現在、マンション購入を検討されている方はご確認下さい。現在、政府は分譲マンションの建て替え条件を緩和する検討に入っています。所有者の賛同割合の引き下げなどを柱に区分所有法の改正を目指しています。建て替えやすくして老朽化マンションの増加に歯止めをかける事が狙いとなっており、2022年度にも法制審議会(法相の諮問機関)に諮問する予定です。
■マンション建て替えに必要な賛同は「5分の4」から、「4分の3」以下になる?!
現在の建て替えに必要な賛同を「5分の4」から、「4分の3」以下に引き下げる事を検討しています。ちなみに、共用部の変更や管理組合法人の解散などを決める場合は「4分の3」の賛同が必要となります。
相続などを経て連絡がつかなくなった「所有者不明」の区分所有者は一定の条件下で意思決定から除外する案も議論されています。
分譲マンションは一般に区分所有する所有者らでつくる管理組合で建て替えなどの重要事項を決議しています。同じ土地で建て替える場合、区分所有法に基づき所有者の5分の4の賛同が必要となりますが、不明な所有者がいると意思決定に必要な条件を満たしにくくなり管理に支障が生じています。
建て替えのほかにマンションの敷地を一括して不動産会社などに売却して代金を分け合う「敷地売却」という選択肢もありますが、この場合は原則、所有者全員の同意が必要となります。1戸でも所有者が不明だとマンションの再開発が事実上不可能となり、前々から問題視されています。
■築40年を超えるマンションは103万戸あり、建て替えが進まないと・・・。
国土交通省の推計によると2020年末時点のマンション675万戸のうち築40年を超える物件は103万戸と発表されています。これが2040年に約4倍の405万戸まで膨らむ見通しとなっています。また、103万戸の4分の1ほどが都内に集中しており、その対応によっては災害時の被害想定が大きくなる事も懸念されます。
ちなみに、築年数が古いマンションが増加しても建て替えが進まない理由は主に以下の3つが挙げられます。
(1)建て替えが決定するまでの流れが複雑であること
(2)法律上建て替えられない分譲マンションが多い
(3)建て替え費用の住民負担が重いため
大人数で1つの建物を所有するマンションの建て替えは手間のかかる事業となります。これまでも敷地売却を含む建て替え条件の厳しさは問題視されており、管理組合で議題にしても合意を得られず、間に合わせの延命措置的な対応で様子を見る事が多いようです。
また、建て替えが進まない背景に管理組合の機能不全という問題もあります。大規模マンションの場合、管理組合の総会の出席率は1割程度となり、長年の所有者と投資目的の購入者の間で利害がかみ合わない例も多いようです。やはり居住者にとって建て替え中の住居費といった自己負担も重くのしかかる為、高齢者のように年金と貯蓄を切り崩しての生活者にとってはかなりのハードルとなります。
■マンションの建て替え合意を得られた場合はどれくらいの費用が掛かる?!
建て替えに賛成した場合、分譲マンションを解体し新築マンションの建設が完了するまでの期間は仮住まいを探し、建て替え完了後に再入居するということになります。
再入居に伴い、分譲マンションの建て替え費用のみならず、引っ越し代や仮住まいの家賃料の負担が発生します。
引っ越しは往復2回・工事期間中2年程度の仮住まいだと想定すると、建て替え費用の平均1800万円に加えて約200万円、総額約2000万円の出費が必要となります。
ただ、巨額な建て替えに伴う費用を用意できない場合は、国や自治体の支援助成制度を利用すると費用負担が軽減できるようです。しかし、あくまでも借りるだけでほとんどの費用は居住者の負担となる事を理解しておく必要がありそうです。
いずれにせよ、マンション購入を検討している方は、このような状況も把握をしておいて欲しいと思います。
今後の参考にお役立て下さい。
法人営業部 犬木 裕