不動産取引ガイド

持ち家vs賃貸は圧倒的に『持ち家』が得?!

『持ち家vs賃貸ではどちらが得?』という記事を良く目にします。住まいをめぐる永遠の課題と記載がある事も多く、消費者を迷わせる記事が多いような気がします。それも多くの記事で「支払総額があまり変わらない」といったものが多いからです。『支出』だけを比較した場合はローン返済額と家賃以外の費用も加えて精密に試算すると、実は支出総額はほぼ同じという記事は納得が出来ますが、持ち家の場合は『売却』を行う事により、立地等にもよりますが、〇千万円という現金に変える事ができるケースもあるからです。

■持ち家と賃貸、50年間にかかる総費用(『支出』)を比較してみると!

2021年度時点の首都圏を想定し、三井住友トラスト・資産のミライ研究所が非常に興味深い試算結果を発表されています。その試算結果とは住宅のフロー(流動性)支出に注目し、持ち家は固定資産税や修繕費、賃貸は2年ごとの更新料なども加えてシミュレーションされた結果だという事です。その結果を見てみると、結果は持ち家が総額8310万円、賃貸が同8235万円とシミュレーションされたようです。その差はわずか75万円という金額です。

※賃貸と持ち家の費用総額の比較の内訳:賃貸住宅(家賃7800万円、更新料300万円、入居費75万円、引っ越し費用60万年)、持ち家(ローン返済額5670万円、頭金・購入時諸費用1275万円、固定資産税765万円、修繕費600万円)

試算は制度変更が多い『住宅ローン減税』を勘案していないようなので、持ち家を購入し、住宅ローンを組まれる一般家庭の場合は減税分を考慮すると得する事が考えられます。この結果は逆転し、持ち家の方が得するケースも多いでしょう。しかし、600万円と見込む修繕費は持ち家の状態などによってはさらに上積みされ、現在は資材の高騰等で金額が高くなる事が懸念されます。損得は少しの変化で逆転する事を把握しておいて欲しいです。

50年という長期間でみると、それぞれの費用は多様な社会環境の変化によって影響を受け、支払い総額も大きく変わります。例えば住宅ローンの金利は試算では年2%とされていたようですが、バブル期の住宅ローン金利は7%もありました。現在は日本銀行の「実質的な利上げ」状態となり、2023年初めから一部で金利が上昇しています。これから金利上昇圧力が高まる事が懸念されるため、なるべく早い時期に低い住宅ローン金利で住宅購入をしておく事をおススメします。結果、総支払額にも違いが生じてきます。

■持ち家の支払いはメンテナンス費用にまとまったお金が掛かる。しかし、自分の資産保全には必要なお金!

マンションは通常、毎月一定額の修繕積立金を払っていくので一般に支出は緩やかです。しかし、それでも修繕積立金不足により、修繕費を臨時で集める例もあり、突発的な支出と無縁とは言い切れません。戸建て住宅は自分で築年数ごとに掛かる費用を予測し、なるべく早めのメンテナンスが必要となります。これらの支出が必要になりそうなタイミングを知り、備えることが欠かせません。しかし、この費用は自分達の快適な生活を行う上での必要な費用である事とその不動産を売却する際に、定期的なメンテナンスをきちんと行う事で、その分費用に置き換える事が出来るケースもあります。ご自身の資産保全には必要な支払いという認識も必要だと思います。

■賃貸の最大のリスクは「資産保全」が出来ないこと!

賃貸には最大のリスクがあります。それは若いうちは収入も安定し、毎月の賃料支払いは問題がありませんが、定年退職を機に、毎月の支払いが続く事で、その費用が生活を圧迫するケースもあります。持ち家は住宅ローンが完済すれば、大きな修繕がない年は賃貸より総じて支出が低くなる事も多く、生活に余裕が出来る事もあります。その為、年金生活に入って収入水準が下がった場合のまとまった賃料支払いは生活を圧迫する事もありますので、ご注意下さい。

高齢になったとき、住みたい家の賃貸契約を続けられるかも不安材料となります。国土交通省の2021年度調査によれば、賃貸住宅オーナーの約7割が高齢者の入居に拒否感を抱いているというデータもあるようです。その理由としては高齢者が入居中に死亡した場合に次の入居者探しが難しくなることを懸念されているという事です。

■持ち家が全て「資産」になる訳ではない!

一方、住宅は「資産」でもありますので、最終的な収支は賃貸とは異なります。持ち家であれば老後は売却し、その代金を介護施設の入居費などに充てられます。賃貸ではこうした不動産としての資産形成は出来ないといっても過言ではありません。しかし、持ち家の全てが「資産」となるかは別です。「資産」となる不動産は立地が良い場所になければ、現金化は難しく、辺鄙な場所の不動産では誰も買ってくれません。希望通りに売れるのは交通の便が良かったり、適切な修繕が施されたりした市場性がある物件だけです。土地だけなら売れる可能性は増しますが、近年は解体費も上昇傾向にあり、十分なお金が手元に残るとは限りません。これから不動産を購入する方は、売却時を想像し、また「資産となる不動産」をご検討いただく事を強くお勧めします。

リモートワークの普及などで住み替えが頻繁になり、持ち家と賃貸を行き来する暮らし方も増える事が予想されています。いずれにせよ、多くの方が不動産に興味を持ち、自分の生活の場である不動産が「資産形成」の場でもある事を把握していただきたいと思います。今後の参考にお役立て下さい。

法人営業部 犬木 裕

今後の不動産市況はどのようになっていくのか前のページ

2023年6月 フラット35金利のご案内次のページ

ピックアップ記事

  1. 買ってはいけない物件を自分でチェック
  2. 住宅購入は不安でいっぱい
  3. 土地価格の相場を知る方法
  4. 立地適正化計画をご存知ですか?
  5. 建物インスペクションを実施する最適なタイミングとは?

関連記事

  1. 不動産取引ガイド

    民法改正(成人年齢変更)と不動産取引

    2022年は改正民法が施行され、成人年齢が20歳から18歳に引き下げら…

  2. 不動産取引ガイド

    お隣さんと土地を出し合い小道整備 地役権を活用しての街づくりとは?!

    先日、興味深い記事が日本経済新聞に出ていましたので、ご紹介したいと思い…

  3. 不動産取引ガイド

    あぶないブロック塀のチェックポイント!

    大阪北部地震でおきたブロック塀の倒壊、いまだに余震とおもわれる地震が続…

  4. 不動産取引ガイド

    住宅購入 最初に理解すべきこと

    エージェントの中田です。私は、日頃皆様の住宅購入のお手伝いをしてい…

  5. 不動産取引ガイド

    新様式の住宅

    コロナ禍による影響で「新しい生活様式」が提唱され、住宅の間取りにも大き…

  6. 不動産取引ガイド

    災害想定区域の住宅購入は更なる『注意』が必要!

    国土交通省は新築住宅向けの補助金政策を改める事が発表されています。災害…

  1. 不動産取引ガイド

    子供部屋の概念を変えてみる!?
  2. デザイン

    中古住宅ならではの家づくり 設備も間取りも思いどおりに実現できました
  3. 不動産取引ガイド

    困った間取り⁉
  4. 不動産取引ガイド

    不動産仲介会社はなぜ新築を売りたいのか?その1
  5. 不動産取引ガイド

    団地再生プロジェクト始動?!団地の未来はどうなるのか!
PAGE TOP