首都圏の新築マンションの平均価格がバブル期を超え、高騰が続いています。そのようななか最近、少しずつ増えてきたのが返済期間が最長50年の住宅ローンです。札幌エリアでは不動産価格が上昇し、この50年の住宅ローンを選択する人が増えているようです。毎月の返済額を減らせる一方、総返済額が膨らむなどのリスクもある為、本日のこの50年の住宅ローンについて、解説をしたいと思います。
■なぜ、50年の住宅ローンを選択する人が増えてきたのか?!
マンション価格は2013年ごろから右肩上がりの上昇が続き、国土交通省が10月末に公表した不動産価格指数(10年の平均を100として算出)によると、2023年7月分のマンションは190.5となっています。つまり、この10年で2倍近く値上がりしたことがわかります。東京23区では1億円以上する「億ション」も珍しくありません。バブル期と同じような不動産価格となっています。
国交省が定期的に発表する不動産価格指数とは、年間約30万件の不動産の取引価格情報をもとに、全国・ブロック別・都市圏別等に不動産価格の動向を指数化したものです。「不動産価格指数」を毎月公表されており、所有権移転登記情報をもとに、不動産価格指数を補完するものとして、不動産の毎月の取引件数及び取引面積を示す「不動産取引件数・面積」も毎月公表しています。
<国交省が定期的に発表する不動産価格指数について>
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_tk5_000085.html
都市部では新築、中古ともにマンション価格は当面、高止まりが続くとみられ、住宅ローン返済の負担は家計に重くのしかかります。このような状況で増えつつあるのが、返済期間が最長50年の住宅ローンです。ネット専業の銀行として有名な住信SBIネット銀行や、広島銀行、北洋銀行など地方銀行が展開している金融商品です。JAバンクやろうきんなど40年の住宅ローンを扱う金融機関もありますが、不動産価格の高騰から、その購入を行えるようにする手段として、50年の住宅ローンが登場しました。
長期の住宅ローンは、最長50年まで融資する「フラット50」(2009年から発売)が先駆けといわれています。フラットのシリーズは全期間の金利が固定の住宅ローンで、全国の金融機関が住宅金融支援機構と提携して提供しています。よく利用されているのは返済期間が最長35年の「フラット35」となっています。
■フラット50の長期の住宅ローンはなぜ、誕生したのか?!
フラット35とフラット50を利用するには、借り入れ対象の住宅が①(耐震性や省エネ性などに優れる)長期優良住宅である②住宅金融支援機構が定めた技術基準に適合する事が、をいずれも満たす必要があります。
住信SBIネット銀行や地方銀行などが取り扱う長期の住宅ローンにはそうした条件はありません。収入が少ない若年層の世代でも住宅を買いやすくするため、従来の35年が最長という返済期間を延長した形の商品だからです。
金利は変動金利型と固定金利選択型(あらかじめ設定された固定金利期間から選べるタイプ)のほか、変動と固定などを組み合わせられるミックスローンもあります。
しかし、返済期間が最長50年といっても完済時の年齢は決まっており、たとえば、完済時80歳未満の場合は29歳以下の人でないと50年のローンは組めません。年齢を重ねるほど、50年のローンを含め長期で組むのは難しくなり、子どもが返済を受け継ぐ「親子リレー返済」を利用できるところの仕組みを使い、50年の住宅ローンが可能となる金融機関もあります。勿論、この親子リレー返済も要件はあります。
最近は夫婦の収入を合わせて返済していくケースも増えています。それぞれがローン契約を結ぶ「ペアローン」と、ローン契約は一つで収入を合算する「連帯債務」などの方法です。借入先の取り扱いは各金融機関によって内容が異なりますので、必ず不動産購入時に時間が制限されていますが、きちんと把握される事をお勧めします。
■「フラット35」より「フラット50」を選ぶメリットとデメリットとは?!
長期ローンのメリットは、同じ借入金額と金利で試算した場合、返済期間が長いほど毎月の返済額は少なくなる点です。たとえば、5000万円を2.5%の全期間固定金利で借りた場合、返済期間25年だと毎月返済額は22万5000円と高額な返済となりますが、返済期間50年であれば14万7000円で済みます。これであれば返済できると判断し、購入するケースも考えられます。しかし、返済期間が長くなれば金利を支払う期間も長くなり、総返済額は大きく変わってきます。前述の試算では50年返済は25年返済より約2000万円も支払額が多くなるという計算となります。
この先50年では経済・金融情勢の変動も十分に考えられる為、変動金利型を選択すれば、途中で想定以上に金利が上昇する局面が訪れ、返済額が増えるリスクが更に高まります。
それ以上に気をつけたいのは、50年間(あるいは80歳程度まで)無事に返済できる家計収支となっているかが重要です。70歳まで働ける環境が整いつつあるとはいえ、70歳以降も多額のローン残高が残っているのは老後の不安要素となります。
ペアローンなどを利用して夫婦で返していく場合も、将来、様々な要因で収入が減る可能性があることも頭の片隅に置いておく必要があります。勿論、途中での繰り上げ返済をしたり、死亡をきっかけに団体生命信用保険(団信)での返済を行う方法等あります。重要な事は長期の住宅ローンを組む際には、「何とかなる」だろうと考えず、十分に検討したうえで利用するようにして欲しいと思います。
現在、主要都市を中心に不動産価格は上昇しています。このような状況を考慮しての住宅ローンの選び方は重要です。ぜひ、今後の参考にお役立て下さい。
法人営業部 犬木 裕