不動産取引ガイド

住宅ローンを変動金利で組まれる方の落とし穴?!<『5年ルール』編>

不動産購入時に「住宅ローンは固定金利と変動金利、どちらを選ぶべきか? 」という質問を良く受けます。不動産購入をする際に、必ずと言って多くの人が直面するテーマです。また、米国の金利上昇やコロナ、戦争や世界経済の不安定要因が高まっている局面においては、住宅ローンの選択を迷われるという人も増えているのではないでしょうか?

■住宅ローンの選択は圧倒的に「変動金利」を選択している方が多いのですが・・・。

住宅金融支援機構が行っている「民間住宅ローン利用者の実態調査(2021年4月調査)」によると、変動金利を選んだ人は全体の68.1%。対して、全期間固定型は11.2%。残りの20.7%が固定期間選択型(固定2年、3年、5年など)となっています。

同調査によると、2009年以降(年1~3回実施)はいずれも変動金利がトップでしたが、2017年頃からさらにその数値を伸ばし、先の調査では70%に迫るほどです。一方、全期間固定型は 6〜7年前の3分の1程度にまで下がっています。

変動金利が人気となる理由は、やはりその金利の低さとなり、結果、総支払額も低く抑えられると感じられてしまう要素が大きいと思います。0.5%を下回る数値も多くあり、かつては借入額の倍と言われた総返済額は影を潜めています。しかし、一方で心配となるのが金利上昇リスクとなります。最近ではロシアがウクライナへの侵攻を進め、世界経済が不安定な状況となると誰もが予想がつけられない状況となります。変動金利は市場金利の動きに関係なく、借入開始から5年間は返済額が固定されるという「5年ルール」があります。しかし、その間金利が上昇すれば、毎月の返済額に占める元本の割合で調整されるだけであり、金利上昇分の総支払額は上昇します。この「5年ルール」があるから、その時に住宅ローンの借り換えを検討するという判断をされる方もいるようです。

■将来の金利動向を予測出来れば、間違った選択を回避できる?!

勿論、将来の金利の動向を正しく読むことができれば、どちらが有利かを判断できることになります。しかし、それはほぼ不可能です。また、備える事ができるものとして、住宅ローンの利用者が変動リスクにどれだけ対処できるかという事です。変動リスクが嫌であれば、金利は高いかもしれませんが、固定金利を選択するという事です。そのことをローン選択の判断材料にしていただきたいと思います。変動金利を選択するとメリットの方が大きいケースは、家計に比較的余裕があり、自己資金が多く、貯蓄などで金利上昇に対応できる家庭と言えます。借入額が少ない、借入期間が短いといった人も該当します。金利が低い分、元本がより早く減っていくため、返済効率も高くなります。対して、変動金利を選ぶとデメリットの方が大きいのは、住宅ローンの支払いにより家計に余裕がないといったケースです。30年、35年といった長期で借りている場合も、金利上昇リスクは高まります。そういった場合、確実に返済できる全期間固定を選択すべきでしょう。個人的にはこれから住宅ローンを組まれる方は、「金利ミックス型」or「固定型」を選択される事を強くお勧めします。

最近は、変動金利と全期間固定を組み合わせた「金利ミックス型」の利用者も増えているようです。すべて全期間固定型で借りるよりも毎月の返済額が低く、同時に金利上昇のリスクも変動金利のみで借りるよりも低く抑えられます。借入額に対してそれぞれの割合をどう選択するかが重要なポイントとなります。

■併せて住宅ローンの金利上昇時の「125%ルール」も把握しておきましょう!

不動産購入時に住宅ローンを組まれる際には、金利上昇時の「125%ルール」という制度の話を聞く事が多いと思います。この話を聞くと、毎月の支払いは1~2万円上昇するだけと判断してしまう方が多いように感じます。しかし、それ以上に怖いのは、この「125%ルール」は返済額を抑えているだけで、総支払額は上昇している事を見逃してしまうケースが多いようです。

例えば、5000万円の不動産を期間35年、年0.5%の変動型(元利均等返済)で借り、金利が上昇する場合の試算をみてみます。金利が毎年0.1%上昇すると、毎月の返済額は当初の約13万円から6年目以降に約14.1万円、11年目以降に約15.1万円となります。一般的な変動型(元利均等返済)は金利が上昇しても毎月の返済額を5年間据え置く「5年ルール」、5年後に上げる際は25%増までとする「125%ルール」があり、このため毎月返済額が急増する懸念はあまりありません。

※今はあいつぐ値上げラッシュで生活費はかなりひっ迫しております。

要注意が必要なのは完済までの総返済額です。当初は約5500万円だが、5年目で5783万円、10年目で6109万円と増える。元利均等返済の毎月返済額は一定で、元金返済額と利払い額の合計となります。金利が上昇すると毎月返済額に占める利息の支払い割合が増え、元金の割合が減る計算となります。つまり元金は返済されず、利息のみを払い続けるような計算となるという事です。元金の返済ペースが遅れるぶん総返済額が膨らみ、25年経過時点では6552万円となります。怖いのが、年0.2%ずつの上昇ではさらに増えるという事です。

今後は住宅ローンの金利上昇が行われる事となりますので、ぜひ、変動金利よりもリスクの低い固定金利での選択も重要だと思います。勿論、充分な資金的な余裕を持たれている方は、どのような選択でも良いのかもしれません。

ぜひ、今後の参考にお役立て下さい。

法人営業部 犬木 裕

太陽光パネルが義務化!?前のページ

不動産エージェントを味方につけよう!次のページ

ピックアップ記事

  1. 住宅購入は不安でいっぱい
  2. 立地適正化計画をご存知ですか?
  3. 土地価格の相場を知る方法
  4. 買ってはいけない物件を自分でチェック
  5. 住宅購入と 生涯の資金計画

関連記事

  1. 不動産取引ガイド

    まず初めにリノベーション物件を内見しましょう

    中古物件の売却の際にリフォームを行っている物件を一般にリノベーション物…

  2. 不動産取引ガイド

    不動産購入の大まかな流れを知ろう!

    住まいを買おうと決心したら、入居するまでどういう流れになるのかを知って…

  3. 不動産取引ガイド

    建物の「新築」はいつなのか

    物件の新築時期については、単純に築浅か築古かの判断基準になるだけでなく…

  4. お金・ローン・税金

    タワーマンションの高層階は増税?!対象となるマンションとスタートの時期は?!

    少し前に政府・与党は20階建て以上の高層マンションについて、高層階の固…

  5. 不動産取引ガイド

    戸建てを購入する際などに気になるのが地盤。

    軟弱地盤が判明した場合、どういう工事をすれば良いのか??地盤調…

  6. 不動産取引ガイド

    国民年金の「納付期間45年へ延長」住宅購入を消費ではなく未来への貯金に代える方法

    政府が国民年金の保険料の納付期間を20歳から65歳までの45年間に延長…

  1. お金・ローン・税金

    2023年10月 フラット35金利のご案内
  2. かし保険

    設備の不具合の責任≪中古住宅の保証 その②≫
  3. リノベーション

    長期優良住宅化リフォーム推進事業など住宅取得支援制度をフル活用子供も楽しめる住空…
  4. 不動産取引ガイド

    土地価格の決定要素とは?
  5. 不動産取引ガイド

    平成12年5月以前の木造住宅 90%超の住宅が耐震性不足!?
PAGE TOP