■住宅ローンの「退職金で一括返済」は返済計画が上手くいかない?!
50代、60代で住宅ローン返済に悩む人が増えているそうです。また、コロナ禍で住宅ローン困窮者も増えております。その為、不動産購入時には計画的な住宅ローンの返済計画は必須となります。また、終身雇用時代が終焉を迎えつつある現在、住宅ローンを組み際には「退職金で一括返済」の計画を入れる事は辞めましょう。
残念な事に住宅ローンを組んだ30~40代のころは収入がほぼ順調に伸びたが、55歳前後の役職定年や60歳以降の定年後の継続雇用などで減収になり、返済負担が重くなる例が多いといいます。また、現在、住宅ローンで50代、60代の負担は増しているそうです。
総務省の家計調査で住宅・土地関連の負債額(負債のある2人以上世帯の平均)をみると、50代は2019年で1045万円と3年連続で1000万円台になり、60代は706万円と10年前に比べ約12%増えています。従来から借りている人に加え、超低金利政策で住宅ローン金利が大幅に低下し、比較的高齢でもローンを借りやすいと考えた人がいることから負債額が増えています。しかし、この超低金利政策で借りられる金額がシミュレーション上では増えていますが、現実は収入を増やせるような人以外は計画倒れになってしまう事も懸念されます。
また、最近は晩婚化などの影響により、住宅購入する年齢が遅くなり、40代でローンを組む人が多くなっています。そのような方は40代で収入は増えているタイミングかもしれませんが、50代、60代を見据えた際には上記の終身雇用制度で収入が増え続けるような計画で住宅ローンを組んでしまうと、住宅ローン返済の落とし穴におちいってしまう事も考えられます。
■不動産購入を検討される方が晩婚化で購入年齢が上がっている!
国土交通省の住宅市場動向調査によれば、注文住宅や分譲マンションを初めて購入した世帯主の平均年齢はここ数年、40歳前後で推移しています。2012年度は37~38歳だったのに比べ2~3歳ほど上昇しました。初購入時の住宅ローンの平均額は3000万円前後。40歳で期間35年、金利1.3%で借りる場合を試算すると、65歳時点のローン残高は1000万円程度になります。そのような多くの人がまず考えやすいのが、退職金などで残債をまとめて返済する一括繰り上げ返済です。
厚生労働省の調査によると、大卒45歳以上の退職給付額(勤続20年以上、時系列で比較可能ベース)は2018年で1788万円。仮に残債が1000万円なら一括返済は可能ですが老後の資金準備が出来ている人以外は厳しい現実が待っているようです。
■不動産購入を検討される際の資金計画に「退職金で一括返済」の計画をしてしまうと…
大きな理由は長寿化です。男性の4人に1人、女性の2人に1人が90歳まで生きる半面、公的年金だけでは家計が赤字になります。多くの高齢世帯は貯蓄を取り崩すなどしているとみられるが、退職金の大半でローンを返せば医療・介護などの急な出費に備える貯蓄が手薄になりかねません。退職金も10年前と比較した際には約500万円減っている為、将来の生活資金のため温存する方が無難との見方は多いです。
そもそもこのようなお話のポイントは、不動産購入時に遡ります。つまりは不動産購入を検討される際の資金計画に「退職金で一括返済」の計画をしてしまった事が想定されます。
つまりは不動産購入時に「退職金で一括返済」という計画は避けていただければと思います。
しかし、自宅の資産価値が高いなら選択肢は広がります。例えば住み替えは現在の住宅を売ってローンを完済し、子どもの独立などで部屋が余るようなら夫婦二人に十分な広さの住まいに移るのも一案になります。
不動産売買には仲介手数料や登記費用などもかかりますが、ローン完済を早期に出来、その後の生活に余裕が出るケースも考えられます。いずれにせよ、不動産購入時に「退職金で一括返済」という考えよりは不動産と上手く付き合う事を前提にご検討いただきたいと思います。
今後の参考にお役立て下さい。
法人営業部 犬木 裕