不動産取引ガイド

マンション購入を検討されている方へ 『大規模修繕工事』とは?!

鉄筋コンクリート造のマンションは構造的には頑丈な造りをしています。しかし、雨風や日射の影響を受け、少しずつ少変化が進んでいきます。そのため、定期的にメンテナンスを行い、建物の安全と資産価値を維持していく必要がありますが、その中でも足場を掛けて行う特に大掛かりな工事を大規模修繕工事と呼びます。毎月、マンションの管理費と同時に修繕積立金を積み立て、大規模修繕の際に利用するものとなります。大規模修繕工事はさまざまな工事内容で構成されており、劣化の状況や築年数、目的等によって注意すべきポイントもかわってきます。適切なタイミングで、適切な工事を行うためにも、大規模修繕工事本来の目的や内容をきちんと把握しておくことはとても大切です。そこで今回はマンション購入を検討されている方の参考になればと思い、大規模修繕工事に解説していきたいと思います。

■マンション購入前に把握したい、大規模修繕工事とは?!

大規模修繕工事は、年数の経過によって起こる建物の劣化部分や故障個所を補修し、機能を回復させることを目的にして行われる工事です。マンションは建築基準法に基づいて建てられているので、基本的に建物として最低限の安全基準は担保されています。しかし、どれだけ優れた技術や建築資材を使っていても、築年数の経過とともに進む経年変化は防げませんので、定期的なメンテナンスは欠かせません。分譲マンションの場合、修繕計画は管理組合が主導することになります。その計画の中でも、特に12~15年位の間隔で実施される足場を掛けるような大掛かりな工事を大規模修繕工事と呼びます。主な工事内容としては、外壁やタイルの補修工事、シーリング工事(サッシ回りや外壁のつなぎ目の防水工事)、防水工事、塗装工事などがあげられます。対象となるのは主に共用部分ですが、大規模修繕工事は工期が長く、費用も高額になるため計画性をもって行うことが大切です。マンション購入前には、その工事を実施する前に、どれくらいの積立金や計画が立てられているかを把握する事をお勧めします。

■そもそもマンションは大規模修繕工事が必要なのか?!

マンションにも寿命があります。頑丈な造りではありますが、風雨や日射の影響を受け年月とともに経年変化が進みます。こうした経年劣化による影響をできるだけ抑え、建物を長く安全に使っていくためには、定期的なメンテナンスが欠かせません。鉄筋コンクリート造の建物を守る上で一番大切なことは、コンクリート内部の劣化を抑制することです。鉄筋コンクリートの内部には鉄筋が配置されており、コンクリートと鉄筋双方の長所・短所を補い合うことで高い強度を実現しています。通常、劣化は空気に触れる建物の表面から内部に向かってゆっくりゆっくりと進んでいくのですが、ひび割れなどがあると水や空気がコンクリートに入り込み、内部の鉄筋を錆びさせます。錆びた鉄筋は膨張し、周囲のコンクリートを押し出す強い力となり内側からコンクリートを割っていきます。こうなると建物の強度は大きく低下してしまいます。こうした内部に至る深刻な劣化を予防するためには、ひび割れなど劣化が軽度のうちに発見し、直すことが大切です。また、昨今では二酸化硫黄(SO2)や窒素酸化物(NOx)などを起源とする酸性物質が雨となり、コンクリートの中性化を促し、結果、劣化が進むことが問題視されています。

マンションの外壁に発生したひび割れを全体的に確認して直すには足場が必要になりますので、工事では建物周囲に足場を設置します。その際、外壁の補修以外にも足場がないと出来ない工事を色々とまとめて行うことが多くあります。これは、足場の設置にも多額の費用が発生するため、個別に工事をするよりもまとめた方が経済的だからです。結果として大掛かりな工事は『大規模修繕工事』と定義されるようになりました。また、大規模修繕工事を適切な時期に行うことは、快適性や資産価値といったソフト面でも大きなメリットがあります。経年劣化は放置すればするほど酷くなるため、適切なタイミングで大規模修繕工事を行ってきたマンションとそうでないマンションでは、年数が経つにつれて見た目の美しさや快適性の面で大きく差が広がります。加えて、防犯設備の強化やバリアフリー化など新しいライフスタイルに対応した改良工事も実施していくことで、時代に即した暮らしやすさや安全性を実現し、対外的には資産価値を高めることにつながります。

■マンションの規模により変動する大規模修繕工事にかかる費用

マンションの規模や工事内容によっても異なりますが、大規模修繕工事の工事費用はおおまかな目安として、一戸あたり130~150万円とも言われています。また、区分所有者が大規模修繕工事の際にそれぞれの負担分の費用を一括で支払うことはあまりありません。一般的には管理組合が「修繕積立金」として、各組合員(=区分所有者)から毎月徴収して積み立てており、大規模修繕工事の費用もここから捻出されます。マンションの大規模修繕は住人全員の利益にかなうことですが、いざ実行するときに一括で徴収することは区分所有者にとって大きな負担となり、また一部の人だけ支払えないとなるとトラブルの原因になります。そのような事態を避けるために、管理費と同じように毎月徴収して1回あたりに支払う負担を軽くしているというわけです。

昨今問題視されている、マンションの修繕費用には物価変動を見込まない旨の表記があり、積立金不足のマンションが全体の約4割程度あるようです。これからマンション購入をされる際にはどれくらいの積立金や計画が立てられているかを把握する事をお勧めします。今後の参考にお役立ていただければ幸いです。

法人営業部 犬木 裕

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