高齢者が老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)などに転居し、自宅が誰も住まない「空き家」となるケースがあります。その際に、意外と知られていない事として、一「誰も住まない家は傷みやすい」という事です。その為、もし空き家となった際には、なるべく早く売却をするか、他人に貸して家賃収入を得られれば、家計にもプラスになります。
その為、今回は高齢者が自宅を貸すための手順や注意点をまとめてみました。
■「空き家」になった際には「思い入れ」よりも大切なこと!
自宅で過ごす時間がながければ、思い入れのある家を手放したくないという人は少なくありません。それも、老人ホームなどへの転居を機に自宅に誰も住まなくなってしまいやすい「空き家」となるケースが増えています。子どもが自宅を持っていると、そのようなケースになるシーンは多いです。生きている間に売って老後の資金にするのが合理的だと分かっていても、実際には踏み切れない人が多くいます。「空き家」状態が続き、結果、売却の選択を数年後にする際には大規模修繕が必要となっているケースも多く、売却をするなら早めに対応をご検討いただいた方が良いです。もしくは、自宅を賃貸する選択肢もあります。
■「空き家」を売却するケースについて
自宅を売却したり、貸す基本的な手順は現役世代と変わりません。平均寿命が延び、認知症患者が増え、核家族化が進んでいることを考えると、マイホームを売却した資金で施設へ入居したり、都心部へ引越をする需要はさらに高まる可能性が高いです。しかし、認知症を患っている高齢者と不動産売買契約を締結することは大きなリスクを伴います。トラブル事例が積み重なり、社会問題化することで、高齢者が所有する不動産の流通性を下げる要因になるかもしれません。
また、共有名義の不動産の売却等は権利関係が複雑になる事があり、それも高齢者の不動産が「空き家」になっている状態が続くと、所有者が亡くなった際の相続トラブルに発展するケースが高まります。
信頼のおける不動産事業者に相談を行い、「空き家」になったばかりの傷む前の売却をご検討いただきたいと思います。
■「空き家」を賃貸で出すケースについて
まずは自宅周辺で条件が近い物件の家賃相場を確認します。そのうえで地元の不動産業者に実際に貸す場合の家賃やリフォームの必要性などを相談していただきたいと思います。条件がまとまれば入居者の募集をする事をお任せください。
最初に確認したいのが自宅に賃貸物件としての魅力がどの程度あるかです。都市部や駅が近いなど立地が良い物件なら、借り手を見つけるのは比較的簡単です。この数年の地価の上昇などで、ファミリー向けの賃貸物件は全国的に需要が高まっています。一方、通勤圏から大きく離れている地域では借り手を見つけにくくなります。
時期によって需要に波がある地域もあり、例えば大企業の地方拠点がある地域では2~4月に契約が集中します。人口の少ない地域は賃貸物件が少なく、意外と借り手が付くケースもあります。
物件の状態も重要です。1981年以降は震度6強~7の揺れでも倒壊しない「新耐震基準」が適用されていると言われています。しかし、現行の耐震基準で無い事、またそれ以前に建てられた建物だとこれを満たしていない事が想定されます。その場合は借り手が見つかりにくかったり、家賃を大きく下げる必要が出てきたりします。築年数がたっている場合は耐震診断が必要になることもあります。
家賃相場や需要については不動産情報サイトを見れば、ある程度自分で調べられます。情報を集め、より具体的に検討する段階で不動産業者に相談するのがスムーズとなります。実際に家をみてもらい、想定される家賃や必要となるリフォームの内容などについて確認します。
この段階で慎重に考えておきたいのが収支計画です。主な収入が年金の世帯では大幅な「赤字」を出すと、その後の生活費に影響してしまいます。リフォームや使っていた家具の処分などの費用と不動産会社に払う手数料や税、期待できる家賃、貸す期間といった条件を設定した上で、何年で費用を回収できるかのメドを立てておきたいです。
特にリフォームは金額が大きくなりやすい為、一般に戸建て住宅の場合、壁紙の張り替えなどの内装や外壁塗装、洗面台やトイレの修繕は欠かせません。少なくとも200万円はかかると考えた方が良いようです。台所や風呂場などの水回りも対象にすると350万~400万円といった金額になります。
例えば水回りも含めたリフォームに350万円掛かるケースですと、家賃が東京近郊で多い月約10万円とすると、家賃だけで回収するには単純計算で3年かかります。これが地方に多い約5万円に下がると、回収までの期間は6年に延びます。その為、どの場所にある不動産なのかによって、賃貸に出す際の回収時間が変わってきます。
リフォームにお金をかけることは家賃の水準を上げ、借り手を見つけやすくします。しかし、長く貸す前提でない場合は慎重に考えた方がよさそうです。家が傷むのを避けるのが主目的ならば、投資回収よりも大きな赤字を避けることを優先する考え方もあります。
将来、自宅に戻ることや子どもが住むことを視野に入れるなら、賃貸契約は「定期借家」にするのが基本となります。通常の契約では借り手の退居時期を決められない為、定期借家なら2年や3年といった期限が来れば借り手は必ず退居する事となります。通常の契約より家賃は下がりやすくなりますが、将来の計画が立てやすくなります。自宅の持ち主が亡くなり相続が発生した場合も、家の扱いについて選択肢を広げやすくなります。
いずれにせよ、「空き家」を放置してしまう事がないようご注意いただきたいと思います。
今後の参考にお役立て下さい。
法人営業部 犬木 裕