不動産取引ガイド

中古戸建て住宅は悪いところを直して買う

2023年がスタートしてにわかに不動産業界が騒がしくなっています。
不動産会社やポータルサイトのCMがたくさん流れるようになり、なんとなく「今年は家を買おうかな」とお考えの方も少なくないのではないでしょうか。
金利上昇の懸念や昨今の物件価格高騰から、中古住宅の購入を検討されている方もいらっしゃると思います。
今回は中古戸建て住宅に焦点を当て、中古戸建て住宅を安心して購入する仕組みである既存住宅売買瑕疵保険の活用についてご説明いたします。

□中古だから悪いところがあって当たり前

「中古住宅を買ったものの、住み始めると雨漏れなどの不具合が次々と出てきて、修繕にかかった費用を考えると新築にした方が良かった」
中古住宅購入の失敗談としてよく言われる表現です。
主に新築を売りたい事業者が中古に気が向いているお客様を新築に誘導するためによく使われるのですが、決して間違ったことを言っているわけではありません。
中古だから悪いところがあって当たり前なのです。

問題は現状で悪い箇所もしくは近い将来悪くなる箇所を把握せずに購入してしまうことで、修繕費用を予め算出しておいて、それが予算内に収まるのであれば、中古住宅取引で困ることはありません。

□中古住宅購入時にリフォームで家づくりを楽しむ

悪いところを直す、というのが少々後ろ向きな表現なので、言い換えをしてみます。
中古+リフォームとか中古リノベーションとか言われますが、中古住宅を購入して希望するリフォームを実現する、と考えると、ワクワクしてきませんか?
家づくりを本格的に行いたい方は新築注文住宅を検討するしかないのですが、注文住宅は高くて手が出せません。
それでも自分たちが住む家を思うとおりに作りたいという希望を叶えるのが中古+リフォームです。
予算が許す限り想い通りに家づくりを楽しむことができます。
中古+リフォームのメリットは、リフォーム箇所を限定することができることです。例えば家族が長い時間を過ごすリビングにはお金をかけて、主に寝るためだけの居室は最小限もしくはリフォームしない、といった強弱を付けることができます。
全体的にお色直し的なリフォームに留めて費用を節約し、キッチンだけは最高級のシステムキッチンにするといったことも可能です。
予算の強弱はリフォームならではのメリットだと思います。

□中古住宅の不安を解消するための制度

中古住宅は何となく不安だなぁと思われる方が多いと思います。
中古住宅取引における不安を解消するために国が用意した制度が既存住宅売買瑕疵保険です。
主に構造躯体と雨水の侵入に対する保険で、万が一何かあっても、最長5年最大1000万円まで保険で直すことができます。

この既存住宅売買瑕疵保険に加入するには、保険法人が実施する検査に合格する必要があるので、既存住宅売買瑕疵保険に加入できる=一定の性能基準をクリアした住宅と捉えることができます。

冒頭に申し上げた通り、中古だから悪いところがあって当たり前です。
この悪いところを見つけるのが既存住宅売買瑕疵保険の手続きで行われる建物調査(インスペクション)です。
そしてインスペクションで発見された箇所を修繕することで、購入してすぐに雨漏れなどの不具合が生じるなどの状況を回避することができます。
リフォームで悪いところを直して安心できるだけでなく、インスペクションで発見することができなかった不具合も保険でカバーできるので、中古戸建て住宅を購入する際には欠かせない制度と言えます。

□リノベーション物件も瑕疵保険を活用しましょう

家づくりやリフォームにはあまり興味がない方は、事業者が中古住宅を買い取ってリフォームして再販する「リノベーション物件」が良いかもしれません。
リフォームが仕上がった状態を確認してから購入判断ができるので、非常に買いやすい不動産取引と言えるでしょう。
しかし事業者によるリフォームの質はマチマチです。リノベーション物件は事業者が市場価格よりも安く買い取って、なるべくお金をかけずにリフォームすることで利益を生む事業です。
見た目だけを綺麗にリフォームして、見えない不具合はそのまま売ってしまおう、と考える事業者がいてもおかしくないのです。
リノベーション物件の品質を確認するには既存住宅売買瑕疵保険が最適です。
既存住宅売買瑕疵保険に加入するためには保険法人による検査に合格する必要があり、いい加減な検査で通してしまうと、保険事故が発生して保険料の支払いとなるので、保険会社も厳しくチェックします。
売主である宅建業者が既存住宅売買瑕疵保険に加入する仕組みなので、リノベーション物件に不安を感じる方は、買付申込の際に「既存住宅売買瑕疵保険に加入して欲しい」と要望を出して、すんなりOKしてもらえればとりあえず安心できます。
もし何かしら理由を付けて既存住宅売買瑕疵保険の加入を断られた場合は、検査に合格できない何かを抱えた物件として、購入の取りやめを検討した方が良いかもしれません。

※過去に「会社として加入できない方針なので…」という意味不明な断り文句を言ってきた事業者もいます。既存住宅売買瑕疵保険は国土交通省が安心安全な中古住宅取引を実現するために設けた制度なので、会社として加入できないなんてあり得ないことです。

□悪いところがない物件はラッキーなのか

既存住宅売買瑕疵保険の検査を行って、何も指摘事項がない物件も出てきます。
指摘事項がないということは保険加入のために修繕工事を行う必要がないので、余計なお金がかからなくてラッキーと判断する方が多いです。(特に不動産会社に多いです)
しかしこれは正しい判断とは言えません。
住宅は経年で劣化するもので、ノーメンテナンスで何十年も維持できるものではありません。マンションは共用の建物なので、修繕計画を立てて定期的にメンテナンスを実施しています。
戸建て住宅はマンションと違って修繕積立金がないからお得ですよ、と本質がずれた提案をする住宅会社がたまにいますが、戸建て住宅だからこそメンテナンスについてきちんと考慮しておく必要があります。

購入した住宅で現況で不具合が発生していなくても、耐用年数を超えた部位はいつ不具合が起きてもおかしくない状態と言えます。
この「いつ不具合が起きてもおかしくない状態」を放置することが次々と不具合が起きてしまう原因です。
少なくとも住宅購入時には主要構造部について「あと何年使えるか」の確認と、万が一不具合が発生した際の修繕費用を確認しておくことが重要です。

不具合が出たらリフォームするとお考えの方が多いのですが、個人的には住宅購入時に少し先を見越して、新築時からの耐用年数を超えている箇所については、まとめてリフォームを行っておくことをお勧めしています。
住宅購入時のリフォーム費用は住宅ローンに組み込むことができ、低い金利でリフォーム費用を確保できます。
悪くなってからリフォームする場合で現金が用意できない場合はリフォームローンを利用するしかないのですが、リフォームローンの金利は住宅ローンに比べて高く、また借り入れ期間も短いため、家計へのダメージが大きいです。

中古戸建て住宅を安心安全に購入する最大のポイントはリフォームです。
リフォームをしなくてもよい物件を探すのではなく、リフォーム前提で取引を進めることをお勧めいたします。
また、今回ご紹介した既存住宅売買瑕疵保険は消費者保護のために設けられた制度なので、保険に加入しなくて良い物件の方が少ないです。ぜひ積極的にご活用ください。

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