不動産取引ガイド

相続争いの火種 ~遺留分について~

不動産を所有している方が亡くなった場合、問題となる事例のひとつが「遺留分」です。

遺留分とは、法律で定められた相続人に残すべき相続分です。

例えば、相続人が配偶者と子供であればそれぞれ全財産の4分の1が遺留分となります。

子供が2人であれば、8分の1ずつが子供の遺留分となります。

遺言書で「すべての財産は長男へ」と書いていたとしても、次男はその8分の1を遺留分として請求することができます。

母親を看護しながら同居をしてくれている長男に遺言で相続財産全部を渡そうとしても、遠方に住んでいて顔を出さない次男にも8分の1を請求する権利が残されているのです。

相続財産の8分の1にあたる現金や金融資産があれば良いですが、大抵の家庭では不動産が相続財産の大半を占めています。

そのため、長男に相続させようと思った自宅の8分の1を次男が請求する、といった事態が発生します。

遺留分問題を解消するひとつの手段は、相続開始前からの家族での話し合いと、相続人への配慮ある遺言書の作成です。

なぜ遺留分を超えた相続のさせ方をしたいのか。

その意向を生前から相続人へしっかりと伝え、また遺言書の「付言事項」においても言葉を尽くしていくことが大切です。

それ以外の方法として、家庭裁判所の許可を得て、生前に遺留分を放棄するという方法もあります。

相続人となる人が裁判所へ出向き、遺留分放棄の意味やその理由を理解しているか裁判所で尋問を受ける、という手続きです。

この生前の遺留分放棄については、「相当の理由」が必要とされています。

遺留分にあたる額の生活の援助をすでに受けている、事業資金として出資を受けた、といった理由が必要です。

相続が発生した際に相続争いになることが予想されるような場合には、遺留分を放棄させたい相続人を説得して、裁判所へ出向いてもらう必要があります。

相続トラブルが想定される方への依頼になると思いますので、色々な調整が必要になるかと思います。

こういった遺留分への対応が完了できれば良いですが、対応できない場合には、不動産を売却したうえで、現金を分配するといった結末を迎えることになります。

この場合でも、売却できる不動産であれば、という前提付きです。

売却できないような立地、条件の不動産であった場合、売却もできず、相続手続きも進まず、いわゆる「空地・空き家」へと向かってしまいます。

実際には、こういった不動産も多く存在してしまっています。

改めて、相続トラブルの種とならない不動産選びと、相続トラブルを避けるための手立てが重要です。

二世帯住宅を建てる時に間取りよりも前に考えなければならない事とは?前のページ

確定申告 新築住宅購入の際の住宅借入金等特別控除(住宅ローン減税)次のページ

ピックアップ記事

  1. 住宅購入は不安でいっぱい
  2. 住宅購入と 生涯の資金計画
  3. 建物インスペクションを実施する最適なタイミングとは?
  4. 危険な場所は 地形図で見分ける
  5. その家は人口減少した将来でも売ることができる家ですか?

関連記事

  1. 不動産取引ガイド

    ヒートショックには気をつけて!!

    暑い夏が終わり,あっと言う間に冬が来ます。ヒートショックとは、…

  2. お金・ローン・税金

    お金との上手な付き合い方?!住宅ローンの繰り上げ返済は相続の視点からは考え物?!

    「住宅ローンは手元にお金があるなら早く繰り上げ返済したほうがいい」とよ…

  3. 不動産取引ガイド

    テレワーク可能な部屋探しのテクニック

    最近のお住まい探しでよく聞くご希望は、「テレワーク用の部屋が欲しい」「…

  4. 不動産取引ガイド

    間接照明の使い方で1UP。

    間接照明という言葉はあちこちで聞く機会が多いかと思うのですが、さて実際…

  5. お金・ローン・税金

    フラット35の10割融資、ご存知ですか?

    フラット35の借り入れ金額の基本は物件購入価格(土地取得費+建築費)の…

  6. 不動産取引ガイド

    耐震・制震・免震 とは?

    耐震性の高い住宅にするための建物の構造形式には、一般に、耐震構造、制震…

  1. 不動産取引ガイド

    アマゾンも注目するドローン(小型無人機)!インスペクションに応用すると・・・?!…
  2. 不動産取引ガイド

    空き家を「準公営住宅」として活用していく?!家賃を補助し、子育て世帯支援を実施?…
  3. 不動産取引ガイド

    新年度がスタート!話題の安心R住宅、インスペクションのあっせん義務化、タワーマン…
  4. 不動産取引ガイド

    購入する物件が決まった後にすること その4(住宅ローン 本審査申込)
  5. 不動産取引ガイド

    国民年金の「納付期間45年へ延長」住宅購入を消費ではなく未来への貯金に代える方法…
PAGE TOP