2018年9月8日の日本経済新聞朝刊に『不動産に「履歴書」導入 国交省、中古住宅の流通促進』という記事が出ていました。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO3511181007092018MM8000/
個人的にはこれからの動きに注目していきたい内容でしたので記載したいと思います。
国土交通省は不動産物件に公的なIDを付与し、「履歴書」のように取引実績を集約する仕組みをつくるようです。不動産登記簿に記載されている不動産番号もありますので、その統一も目指しての事かが気になるところです。
今回の内容を読んでみますと、対象物件の過去の成約価格の推移やリフォーム実績の有無などを一覧できるようにするようです。個人的にはぜひ、耐震性能などの実績も判断できるようにして欲しいと思っています。結果、不動産市場の透明性を高めることで中古住宅の流通を促され、物件単位の細かな情報を蓄積することで、不動産統計を高度化する狙いもあるようです。
宅地建物取引業者が使う「REINS(レインズ)」と呼ばれる公的な情報仲介サービスの登録物件にIDを付与するようです。IDによって同一物件のものだと認識された過去の取引履歴を集約し、結果、多くの不動産の判断材料になってくれることを期待しているようです。
「REINS(レインズ)」とは・・・。
2019年度に有識者による検討会を立ち上げ、同年度中に実証実験を始める予定のようです。少し先のお話ではありますが、将来的にはリフォーム実績など民間団体の持つ住宅関連情報との連携も視野に入れ、事業者間連携の中でより良い仕組みがつくられてくる予定のようです。
レインズには17年度に約160万件の新規売却物件が登録されています。不動産物件に関する詳細な取引履歴を把握するには、登記簿をたどったり以前の所有者に直接問い合わせたりするなど膨大な手間がかかります。不動産IDが普及すれば、物件単位の価格推移を容易に把握できるようになります。地域や条件を限定するなど、より詳細な不動産市況の推移を統計化しやすくなる予定です。
日本の住宅の平均築後年数は約30年とその短命さが問題となり、なかなか中古住宅の流通が進まないと言われています。ちなみに英国では77年、米国では55年となっており、比較すると日本の住宅はかなり短命と言わざる負えません。日本の場合、戦後の驚異的な高度成長と人口の都市集中でバブルが崩壊するまで永く土地神話が続き、土地価格が建物に比べ相対的に高かった為、そのため家を建てても20年くらい過ぎるる家を取り壊して更地にし、スクラップ&ビルドの考え方が浸透してしまったとも言われています。
また、今回の不動産IDを発行しての取引履歴の管理について、気になる事として、現在、物件の売り主が仲介業者を1社だけに絞った場合(専任媒介契約、専属専任媒介契約)、成約した日付や成約価格を仲介業者がレインズに登録することが義務付けられています(そのような義務付けでも地方圏で登録が進んでいないエリアもあり、このような仕組みが広がる事で、登録が進んでいけばと思います)。成約価格が蓄積されるため、IDでひも付けすれば市場の実勢を反映した質の高い情報を集めることができるようになります。個人的には不特定多数多数の不動産事業者に売却を依頼する一般媒介契約の場合の情報は蓄積されない事が少し気になるところです。
少し話は変わりますが、2009年には、長寿命な家を「長期優良住宅」と認定する「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」が施行されました。この認定を受けるために、「住まいの履歴書(家歴書等)」をつけて保存することが義務づけられています。個人的には最近はこの履歴書についてのPRが少なくなっているような気がしていますが・・・。
そもそも家歴書とは何?
家歴書とは、その建物が「どのように作られたか」「どのようなメンテナンスをしてきた」かを示すもので、いわば”住まいの履歴書”のようなもの。これがあれば、短期・長期の住宅のメンテナンス計画を立てやすくなり、家の売買を行う際に有利になると考えられています。現時点では価格反映までには至っていないような気がしますが、購入を検討される消費者には非常に為になる情報だと思います。
■契約書類
契約書、保証書(住宅性能保証制度)、引き渡し書、施工引き渡し確認書、備品リストなど
■調査評価書
地盤調査報告書、住宅性能評価書、住宅検査報告書など
■住宅設計図書
意匠図、構造図、備図、建築確認申請書類、取扱説明書など
■施工記録
建築途中図書、工事工程表、工事経過報告書、工事記録写真、業者一覧表など
■維持管理記録
日常的な維持保全記録、定期点検記録、維持保全改修履歴書、光熱費記録データなど
個人的には今回の不動産のIDを発行しての取引履歴の管理について、「住まいの履歴書(家歴書等)」まで反映されてくるとかなり中古住宅の流通も進んでいくと思います。まだまだ課題は山積している状況だと思いますが、これからの人口減・家余り社会の中での住宅政策の推進につながる記事だと思いましたので、ぜひ、今後の参考にお役立てください。
法人営業部 犬木 裕