて購入する平均年齢は上昇傾向である!

国土交通省の調べでは三大都市圏のマンションを初めて購入する平均年齢は上昇傾向で、22年度は39.9歳となります。35年の住宅ローンを組むと、完済は70代半ばになる計算となり、借入金も増加基調にあります。

リバースモーゲージを活用すると、老朽化した自宅でも主に土地を担保に融資される場合があります。現在は男性も4人に1人、女性は2人に1人が90歳まで生きる時代となり、60代で利用してもその後30年程度、返済が続くこともあります。変動型のタイプが多く、金利上昇リスクもある為、長期に渡る事を考慮すると、金利負担の合計はかなりの金額になる事が予想されます。

体調悪化などで自宅に住めなくなると、介護施設への入居資金の捻出なども考えなければならない為、リバースモーゲージに借り換えた家でも売却できるが、希望額が得られるとは限りません。

国内でリバースモーゲージが始まったのは1980年代。総人口に占める65歳以上の割合は1980年は9.1%でしたが、2023年に29.1%となりました。高齢者が増えるほど需要の裾野は広がり、長寿化の影響で子世代は自ら住宅を持ち、親の家の相続を必ずしも望まないケースが増えていることもさらなる拡大を促す事になると予想されます。

いずれにせよ、住宅ローンの付き合い方の1つにリバースモーゲージという選択肢がある事を把握しておいて欲しいと思います。

今後の参考にお役立て下さい。

法人営業部 犬木 裕

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