国土交通省は不動産取引の基礎情報になる土地の境界や面積を定めやすくします。行政の調査で一定の手続きを経た場合、所有者と連絡が取れなくても測量結果を登記簿に反映できるようにするようです。現在は所有者の立ち会いが原則必要で、境界を決めるハードルとなっており、地情報を整備し大規模な用地取得が必要な再開発を後押しする狙いがあります。今回はこれから不動産購入を検討されている方で、戸建て住宅の購入を検討されている方に読んでいただきたい内容となります。
■そもそも土地の境界や面積を確定する方法とは?!
土地の境界や面積を確定する方法は、一般的に以下のような手順に従います。
・地籍調査について
地籍調査は、土地の所有者や隣接する土地所有者からの情報をもとに、土地の境界線や面積を特定するプロセスです。地籍調査士や測量士が関与し、現地調査や地図の調査を行います。
・測量について
測量士が、特定された境界を測量し、正確な境界線を確定します。これには、GPS測量や光学測量などの技術が使用されます。
・標識の設置について
測量後、土地の境界線を示すための標識やマーカーが設置されます。これにより、土地の所有者や隣接する所有者が境界線を識別できるようになります。
・登記について
測量結果をもとに、土地の所有権や境界情報が正式に登記されます。これにより、公的な記録として土地の所有権や境界が確定されます。
・法的手続きについて
土地の所有者や隣接する所有者の間で境界に関する紛争がある場合、法的手続きが必要となる場合があります。裁判所や調停機関が関与し、紛争を解決するための手続きが行われます。
これらの手順は、土地の境界や面積を確定するための一般的なプロセスです。
■地図は明治時代に作られ、不正確なものが多い?!
登記所に備え付けられている地図は明治時代の不正確なものが多いと言われます。このため国土調査法に基づき、1951年から土地の区画(筆)ごとの境界や面積を確定させる「地籍調査」が続いています。市区町村が主体となって測量し正確な地図に修正しているのが現状です。
調査で境界や面積を確定する場合には、省令で所有者による現地調査立ち会いや図面の確認が必要と定められています。国交省はこの省令を2024年度中に改正し、所有者の確認が得られない場合でも調査を完了できる仕組みを整備する予定です。
具体的には調査への協力依頼を3回程度通知し、反応がない場合は測量図など客観的資料に基づいた境界の図案を送付。さらに20日間過ぎても所有者から意見がなければ境界を確認したとみなす流れを想定しています。所有者へ確実に通知するため最低1回は書留の活用を検討しています。
■地籍調査が進まず、再開発の推進を阻害するケースもある!
近年問題となっている所有者不明の土地については、正確な測量図といった客観資料があれば市区町村と法務局の協議で境界案を定められる別の手続きも用意されています。
見直し背景には地籍調査の遅れが上げられ、国交省は面積ベースの実施率目標を2019年度に57%としていたが、2022年度末時点で52%にとどまっています。所有者の協力が得られず境界を定められなかった土地は2022年度だけでも約9200区画あったそうです。
地籍調査が進んでいないエリアでの用地取得は境界の調整に手間がかかり、再開発への影響も大きい事が分かっています。国交省によると、2023年開業の「麻布台ヒルズ」は事業区画の地籍調査が当時終わっておらず、境界や所有者をはっきりさせる作業に約10年がかかったようです。
災害に備える意義もあり、東日本大震災で津波被害があった岩手県宮古市での集団移転事業では、移転候補地が地籍調査済みだったため測量作業が要らず、約8カ月間の事業短縮につながったケースもあり、結果、岩手県釜石市の市街地復興も事業期間を1年短くできたようです。
地籍調査は土地の権利の根幹にかかわるもので、再開発や災害時の復旧・復興など様々な事業を進める上で不可欠となります。多様な手段を用いて、調査を加速させる必要があり、現在の上空からの撮影映像やテクノロジーを活用しての把握は必要となりそうです。
■地籍調査の実施率は地域差が大きいようです
調査実施率は地域差が大きく、都道府県別では青森県、佐賀県、沖縄県などで90%を超える一方、京都府、大阪府、三重県、愛知県、滋賀県、奈良県は1割程度、東京も25%と全国平均の半分の水準にとどまっています。都市部では土地の区画が細かく分かれ、複雑な調査が求められる事が地籍調査の進まない理由となります。
国交省は効率化に向け、航空機からのレーザー照射による測量方法の導入を市区町村に促す。実施率の当面の目標を2029年度末時点で57%とし、境界を決める手続きの「みなし制度」や測量のスピードアップにより上積みを図る予定です。今後もこのような動きに注目していきたいと思います。
本記事が戸建て住宅の購入を検討されている方の参考になれば幸いです。
法人営業部 犬木 裕