不動産取引ガイド

良い家 悪い家

「良い家が買いたい」
誰もがそう思うはずです。
ですが、日常的に情報が溢れかえる状況で、消費者が自己責任で判断するのは難しいと思われます。
また、家を売りたい事業者は、あの手この手で「良い家」アピールを行います。
「良い家」の定義は人それぞれで、家族構成やライフスタイルによって変動します。
そこでこの記事では「悪い家」をご紹介することで、事業者による良い家アピールに惑わされて、うっかり選んでしまわないよう、情報提供したいと思います。

□自宅が家族を害する家は悪い家です

悪い家の定義は簡単です。例を挙げれば誰でも納得いただけると思います。
まずは家が家族を害する家です。
家族に被害が及ぶので明らかに悪い家です。

家族を害する家にも様々ありますので、具体例を挙げます。
まずは耐震性が確保されていない家です。
耐震性が確保されていない家に住むということは、大地震が発生した時に家族に被害が及ぶ可能性が高くなる選択をするということです。
天災だから致し方ないという表現が使われますが、日本は地震大国なので、住宅の耐震性についてもかなり研究が進んでいます。
現時点で「耐震性が確保されていない」と評価される家は、倒壊するかどうかわからないではなく、倒壊する可能性が高いと判断するべきです。

天災絡みだと、土砂災害や津波も危険度の高い災害です。
土砂災害や津波は家そのものの性能が問題なのではなく、災害発生が危惧されるエリアを選んではいけない、という判断になります。

ここまでを一旦まとめます。
耐震性が確保されていない家は悪い家です。
旧耐震の物件は既存不適格住宅と位置付けられているので、耐震補強が行われていない旧耐震物件を選択してはいけないという判断になります。
また、土砂災害や津波は危険度の高い災害です。
いろんな事情はあると思いますが、家族の命と天秤にかけて、それでも飲み込まなければならない理由は存在しません。
従ってこれらの災害が危惧されるエリアは選択してはいけません。

□割高な物件が悪い家とは一概に言えません

視点を変えます。これから住宅購入される方が気にされるポイントです。
それは「割高な物件を売りつけられる」ということです。
確かに同じ条件の物件で、比較対象よりも500万円も1000万円も高い物件を買ってしまったとしたら、それは「悪い家を掴まされた」「失敗した」と思うかもしれません。
住宅購入希望のお客様から価格の妥当性を問われないことの方が少ないくらいです。

しかし、この価格の妥当性というのが厄介で、事業者が利益を乗せるために割高に設定される物件は実際に存在するので、心配されるのはよく理解できます。
ただ、文頭に記載したように、同じ条件であればという前提がポイントで、家電などの工業製品などと違って、同じものがないのが不動産となりますので、割高なのかどうかを見極めるのは簡単ではありません。

また、意外に思われるかもしれませんが、価格の面で言うと、周辺相場よりも著しく安い物件も悪い物件の可能性があります。
一般に価格面でメリットを出すには同じ規格のものを数多く販売する必要があります。
新築分譲住宅は新築注文住宅に比べて販売価格が安いことが多いのは、ある程度規格が統一されているからで、同じ理由で、分譲マンションも特に設備面で言えばコストパフォーマンスが良い建物と言えます。
しかし、数によるメリットと言っても限界がありますし、新築ならともかく中古住宅の場合は、「同じ規格を大量に」が成立しませんので、周辺に比べて著しく安い物件というのは、企業努力によるコスト削減ではなく、安くしないと売れない「何か」の理由があると判断する方が妥当です。

「割高かもしれない」の不安を解消するには、表に出ている販売価格だけでなく、その価格になっている理由を探る必要がありますが、広告に出てくる情報ではないので、担当する不動産会社に頑張ってもらって、判断材料を集めてもらう必要があります。
「売りつけられるのでは」という心配もあると思いますが、不動産会社の担当者との信頼関係が構築できないと、そもそも納得のいく不動産購入は実現できないので、まずは担当者とよくコミュニケーションを取って、信頼できるかどうかの判断を行った方が良いと思います。

価格でもう一点。
不動産価格はその時々の経済状況などの影響を受けて価格が変動します。
株などの金融商品ほど急激ではないのですが、買いたい人が多くいれば価格は上昇しますし、買いたい人がそれほどいない状況で売りたい人が増えれば価格が下落します。
不動産価格の計算方法の中に、周辺の取引事例を参考にする方法があり、割と一般的に採用されている方法のため、その物件がどうこうだけでなく、周辺の状況やもう少し広いエリアの傾向で、不動産価格は上がったり下がったりします。
安い時に買って高い時に売るというのは投資の基本ですが、こういった判断が簡単でないことはご理解いただけると思います。

価格の変動に関する懸念については、「今は家の買い時なのか?」という疑問に表れます。
しかし、購入するのがお得だったというのは結果論であることが多く、事前にその時期を見極めるのは極めて困難で、更に不動産事業者は将来に対する不確定要素をPRして販売することは法律で禁じられています。
また、一番お得な時期を狙うことと、ライフスタイルで必要だから家を買うということを共立することが困難なので、時期を狙うがあまり、いつまでたっても家を買うという決断ができないという結果になりがちです。

□子育てのための家は終の棲家としては不適切

更に別の視点でご説明します。
特に戸建て住宅を検討されている方にはご理解いただきたい内容となります。

今は家を買ったら一生住み続けるという考え方が薄まってきているのですが、かつて住宅購入と言えば新築だった時代には、「終の棲家」というような表現がよく使われていました。
中古住宅流通が活発でなかった時代に、中古住宅の選択肢が乏しかったことと、新築住宅の資産価値の目減りスピードと住宅ローンの返済スピードが合わず、売却すると多額の残債が残ってしまうため、劇的な収入増がなければ住み替えができなかったといった事情があります。

