不動産の売買契約とは、売主と買主の間で土地や建物などの不動産を一定の条件で売買することに合意し、その内容を契約書として取り交わす法的な行為です。不動産の売買契約では、「一般法」である民法も適用されますが、民法と『宅建業法』が競合する場合、特別法である『宅建業法』の条項が優先されます。契約書の締結によって当事者間に権利義務が発生します。特に不動産は高額な取引が多いため、慎重な手続きと書面での記録が不可欠です。
1.不動産の売買契約の手順・流れ
不動産売買契約の手続きは、一般的に以下のような流れで行われます。
① 売却・購入の意思表示と物件の選定
まず、売主は不動産会社を通じて物件を売却する意志を示し、買主は希望条件に合った物件を探します。買主が物件を内見し、購入の意志を固めたら次のステップに進みます。
② 価格や条件の交渉・合意
売主と買主の間で物件価格、引き渡し日、付帯設備の取り扱い、手付金の額など、売買条件について交渉が行われます。交渉の結果、合意に至ると、申込書(買付証明書)を提出することが一般的です。
③ 重要事項説明
契約に先立ち、宅地建物取引士が買主に対して物件に関する重要事項説明を行います。これは宅建業法により義務づけられており、物件の登記内容、法令上の制限、ライフラインの状況、管理体制(マンションの場合)、瑕疵の有無などが説明されます。説明後には、「重要事項説明書」に署名・押印します。
④ 売買契約の締結
重要事項の説明が完了し、内容に納得した場合、売買契約を締結します。契約書には以下のような内容が記載されます。また、契約書に双方が署名・押印し、手付金(一般的には売買価格の5〜10%)を買主が売主に支払うことで契約が成立します。
・物件の表示(所在地・構造・面積など)
・売買代金と支払い方法・時期
・手付金の金額と性質(解約手付、違約手付など)
・引渡し日と所有権移転日
・瑕疵担保責任(契約不適合責任)の取り決め
・ローン特約(住宅ローンが通らなかった場合の契約解除条件)
・違約時の措置(損害賠償など)
・その他特約条項(家具の取り扱いや境界の明示など)
⑤ 住宅ローンの本申込み(買主)
住宅ローンを利用する場合、契約後に本申込み手続きに入ります。事前審査に通っていても、本申込みの段階で否決される可能性もあるため、契約には「ローン特約」が付けられることが多いです。これにより、ローンが通らなかった場合に契約解除が可能になります。
⑥ 残代金の支払い・引渡し
契約で定められた日に、買主は残代金を支払い、売主は所有権を移転します。この際には以下の手続きが同時に進行します。この時点で、正式に買主に物件の所有権が移転し、不動産の引渡しが完了します。
・登記手続き(司法書士が行う)
・固定資産税等の清算
・鍵の引渡し
・管理費・修繕積立金の精算(マンションの場合)
2.不動産の売買契約の所要時間の目安
不動産売買の流れ全体にかかる期間は、物件の種類や契約内容、金融機関の対応によっても異なりますが、おおよそ以下の通りです。
・物件探し・交渉の所要期間の目安:1週間〜1ヶ月
・重要事項説明・契約締結の所要期間の目安:数日〜1週間
・ローン本申込み〜承認の所要期間の目安:1〜2週間
・引渡し準備・登記手続きの所要期間の目安:2週間〜1ヶ月
合計(所要期間の目安) 1.5ヶ月〜3ヶ月
3.不動産の売買契約時の注意点
契約書と重要事項説明書の内容確認:専門用語が多いため、分からないことは必ず宅建士や不動産会社に確認しましょう。また、ローン特約の確認をきちんと行うことで、ローンが通らなかった場合のリスクを回避する事ができます。違約金・手付解除の条件を把握して、契約解除の可否や金銭負担について事前に理解しておく必要があります。瑕疵担保責任(契約不適合責任)については中古物件では特に注意が必要です。引渡し後のトラブルを防ぐためにも、現地調査やインスペクション(建物診断)を推奨します。
4.不動産の売買契約のまとめ
不動産の売買契約は、法律に基づく正式な手続きであり、多くのステップと書類が必要です。売主と買主双方が納得のいく形で契約を締結するためには、信頼できる不動産会社の仲介を活用し、契約書・重要事項説明書の内容をしっかり確認することが重要です。また、購入に際しては資金計画を綿密に立て、ローン審査の通過を前提に計画的に進めることが求められます。全体の所要期間は1.5〜3ヶ月程度が一般的ですが、条件によっては短縮または延長される可能性もあります。
今後の参考にお役立て下さい。
法人営業部 犬木 裕