不動産取引ガイド

3Dプリンター住宅

3Dプリンターの家とは、巨大な3Dプリンターによって造られる住宅のことです。
デジタル設計図のデータをもとに、機械が自動で素材を積み重ね、壁や土台などを形成していきます。

外観に見られる滑らかな曲線(R形状)や、造形表面に残る「積層痕」は、素材を層状に重ねて成形する3Dプリンター住宅ならではの特徴といえるでしょう。

1. 従来の建築との違い

3Dプリンター住宅と従来の建築は、施工方法が大きく異なります。

従来の建築では、設計図をもとに職人が現場で材料を加工し、組み立てて住宅を完成させます。
木造住宅では継手加工、鉄骨造では溶接、RC(鉄筋コンクリート)造では型枠を組んでコンクリートを打設するなど、高度な専門技術が必要になります。

一方、3Dプリンター住宅では、BIMやCADで作成されたデジタル設計データをそのまま機械に入力し、ノズルから素材を吐出して層状に積み重ねることで構造体を造形します。

そのため、従来の建築で必要だった溶接や型枠、継手加工などの工程が不要となり、工期の短縮や施工の効率化が期待されています。また、建設現場の技術継承や人手不足といった課題の解決にもつながる可能性があります。

2. 3Dプリンター住宅の造形方法

3Dプリンター住宅の造形方法は、大きく次の2種類に分けられます。

■ 現場造形

建設現場に3Dプリンターを設置し、その場で住宅を造形する方法です。

主に以下の方式があります。

・カーテシアン式(門型)プリンター
・ロボットアーム式プリンター

カーテシアン式は構造が大きく剛性が高いため、建物全体を一度に造形できる特徴があります。

現場造形の基本的な流れ

①従来工法で基礎工事を行う
②デジタル設計図をもとにロボットが壁を造形
③壁完成後に屋根などを従来工法で施工

■ 工場造形

工場で部材を3Dプリンターにより造形し、建設現場で組み立てる方法です。

この技術はすでに実用化が進んでおり、
JR初島駅の駅舎は、3Dプリンターで造形した部材を用いて約2時間で組み立てられた事例として注目されました。

工場造形の流れ

①工場でコンクリート部材を造形
②部材を現場へ搬送
③クレーンなどで吊り上げて接合

3. 3Dプリンター住宅の素材

現在、日本を含む多くの国で、3Dプリンター住宅には**コンクリート系材料(モルタル)**が主に使用されています。

ただし、日本ではモルタルを構造材として使用する場合、国土交通大臣の認定が必要になります。

主な素材

コンクリート系
セメント・砂・水を特殊配合したモルタル
メリット:強度・耐久性が高く速乾性がある

樹脂系
紫外線照射で瞬時に硬化する素材
メリット:軽量で衝撃に強い

天然素材系
土や天然繊維を利用した素材
メリット:地域資源を活用でき、CO₂排出を抑えられる

4. 3Dプリンター住宅の耐久性

3Dプリンター住宅は、耐久性の高さにも注目が集まっています。

例えば、石川県珠洲市に建設された住宅は、約48時間で完成し、耐用年数は約70年とされています。

これは、厚さ30cm以上の壁と高耐震コンクリートによる二重構造の壁によって、高い耐久性と耐震性を実現しているためです。

モルタル材の課題

一方で、モルタルには次のような課題もあります。

・ひび割れ
・塗装剥離
・水分侵入による凍害

特に寒冷地では、凍結と融解を繰り返すことで劣化が進行しやすくなります。

その対策として、合成繊維を混ぜた**繊維補強セメント複合材料(ラクツム)**などの新素材も開発されています。

5. 日本での普及に向けた課題

3Dプリンター住宅は大きな可能性を持つ一方、日本ではいくつかの課題もあります。

特に大きいのが建築基準法への適合です。

建設用3Dプリンターで使用されるモルタルは、建築基準法第37条の「指定建築材料」に含まれていません。
そのため、構造部分に使用する場合は建築基準法第20条に基づく国土交通大臣の認定が必要となります。

3Dプリンター住宅のメリット

■ 建設コストの削減

自動施工により人件費を大幅に削減できるため、低価格住宅の実現が期待されています。
実際に日本では500万円台の住宅も販売されています。

■ 工期の短縮

型枠などの工程が不要で、機械は24時間稼働できるため施工スピードが非常に速く、最短24時間で完成する事例もあります。

■ 人手不足の解消

建設業界の深刻な人手不足を補う技術として期待されています。

■ 環境負荷の低減

必要な材料だけを使用するため廃材が少なく、資材運搬も減るためCO₂排出削減にもつながります。

デメリット

■ 建築基準法への適合が難しい

耐震基準が厳しい日本では、法規制が普及の大きな壁となっています。

■ 素材の選択肢が少ない

現在主流のモルタルは、日本の高湿度・多雨の気候では劣化の懸念があります。

■ 施工できる企業が少ない

現時点では供給体制が整っておらず、購入できる住宅は
Serendix
など一部の企業に限られています。

体験できる施設

日本ではまだ体験できる場所は多くありませんが、北海道の
太陽の森ディマシオ美術館
では、3Dプリンター住宅型のグランピング施設が整備されているといわれています。

まとめ

3Dプリンター住宅は、

・低価格住宅の実現
・建設業の人手不足解消
・CO₂削減

といった社会課題の解決につながる可能性を持つ新しい建築技術です。

一方で、日本では建築基準法や素材の問題、施工体制の未整備などの課題も多く、普及にはまだ時間がかかると考えられます。

しかし、工期の短さやコストの安さ、自由なデザインなど魅力も多いため、今後の技術の進展と実用化に期待が高まっています。

リニュアル仲介
渡辺でした。

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