不動産取引ガイド

自宅は夢のマイホームではなく、「運用資産」と考えるべき

最近お客様に案内する際には、「自宅といえども、売却することを考慮した方が良いですよ」と言うと、「ずっとそこに住むつもりだから、資産性など考える必要はない」というご意見をお持ちの方がいます。果たして、今後の世の中本当に亡くなるまでその家に住むものでしょうか?

1973年の朝日新聞に「住宅双六」というものが掲載されました。これは、当時の日本社会における住宅事情をライフステージに応じて「標準」的な住み替えを競っていく双六ゲームでした。
最初は地方から働き口を求めて上京し、四畳半の古いアパートで独り暮らしを始めます。何年かして給料が上がったらもう少し質の高い部屋に引っ越す。結婚したら、夫婦二人で暮らすための新居を買うか、借りるかする。子供が出来たら、そこでまた住み替えです。
この双六の「あがり」は、「郊外庭付き一戸建て」でした。この時期は、第一次オイルショック直前の高度経済成長期であり、庭付き一戸建てのマイホームは、双六の「あがり」でした。いわゆる、サラリーマンの生涯の夢だったわけです。

その夢は、土地神話という名の神輿に乗っていました。地価は、右肩上がりで上がっていき、決して下がることがないと思われていました。だからどんなに借金をして背伸びして買っても、それで損をすることはなく、少しでも早く買った人が大きな含み益を上げることができた時代でした。つまり、その当初は「マイホーム」は夢であると同時に、確実な投資でもあったのです。

しかし、これは昔の時代の話であり、今の時代はそうではなくなっています。

バブル崩壊後、経済成長は鈍化し、ライフスタイルも変化し、ついに人口減少時代に突入、
高度成長期と今では不動産市場の環境は激変しています。

この時代にも価値が上がっていく物件はありますが、高度成長期のように何も考えずに買ってもすべての土地が値上がりするなどということはもはやあり得ません。

自分の趣味や思いつきで購入すれば、ほぼ確実に値下がりしてしまいます。よほど慎重に条件を選んで投資しようとしない限り、大きな痛手を受けることになってしまう、残念ながらそういう時代です。

「住宅双六」掲載からすでに約46年が経ち、双六の「あがり」を手にした団塊の世代の人たちは、高齢者といわれる年齢になっています。住宅ローンの返済はすでに終わり、子供もとっくに巣立っています。
ところが、後に残された高齢者夫婦は、必ずしも双六のゴールに満足といった状況ではありません。
足腰が弱り、「駅からの距離が遠い」「坂の上にある自宅までの道がつらい」「自宅の階段の上り下りがしんどい」といった理由から、夢のマイホームを捨てて郊外から都心部へ移住する高齢者が実に増えています。

昔の「郊外庭付き一戸建て」は特徴があり、新たに開発・分譲された新興の住宅街が多く、ほぼ同じような年齢層の住民で構成されています。必然的に移住したりするのも同じ時期が多く、自分が売りに出そうと思うと売りに出ている住戸が近隣に多数あり、価格を下げても買い手が現れず、処分できないという悩みが尽きません。事実上の全財産である郊外の自宅が二束三文でしか売れず、困り果てた親を見かねたお子さんが費用を負担して住替えさせているという例もあります。

そういったケースを目の当たりにすると、永住を前提に出口を考慮せず自宅を買う事が大きなリスクであるという事がわかってきます。

20年後、30年後も同じ場所に住もうと思っていても、人生は長いです。思っていた通りに事が運ばないことは多々あります。転勤、子供の教育、親の介護、様々な要因で、その場所に住み続けられない事情が出てきます。それが人生というものです。

今の時代には、自宅は「夢のマイホーム」ではなく、「人生最大の運用資産」と考えるべきだと思います。市場価格と流動性を考慮して物件を選び、必要が出てきたら売却して現金化する。そういう選択肢を持っておくことが大切です。そういった視点も持ちながら家探しをされることをお勧めします。

バイヤーズエージェント 中田でした。

次世代住宅ポイントは本当にメリットがあるのか?前のページ

2019 年5月度の不動産相場次のページ

ピックアップ記事

  1. 立地適正化計画をご存知ですか?
  2. 買ってはいけない物件を自分でチェック
  3. 土地価格の相場を知る方法
  4. 住宅購入と 生涯の資金計画
  5. 住宅購入は不安でいっぱい

関連記事

  1. 不動産取引ガイド

    災害と不動産購入

    毎日のように地震が各地で起きていますが今年も3月11日を迎えました…

  2. 不動産取引ガイド

    住宅ローン減税OK=新耐震ではありません!新耐震と旧耐震の区分

    2022年の税制改正で、住宅ローン減税の見直しが行われました。中古住宅…

  3. 不動産取引ガイド

    老いる多摩田園都市?!駅から遠くて売れない不動産が増加?!

    東京急行電鉄は9月2日、前身である田園都市株式会社の創業から100年を…

  4. 不動産取引ガイド

    二世帯住宅のメリット

    最近の我が家の建て替えプランの中にちょこちょこ二世帯住宅の販売図面を息…

  5. 不動産取引ガイド

    コンセプト型のマンションの需要

    特定の入居者をターゲットにしたコンセプト型のマンションが徐々に普及して…

  6. 不動産取引ガイド

    防犯対策は万全ですか?

    空き巣などの住宅を狙った侵入窃盗が、毎年多く発生しています。ガラスを破…

  1. 不動産取引ガイド

    ドローンが人工知能(AI)を活用して独学飛行、災害時にも役立ちそう?!
  2. 不動産取引ガイド

    不動産の持分
  3. 不動産取引ガイド

    住宅性能表示制度とは
  4. 不動産取引ガイド

    売る時に価格が下がりやすい物件とは?(自然災害の被害に遭いやすい場所に建つマンシ…
  5. お金・ローン・税金

    「超低金利を背景に 平均2.6年で借換えを決断!」
PAGE TOP