不動産取引ガイド

インスペクションの誤った見方

改正宅建業法の施行から1年以上経過し、あれだけ大騒ぎしたはずなのに、今やすっかり落ち着いてしまった感のあるインスペクションですが、「インスペクションの捉え方が誤って進んでいないか?」と感じてしまう記事を見つけました。

インスペクションの説明義務化で不動産取引はどう変わる?

https://zuuonline.com/archives/198898

まず「インスペクションの説明義務化」とありますが、非常に微妙な表現です。

義務化されたのは、媒介契約書で建物状況調査のあっせんの有無の表示、重要事項説明書で建物状況調査結果報告書の有無の表示、売買契約書で、売主・買主の双方が確認した劣化事象の有無の表示、となるので、宅建業者が必ずインスペクションを説明しなければならないか?と言われると正しくありません。
※記事のタイトルや見出しなど文字数が限られているので仕方がないのはわかりますが、インスペクションに関する勘違いを誘発してしまうので、あまり適切とは言えません。
(この記事がおかしいというのではなく、説明義務化と捉えている事業者が多いのが問題です)

また、インスペクションを実施していれば安心という印象が強いようで、本来あるべき姿とはかなり遠いと感じます。

本ブログでも度々ご紹介しているインスペクションですが、インスペクション結果報告書が安全を担保したりする効果はありません。

インスペクションを実施する大きな目的は、改修工事です。

中古住宅なので、何かしらの不具合は生じるものです。
ですから中古住宅の取引において、事前に不具合箇所を確認し、「修繕するのにいくらかかるか」を購入判断材料にすることが重要になります。
どれだけ酷い劣化事象でも、お金をかければ直す方法はいくらでもあります。問題はいくらかかるのか?ということです。
これから長く住むにあたって、最低限修繕するべき箇所を明確にし、その修繕費用を含めて購入判断を行えば、中古を買ったら次々リフォームが必要になって、かえって高くついた、というような状況には陥りません。

もう一つ、インスペクションを実施するメリットとして既存住宅売買瑕疵保険があります。

インスペクションの結果、現状では問題ないと判断されたとしても、その状態がずっと続くわけではないですし、検査を実施した建築士の判断が何かで保証されている訳でもありません。
既存住宅売買瑕疵保険は最長5年・最大1000万円の安心の保険制度です。
インスペクションの結果で問題が報告されなかったら、単にその結果に喜ぶのではなくて、既存住宅売買瑕疵保険へ加入することを強くお勧めいたします。
※既存住宅売買瑕疵保険に加入するには建物検査に合格する必要があります。

インスペクションそのものに価値を見出そうとすると、いろいろと無理が出てきます。
インスペクションを実施したからといって高く売れるわけではありませんし、安全性が保証されている訳でもないのです。
そもそも既存住宅状況調査は非破壊検査で、目視で確認ができる範囲しか評価しません。
床下も小屋裏も侵入口から覗く程度です。
※実際にこの程度の検査では意味がないのではないかというクレームもあるようです。

悪いと指摘された場合は改善工事が必要なわけですから、現状では、検査と工事を分けて考えるよりも、工事を前提にインスペクションを行うといった判断の方が現実的です。

マンションに豪華な共用施設は必要なのか?前のページ

〇〇テックを活用する時代に!「リーガルテック」を活用して不動産契約書をAI点検?!次のページ

ピックアップ記事

  1. 買ってはいけない物件を自分でチェック
  2. 危険な場所は 地形図で見分ける
  3. その家は人口減少した将来でも売ることができる家ですか?
  4. 土地価格の相場を知る方法
  5. 住宅購入と 生涯の資金計画

関連記事

  1. 不動産取引ガイド

    中古を買う際のリフォーム費用について

    中古住宅を購入する時には最近ではリフォーム済の物件も増えてはいますが、…

  2. 不動産取引ガイド

    海外赴任者 帰任に備えた日本の家探し 14 【ローン正式審査~決済編 3/6】

    「海外赴任者 帰任に備えた日本の家探し」シリーズ。今回は、「2.各種証…

  3. 不動産取引ガイド

    不動産面積の落とし穴:壁芯面積と内寸面積の違いを知ろう

    不動産を購入する際、壁の厚さが実際の住空間に与える影響を理解することは…

  4. 不動産取引ガイド

    内見の際はごみ捨て場を確認しましょう。

    内見のとき、マンションでは専有部分、戸建では建物ばかりを見ていませんか…

  5. 不動産取引ガイド

    住宅ローン控除等を受けるための「確定申告」の仕方

    家を買って住宅ローン控除を受ける場合、購入・入居した年の翌年1月以降に…

  6. 不動産取引ガイド

    今更ですが、台風が発生した場合の備えはしっかりと。

    今回も火災保険の観点から、この時期よく発生する台風についてお話をさせて…

  1. 不動産取引ガイド

    蓄電池の重要が拡大中!
  2. 不動産取引ガイド

    狭小地を購入するデメリットは何か
  3. 不動産取引ガイド

    ブロック塀等の安全性確保に何が必要なのか?!不動産購入前にチェックすべきポイント…
  4. 不動産取引ガイド

    「物件ありき症候群」に気を付けよう!
  5. お金・ローン・税金

    親の土地に家建てる時は税金がかかるの?
PAGE TOP