冒頭に家族に害を及ぼす家は悪い家だと説明しました。
子育てが終わって子供が独立した2階~3階建ての一戸建て住宅は、高齢者にとっては最適な住環境とは言えません。
公になっている家庭内事故のデータを見ると明らかです。
体が弱くなると、階段を踏み外して怪我をしたり、場合によっては死亡してしまう事故も発生しています。
つまり階段のある家は、高齢の家族に害を及ぼす可能性のある悪い家と言えます。

家庭内事故の問題は極端かもしれませんので、別の例を挙げます。
それは最適なスペースという視点です。
子育てための家は子供に個室を与えるために、区分けされた間取りになります。
3LDK~4LDKの間取りの家がファミリータイプと呼ばれる所以です。
このファミリータイプの間取りは、子供が独立すると、使いどころが難しい、持て余すスペースになってしまいます。
子供が家にいるから3LDK~4LDKが必要だったからで、子供が独立すれば1LDK~2LDKで十分なのです。

先に上げた家庭内事故とスペースの問題から、子育てのために購入した家は、子育てが終わったら売却して、高齢期に最適な住環境へ住み替えるのが最適解と言えます。

しかし多くの方がその選択を行っていません。
「実家」という経済合理性に乏しい概念が一般化しているからです。
ただ、この実家という呪縛も、これから社会問題化する高齢期の介護と資金問題によって、変化していくと思われます。
現在の経済状況では、実家としてスペースを遊ばせておく余力がなく、資産として老後資金に充てる必要があるからです。

購入した時は家族にとって「良い家」も、ライフスタイルの変化により「悪い家」になり得ることをご理解ください。

□一番悪いのは売れない家

災害で被害が危惧される家も相当ですが、最も悪いと思われるのは将来売れない家です。
何らかの事情で収入が減り住宅ローンの返済が苦しくなった場合、売却しても多額の債務が残るとすれば売るに売れません。
多額の債務が残る家は、劣悪な就業環境だとしても、売るに売れないので、住宅ローン返済のために現在の環境にしがみつくしかなく、体を壊してしまう原因となります。
歳を取って介護が必要になった場合、家を売って資金化できれば選択肢が広がりますが、売れない家だと、子供世代に迷惑をかけてしまいます。
このように売りたい時に売れない家は、家族に害を及ぼす可能性が高いので、悪い家と言わざるを得ません。

売れない家にも段階があり、最も悪い状況なのは、買い手が付かないから売れない家です。
どれだけ素晴らしい仕様の家だったとしても、そもそもその地域で家を買いたい人がいなければ売ることはできません。
売りたい時に買い手がいない状況を回避するためには、将来に渡って人が集まるエリアを選択する必要があり、人口減少社会においては、最もシビアに見極めなければならないポイントです。

続いて悪い状況は売却しても多額の債務が残る状況です。
仮にローンの残債と同じ金額で売ることができれば、家を買った状況からやり直すことができます。
このふりだしに戻る選択肢が持てるかどうかで、人生は大きく変わります。
多額の債務が残る状況を回避するためには、建物に大きなお金を使わないことが重要です。
不動産価値は建物の価格と土地の価格で構成されますが、土地の価格は急激に変動するものではありません。
買ってから価値が下がり続けてローンが終わる頃には二束三文と言われるのは建物の方で、建物の価値は経年で下がり続けるので、建物にお金をかけることは贅沢な選択と言えます。
だからと言って古いまま我慢して住むというのも正しくはないので、収入や財産の状況からどれくらいなら贅沢しても良いかを判断することになります。
この考え方だと、最も贅沢な、資産的にはリスクのある買い方は新築です。
大規模なリノベーションも贅沢な選択です。
大切なことなのでもう一度繰り返しますが、現在の不動産市場では、どれだけ豪華な仕様にしても、過剰に価値を判断されることはあまりありません。全面的にリフォームを行ったとしても、実施したリフォーム金額を売却によって回収できることは期待できません。

今回は悪い家をテーマにしましたが、災害を甘く見ない、売りたい時に売れない家を買わないというのが重要なポイントで、後の要素は家族構成やライフスタイルで変わります。
ポータルサイトを見るとたくさんの物件情報が掲載されており、不動産会社も様々な物件を提案してきます。
今回ご紹介したこの災害を甘く見ない、売りたい時に売れない家を買わないが外してはいけないポイントになりますので、この家は良い家ですよアピールに惑わされることなく、この2点だけはしっかり検討して判断したいところです。

とは言え自己責任で判断するのは難しいと思いますので、信頼できる、気軽に相談できるパートナーを見つけることが、納得のいく不動産購入を実現するために必要な要素となりますので、物件情報に飛びつくのではなく、まずは事業者を見極めることをお勧めいたします。
最後に当社のPRを少しだけ。
当社は単なる不動産仲介ではなく、買主様の利益を最大限に追及するバイヤーズエージェントを謳っており、マイナス情報も含めた徹底した情報提供を売りとしています。
ご納得いくまでとことんお付き合いさせていただきますし、今回ご紹介したような悪い家のポイントは余すことなくお伝えいたします。
当社の姿勢や他社との違いを実感いただくためにも、まずはzoomでお打ち合わせさせていただくことをご提案いたします。(もちろんご来社いただいても大丈夫です)
ぜひお気軽にお声がけください。

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