不動産取引ガイド

売買契約をめぐる相続トラブル(不動産の売却で売主が決済前に亡くなってしまったら?)

契約締結後に売主が亡くなられた売の不動産売買契約の取り扱いについて
不動産の売却を行うと、不動産の所有権は売主から買主に移ることになります。しかし、もし所有権を移転する前に売主がなくなってしまった場合、そのまま買主へ所有権を移転することが出来るのでしょうか。 事例をもとに解説します。

Aさんは、高齢で持病の経過も芳しくなかったため子供たちに田舎の土地を残しても処分に困ると考え生前に処分したいという意向があり、Cさんに売却する旨の売買契約を締結。

売買契約では、一か月後の決済を予定していましたが、決済予定日の5日前にAさんの容体が急変し、死亡したケース。

父親(A)が売買契約していたが、決済直前に父が死亡してしまった場合、相続人である息子(B)はどうすればよいのでしょうか?

1.そもそも売主がなくなってしまった場合、売買契約は、そのまま有効か?

→結論 売買契約を締結している場合、仮に売主の方が亡くなってしまったとしても、その契約は有効です。売買契約が締結したことにより、売主と買主の双方に履行義務が生じます。売買契約締結後の双方の履行義務は、売主は不動産の引き渡し、買主は代金の支払いとなります。もし、売主が亡くなってしまった場合には、売主の相続人の方がこの履行義務を果たす必要があります。

つまり、上記事例による相続人Bは、相続により父親Aの売主としての地位を承継する形となります。だから、決済日の直前の死亡となれば、相続登記をする必要があります。
相続登記を行う時間的余裕が限られるため、実務上では決済日の延期申し出をすることが考えられます。

相続人Bは、父親が亡くなってから、初めて父が売買契約締結の事を知った。
決済直前に父親Aが死亡した場合、相続登記を行う時間的余裕が限られるため、相続人Bは、決済日の延期合意が考えられます。

 

一方、買主のCさんが延期の合意に応じず、決済しないのなら違約金を支払えと言われたら、支払わないといけないのでしょうか。

 

売主から決済日の延期合意が申し入れられても、買主は返済日を延期する義務はありません。売主が決済日に履行できない場合、違約金が発生する可能性があります。

ですが、父親から売買契約締結を聞いていない相続人Bは、急いで相続登記の準備をしたが、間に合わない場合でも違約金を支払わなければいけないのでしょうか?支払わなければいけないとなると、売主には随分酷なよう気がします。

そこで、民法では下記のような定めがあります。

≪新民法415条1項但し書き≫
債務の不履行が契約や取引上の社会通念に照らして相手方の責めに帰することが出来ない事由によるものである時は違約金の請求はできない。
と定められています。

・被相続人が締結した契約の有無
・有効性の調査 未履行であるか否かの状況把握などに要する時間
・必要書類をそろえるための時間

等が必要な為、被相続人の債務を履行できなかった場合、取引上の社会通念に照らし違約金の請求が認められない場合があります。(ただし、責任が無いということは、債務を履行できなかった人が主張立証しなければなりませんので注意が必要)

ですので、買主(C)には決済期限の延期に応じる義務がないとはいえ、杓子定規に違約だと限らないので柔軟な対応が求められることになるでしょう。

まとめ

不動産売却で売主が亡くなってしまった場合、売買契約が締結している状態であれば、、売主と買主の双方に契約を履行する義務が生じます。そのため、売主の死亡によって売買契約が無効になるこということはありません。なくなってしまった売主の方に変わって相続人の方が手続き等を進めていく必要があります。
特に相続登記が必要となるケースでは、売買代金の決済日までに様々な手続きを済ませなければならない可能性があります。

以上、エージェント中田でした。

コロナ禍で住宅ローン減税の延長はいつもと違う?!前のページ

出来れば避けたい、ご近所トラブル!!次のページ

ピックアップ記事

  1. 立地適正化計画をご存知ですか?
  2. 住宅購入は不安でいっぱい
  3. 土地価格の相場を知る方法
  4. 建物インスペクションを実施する最適なタイミングとは?
  5. 買ってはいけない物件を自分でチェック

関連記事

  1. 不動産取引ガイド

    快適なインテリア空間を演出する照明計画

    照明は明るさだけではなく、その光による美しい陰影がもたらす落ち着きと安…

  2. 不動産取引ガイド

    FPシリーズ1シングル女性のマンション購入

    雑誌の記事で役に立ちそうな情報がありましたのでご紹介したいと思います。…

  3. 不動産取引ガイド

    初心者必見!不動産購入を成功させるための5つのポイント

    不動産購入は人生の中でも大きな買い物です。初心者の方でも失敗しないため…

  4. 不動産取引ガイド

    大雪による住宅被害

    大雪による被害は、除雪中の人的被害がある一方で、建物への被害も多く発生…

  5. 不動産取引ガイド

    団地再生プロジェクト始動?!団地の未来はどうなるのか!

    国土交通省は複数の棟で構成された団地型の分譲マンションの老朽化に対応す…

  6. 不動産取引ガイド

    遺言書を書くメリット!

    先日、不動産の共有を避ける方法として遺言書を作成する方法があるというこ…

  1. 不動産取引ガイド

    火災保険の審査厳格化 築50年超の戸建ては注意が必要?!
  2. 不動産取引ガイド

    将来売ることが難しくなりそうなエリアを選ばない
  3. 不動産取引ガイド

    これは何と読む?「畦畔」
  4. 不動産取引ガイド

    フェンスが倒れたら!?
  5. お金・ローン・税金

    住宅ローン金利が下がってます!
PAGE TOP