■現在の所有者不明土地はどれくらいの大きさなのか?!九州本島より広い?!
結論から言うと、所有者不明土地は九州本島の面積を上回るそうです。
そもそも所有者不明土地とは「不動産登記簿などの公簿情報により調査してもなお所有者が判明しない、または判明しても連絡がつかない土地、もちろん私有地」の事です。
現在、「所有者不明土地」は全国で20%、約410万ヘクタールの面積を占めると推計されています。これは367.5万ヘクタールの九州本土を大きく上回る面積で、驚くほどの土地の所有者がわからないという状況にあります。しかも今後このまま登記制度を変えずにおけば、人口減少や少子化・高齢化により所有者不明土地はさらに増えるとの指摘もなされ、今後、どこまで拡大していくか注目をしたいと思います。
■今後、所有者不明土地の対策推進のための工程表とは?!
すでに政府からは「所有者不明土地問題 対策推進のための工程表」が公表されており、その中には所有者の氏名や住所が正確に登記されていない土地について、これも登記官に所有者を特定するための調査権限を与えたり、自治体が把握できる所有者の死亡情報と、国が管理している登記情報を紐付けて、現所有者を速やかに調べられるようにする構想が掲げられています。
実際には、登記簿表題部の所有者の表記が「○○太郎 他5名」などと記載されている「変則型登記」が数多く存在しており、調査権限が与えられればすぐに判明するという単純な話ではないが、土地の所有者を特定し、権利関係を明らかにすることで私的財産である土地の活用(税金の徴収も含めて)を公的に促進することを目的とした一種の社会主義的アプローチとなっていることに特異性があります。
■なぜこれほどまでに所有者不明土地が増えてしまうのか?!
所有者不明の土地がこれだけ増えて社会問題化した背景には、土地の相続人が所有者の変更について登記簿に記載する義務がないことが密接に関わっています。つまりは登記簿もしくは登記事項証明書の甲区、乙区欄で登記される権利については義務付けられていない事が大きな理由です。
売買による所有権の移転であれば、高額のコストを負担している経済活動でもあるので登記しないということは一般に考えにくいが、相続となると状況は変わってきます。相続が発生しても、権利関係を外部に主張する必要がなければ現に利用し居住する者が実際の所有者であることは明確であり、登記しなくても実生活において支障をきたすことはないからです。それに費用を支払ってまで、手続きをする流れも明確になっていませんでした。
現在は任意となっている登記を義務付ければ、今後所有者不明の土地が増えることを防ぐことが出できると考え、併せて土地基本法には「所有者の責務」を明記することで登記を促す方針であるという方向で話が進んでいるようです。
増田寛也元総務相が主宰する「所有者不明土地問題研究会WG」の試算によると、冒頭に記した通り2016年時点で九州全土の面積を上回る約410万ヘクタールの所有者不明の土地があると推計されるが、このまま対策を講じなければ2040年には北海道全土に相当する約780万ヘクタールにまで拡大する可能性があるとされています。
少子化・高齢化の影響は土地利用だけでなく、土地権利の態様にも大きな影響を与えています。
ぜひ、今後の参考にお役立て下さい。
法人営業部 犬木 裕