不動産取引ガイド

「地震被害に必ず遭遇する」という前提

防災の話です。

防災を考える上で、大切なのは最悪の想定です。最悪を想定して、それらに対する対策・準備を行うことが大切です。

スリッパを例にご説明します。

地震被害に遭遇すると、家具が散乱し、窓や屋内のガラス製品が破損することが想定されます。
スリッパを日常的に使用しない方は、はだしの状態で地震被害に遭遇すると、高い確率で足を怪我してしまいます。(実際に阪神淡路大震災の際にも多く見られたようです)
そもそも玄関から出られる状態にない場合も十分に考えられ、着の身着のまま避難を余儀なくされることも考えられます。
はだしで地震被害に見舞われた街を避難する…。どう考えても足の怪我は避けられそうにもありません。
だから不測の事態に備えて、スリッパを常用する、最低限寝る際には枕元にスリッパを置いておく、などの対策が有効と言われます。

家屋の耐震化が進まない原因は様々です。多くはお金がかかる対策になるので、致し方ない部分はあるのですが、地震被害に遭遇することがどれだけリアルに捉えられるかによると個人的には考えています。

地震対策を考える上で、よく言われることが、「いつ起こるかわからない」「起きてしまったらその時は諦める」といったことです。これはおかしなことです。
リスクヘッジの事例として、車があります。
自賠責保険は義務ですが、多くの方は任意保険に加入されていると思います。車検制度の影響もありますが、走行に支障をきたす車両の場合、少なくとも修理を行いますし、買い替えを検討される方も多いでしょう。
この車の例は、車によって事故に見舞われる(事故を起こしてしまう)ことをリアルに捉えているからだと思います。
車は事故を起こすものだとして社会制度が整備されています(自賠責保険や車検など)し、利用者も事故に備えて準備を行うことが一般的です。

長くなるので割愛しますが、生命保険やがん保険、火災保険などの損害保険も、発生しうるリスクをリアルに捉えられているからの常識と言えます。

自動車事故も、死に至る病に罹患することも、火災に見舞われることも、「いつ起こるかわからない」ことですし、見方を変えれば、「起きてしまったらその時は諦める」という判断もあり得ます。(車の任意保険に加入しない方など)

ではなぜ住宅の耐震化について、一般化しないのでしょうか。「地震被害に必ず遭遇する」という前提が一般的でないからだと思います。
車で事故を起こすほど、ガンになって働けなくなるほど、火災で自宅が燃えてしまうほど現実の問題として、自宅が地震で倒壊してしまうことを捉えることができていないのです。

大きな地震被害は交通事故ほど頻繁に発生する訳ではありません。
人生には多様なリスクが生じますが、すべてに対応していては生活がままなりませんから、頻度が高くない災害についてリアルに実感することは難しいかもしれません。
しかし、ご存じない方が多いと思いますが、日本の様々な制度は、一生に一度、大きな地震被害に見舞われることが前提になっています。
耐震診断・耐震改修に対する補助制度なども用意されていて、すべての人が対象ではないのですが、求めれば自治体が助けれくれる制度が存在します。

こういった状況で最悪の事態は、自宅が倒壊し、家族に被害が出てしまうことです。
想像を絶する絶望感。
阪神淡路大震災の頃とは違う、「対策を講じていれば助かったかもしれない」という事実が、生き残った遺族に大きなダメージを与えてしまいます。

日本の耐震技術は少しずつですが進歩しています。防災対策も様々な経験を踏まえてかなり進歩しています。
あと必要なのは、「地震被害に必ず遭遇する」という前提だけです。

これから長期の休みを取られる方も多いと思います。
お盆で実家に帰省する方もいらっしゃるでしょう。
ご家族皆さまでぜひ防災について話をしてみてください。

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