不動産取引ガイド

資産価値維持のための遺言書作成

今回ご相談いただいたお客様は、お父様がお亡くなりになり、お母様が施設に入ることになったので、空き家になる実家を売却したい、とのご相談でした。

今は、不動産価格も上昇しており、売り時としては絶好のタイミングです。

ところが、売却までがなかなか一筋縄ではいかなかった、というケースでした。

売却の前提として相続手続きが必要

相続が発生したお父様名義の不動産を売却するためには、不動産の名義変更が必要になります。

登記されている名義を、相続人の全員もしくは誰か1名の名義へ変更しなければ、売却手続きは進みません。

ところがご相談者様のケースでは、お母様が認知症を発症しており、そのままでは相続手続きや販売活動ができないことが判明しました。

これを解決するためには、裁判所で成年後見人制度を利用し、お母様の代理人を立てなければならない、とのことでした。

さらに成年後見人制度を利用するには、2~3ヶ月の時間がかかってしまうとのことです。

お母様の施設入所費用や、相続税の支払いなど、至急で資金が必要という事情があったため、急いで手続きを進めることになりましたが、こうした売主都合の急ぎのケースでは売却条件を譲歩しなければいけないケースが発生してしまいます。

多少の価格交渉や、引渡時期の相談など、残念ながら買主側に有利な条件も承諾せざるを得ませんでした。

遺言書の作成が解決のポイント

こうしたケースの解決策となるのが、生前に不動産の所有者がきちんと遺言書を作成しておくこと、とのことです。

不動産をお持ちの方で、配偶者やお子様など相続人となる方の判断能力に問題があるケースでは、遺言書で「●●に相続させる」として取得する方を指定しておく方法や、「●●を遺言執行者として、不動産を売却したお金を割合で相続させる。」といった方法を取ると、その後の手続きがスムーズになります。

相続手続き自体もスムーズになりますし、売却機会の損失を避けることができます。

それは同時に、資産価値の維持にもつながる結果となるのではないでしょうか。

取得した不動産の資産価値の維持は、室内の設備や建物の構造・躯体の維持管理に加え、不動産の権利の適切な管理と承継方法の手配、も大きな要因となります。

大きな買い物となる不動産については、購入後もきちんと目を配るようにしましょう。

水道の引き込み管の口径 チェックポイント前のページ

「相続」案件が「争族」となり、過料が発生するケースもある?!次のページ

ピックアップ記事

  1. 立地適正化計画をご存知ですか?
  2. 買ってはいけない物件を自分でチェック
  3. 住宅購入と 生涯の資金計画
  4. 危険な場所は 地形図で見分ける
  5. 土地価格の相場を知る方法

関連記事

  1. 不動産取引ガイド

    新・中間省略登記とは?

    「中間省略登記」というものを聞いたことはあるでしょうか。本来、…

  2. 不動産取引ガイド

    家族の成長に合わせて変化させ続けるくらし

    子どもの成長は早いものです。あっという間に成長し独立し家から出ていき空…

  3. 不動産取引ガイド

    戸建てリノベ物件を安心して購入するコツ

    リノベーションという単語が一般に浸透してだいぶ経過します。略称で「…

  4. お金

    全壊認定でローン残高の50%が免除される住宅ローン

    地震・噴火・津波により自宅が「全壊」と認定された場合、り災日時点の建物…

  5. お金・ローン・税金

    住宅優遇制度一覧

    不動産に係わる税金の負担を軽減する主な特例の期限一覧です。不動産を…

  6. お金・ローン・税金

    共働き世帯必見。住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の活用方法。

    家を買う時に、「月々○万円までに支出を抑えたい」と予算設定をされている…

  1. 不動産取引ガイド

    ドローンを活用してのインスペクションは広がるか?!老朽化が進む高速道路の管理にも…
  2. 不動産取引ガイド

    管理不全のマンション急増!
  3. 不動産取引ガイド

    不動産購入時にハザードマップの確認は重要です。もし危険該当エリアの場合、「マイ・…
  4. 不動産取引ガイド

    インフラ・ゼロ・ハウスをご存じですか?
  5. 不動産取引ガイド

    中古マンション、割安取引 が広がる?!仲介会社選定基準
PAGE TOP