不動産取引ガイド

マンション購入をご検討の方へ 共用部の地震保険の加入状況も把握しましょう!

地震被害に対する金銭的な備えが不十分な分譲マンションがあります。そのようなマンションを購入してしまうと、地震で建物に損害を受けたとき、まとまった資金確保が困難となります。そのような事態を回避するため、地震保険の加入の有無を把握する事が重要です。個人の居住スペースの専有部に比べ、マンションの共用部に対して地震保険を付ける割合は約50%といった状況です。共用部が破損した際に補修費用が足りないと、再建が困難となるケースも想定されるため、マンション購入の際にはこのような地震保険の加入の有無のチェックも重要です。

■地震大国日本でマンション購入をされる方へ、お忘れないように・・・。

地震調査研究推進本部地震調査委員会の報告に基づいて、首都直下地震の発生確率は、今後30年以内に約70%と予測されています。首都直下地震とは、東京都、茨城県、千葉県、埼玉県、神奈川県、山梨県を含む南関東地域を震源として発生するマグニチュード7クラスの大規模な地震です。また、南海トラフ沿いで巨大地震が起きる確率は今後30年以内に70~80%。被災リスクは常にあります。残念ながら、建物は耐震構造なので地震保険は必要ないと判断されるケースもあるようなので、地震大国日本という事をお忘れないようにしていただきたいと思います。

■地震保険は火災保険と一緒に入るのが基本である!

地震保険は単体で入れず、火災保険とセットで入る事が基本となります。分譲マンションでは専有部は居住する個人が、共用部は管理組合が契約するのが一般的となり、日本損害保険協会が損害保険会社4社の実績を集計したところ、火災保険加入者が地震保険を付ける割合(付帯率)は、少し前のデータですが、2022年度は専有部が75%前後の一方、共用部は50%前後との結果となっています。

■地震保険の加入により、どれくらいの保険金が支払われるのか?!

地震保険の保険金は、損害の程度に応じて支払われ、マンションでは、建物を支える柱や梁といった主要構造部が折れるなどで「全損」と認定された場合、保険金額の全額が得られるといったものです。「大半損」は60%程度、「小半損」は30%程度、「一部損」だと保険金額の5%程度となります。エレベーターのみが故障したなどは、主要構造部の損害ではないため保険金は払われません。

設定できる保険金額は、火災保険の保険金額の30~50%の範囲内となります。建物が倒壊するなどで全損となっても、地震保険の保険金だけで建て替えるのは困難となる為、そのような場合は住人の方のプラスαの支払いが求められます。しかし、保険金があれば、建て替えや修繕費用の一部に充てられ、東日本大震災では、地震保険の保険金により費用を確保し、再建したマンションは多かったようです。地震による損害を修繕する場合、管理組合が再建策を練り、住民が合意する流れとなります。復旧工事の資金は大規模修繕工事に向けて積み立てた修繕積立金のほか、地震保険の保険金や国・自治体の支援金を中心に捻出するのが一般的となります。足りなければ、住宅金融支援機構から資金を借りる場合が多く、住民がそれぞれ数百万円など資金を出し合うケースもあるが、世帯ごとに収入状況など事情が異なるため、合意を取るのは難航するようです。免震や耐震構造でも、大規模地震では建物に何らかの損害が生じて修復工事が必要になるマンションは多くなります。2016年の熊本地震で被災したマンションは地震保険加入の有無で再建に差が出ていたようです。

地震による被害の修理は通常の大規模修繕工事と施工方法が異なり、対応できる業者は少ないのが現状です。また、被災時は依頼が集中するため、発注が遅れると工事開始まで3年以上待つケースも出てきます。その為、マンションの共用部に地震保険が掛けられており、損害認定が受けられれば約1週間程度で保険の支給が受けられます。そのような手続きを踏まえ、資金の有無により再建スピードが変わってきます。地震保険を専有部に付ける住民にもメリットがあり、共用部に地震保険を付けると共用部の損害認定が専有部にも適用されるようです。専有部の被害が共用部より大きければ個別の損害認定が優先されるが、専有部の被害が軽微でも、共用部の認定に応じ保険金が払われます。
耐震性能が高い建物は保険料が下がることとなり、免震構造の建物は50%、耐震等級1の建物は10%引きといった割引の適用が受けられます。

ぜひ、マンション購入をされる方は、このような保険制度のチェックもしていただければ幸いです。
今後の参考にお役立てください。

法人営業部 犬木 裕

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