2021年3月19日に今後10年間の住宅政策の指針として新たな「住生活基本計画」が閣議決定されました。日本の社会や住宅の抱える課題を反映した同計画からは未来の住まい方が伺えます。ぜひ、不動産購入時に把握していただければ幸いです。国土交通省の調査によると全世帯のうち23%は津波や浸水など自然災害の危険がある地域に住んでいるようです。この「住生活基本計画」には災害の危険度が高い地域の住宅を安全なエリアへ移転誘導する事も盛り込まれているようなので、不動産購入時にはこの「住生活基本計画」を頭の片隅に置いておかれると良いのではないでしょうか?
■新型コロナウイルスの感染症拡大も考慮された「住生活基本計画」について
10年間の計画を社会経済情勢の変化等を踏まえ、5年ごとに見直されている「住生活基本計画」。今回は新型コロナウイルスの感染拡大や脱炭素社会へ向けた世界的な機運の高まりを受けて作成された計画となっています。今回の基本計画は「3つの視点」と「8つの目標」が重要なポイントのようです。まずは「3つの視点」とは①新たな日常にあわせた住まいや安全な住宅を実現する為の「社会環境の変化」、②子どもを産み育てやすく高齢者等も安心して暮らせる居住環境を目指す「居住者・コミュニティ」、③住宅循環システムの構築など持続可能な住宅づくりを目指す「住宅ストック・産業」です。この3つの視点を基に8つの目標が設定されています。
■「社会環境の変化」からの視点について、目標1、目標2を設定しました。
1つ目の視点「社会環境の変化」には目標1「『新たな日常』やDXの進展等に対応した新しい住まい方の実現」と目標2「頻発・激甚化する災害新ステージにおける安全な住宅・住宅地の形成と被災者の住まいの確保」という2つの目標があります。
目標1で推進するのは、国民の新たな生活感をかなえる居住環境の整備となっています。新型コロナウイルスの感染拡大や働き方改革により地方移住や複数拠点生活といった多様なライフスタイルや、テレワークを活用した新たな働き方に関心が高まっている。それに伴いテレワークスペースがある住宅や地域内のコワーキングスペース、サテライトオフィスなどを確保し、職住一体、近接の環境整備などを進めていくようです。また非接触型の住宅環境の整備や、新技術を活用し、住宅の契約や取引、生産・管理プロセスのDX化なども進めていく予定です。
目標2で目指すのは、安全な住宅や住宅地の形成、災害発生時の被災者の住まいの確保となっています。近年は地震に加え大型台風や集中豪雨などの自然災害が相次ぎ、住宅の被災リスクが高まっており、安全な家づくり、まちづくりは急務となっています。政府は住宅の改修による耐震性・耐風性に優れた家づくりや、停電・断水などが発生しても継続して居住できるレジリエンス機能の向上した住宅の普及を目指しています。不動産購入時にはこのような対策が取れた住宅や改修を行っての生活がポイントとなりそうです。
■「居住者・コミュニティ」からの視点では、目標3、目標4、目標5が設定されました。
2つ目の視点「居住者・コミュニティ」には目標3「子どもを産み育てやすい住まいの実現」と目標4「多様な世代が支え合い、高齢者等が健康で安心して暮らせるコミュニティの形成とまちづくり」、目標5「住宅確保要配慮者が安心して暮らせるセーフティネット機能の整備」という3つの目標が掲げられました。
■「住宅ストック・産業」からの視点について、目標6、目標7、目標8を設定しました。
3つ目の視点「住宅ストック・産業」には目標6「脱炭素社会に向けた住宅循環システムの構築と良質な住宅ストックの形成」、目標7「空き家の状況に応じた適切な管理・除却・利活用の一体的推進」、目標8「居住者の利便性や豊かさを向上させる住生活産業の発展」という3つの目標が掲げられております。
いずれにせよ、国は安心・安全で、一人ひとりが真の豊かさを実感できる住生活の実現に向けた施策の推進に動いていますので、住宅購入の際には、このような施策に沿った住宅選びが重要となります。ぜひ、今後の参考にお役立て下さい。
法人営業部 犬木 裕