金融機関から最もいい条件と提示された「変動型」の住宅ローンに決める方が非常に多いです。戸建ての新築住宅を購入するため、3000万円を地銀から借り、複数の銀行のプランを慎重に比べ、「変動型」は「固定型」よりもお得に金利面は低く、魅力的に感じられると思いますし、気になるのは金利の動向です。その為、これから住宅購入をされる方は、住宅ローンの金利上昇時の対応は考えておいて欲しいと思います。
■住宅ローンの「変動型」「固定型」の違いについて
変動金利型の住宅ローンは半年ごとなどに金利を見直す商品となります。2016年の日銀のマイナス金利政策導入以降、銀行間の競争激化もあって新規貸し出し向けの変動金利は一段と低下しました。大手銀行では現在、最優遇金利で年0.3~0.5%台で推移しています(2023年10月26日現在)。一方、10年固定型はおおむね年1%台前後、住宅金融支援機構と民間銀行が提携して扱う全期間固定型住宅ローン「フラット35」は年1.8%台の水準にあります。
住宅金融支援機構の2023年4月調査によると、住宅ローン利用者のうち変動型は約7割と15年調査の4割程度から増えています。変動型は目先の返済額が全期間固定型や固定期間選択型より少なく済む傾向があります。足元では大手行が10年固定型の基準金利を引き上げる一方、変動型は据え置いており、変動型と固定型の金利差が拡大しています。
■住宅ローンの「変動型」の注意事項について
注意が必要なのは変動型の金利にも先高観が出始めていることです。国内の物価上昇などを背景に日銀が金融緩和政策の修正を今後進めるとの見方が強まっています。その為、変動型の適用金利は金融機関がそれぞれ決めた基準金利から、個人の信用力などに応じた優遇幅を引いて決まっています。優遇幅は完済するまで一定のため、返済中の適用金利は基準金利が動いたときに変わります。多くの金融機関は優良企業向けの貸出金利である短期プライムレートに一定幅を上乗せして基準金利を決めています。その上乗せ分が金融機関によって異なる為、金融機関同士の比較が必要となります。短期プライムレートは日銀が決める短期の政策金利に連動しやすいと言われています。
日銀の政策修正時期や、政策修正を受けて金融機関が基準金利を引き上げるのかなどは不透明となり、変動型を借りることを決めている方、あるいはすでに借りている人なら、金利上昇が発生しても家計が対応できるかどうかを点検することが大切です。住宅ローンは返済が長期に及び、金利動向は家計に大きく影響する為です。
■「変動型」の住宅ローンを借りている方で金利上昇時にどのように備える?!
ではどのような手順で家計の対応力を確認すればいいのかを解説したいと思います。まず必要なのは、適用金利が上昇した際に毎月の返済額がどのくらい増える可能性があるかを知ることです。可能であれば、適用金利が2%程度上昇するケースまで想定しておく事をFP(ファイナンシャルプランナー)は推奨する方が多いようです。その理由はバブル経済後の変動型の適用金利をみると、年2%台半ばの水準だった時期があるからです。
4000万円を期間35年・変動金利年0.5%で借り、月約10.4万円を返済する場合でシミュレーションしてみたいと思います。適用金利が返済を始めて5年後に0.5%上昇すると月の返済額は11.2万円になります。上昇幅が1%なら12万円、1.5%なら12.8万円に増え、2%まで拡大すれば13万円と当初の返済額に比べ2.6万円の負担増となります。
金利上昇の影響は返済を始めた時期に近いほど大きくなり、返済があまり進んでいないのは残高が多いためです。金利上昇幅が1.5%になるのが返済開始5年後なら、返済額は12.8万円。15年後の12万円に比べ8000円多くなります。
適用金利が上昇したらどんな対応策があるのか。毎月の収支に余裕があれば月返済額が増えてもカバーすることが可能だが、利息が増えているぶん返済総額は上昇します。負担を抑えるには住宅ローンの残高を減らすことが有効となり、例えばローンの残高の一部を前倒しで返す繰り上げ返済が有力な選択肢となります。
金利が上昇した際に一定の金額を繰り上げ返済すれば元金と利息負担が減り、毎月の返済額を金利上昇前と同じ水準にする事が可能となります。金利が返済開始から5年後に0.5%上昇した場合に約240万円を繰り上げ返済すると毎月の返済額を維持でき、2%の上昇なら約840万円が必要になるとなります。
変動型で借りているなら、まず金利上昇時に繰り上げ返済に充てるだけの余裕資金があるかを確認したいです。変動型は低金利で毎月の返済額が少ないぶん、運用などで余裕資金を増やすべきです。
繰り上げ返済の資金が不足しているなら、自宅の時価がローンの残高を上回っているかを把握する事も重要です。上回っていれば、返済が万一行き詰まっても自宅の売却で完済できるからです。自宅を手放すことになりますが、最悪のケース、金利上昇時の手段はあるといえます。自宅の時価がローン残高を下回っていても残高との差額を上回る資金があれば、自宅売却と併せて完済することが可能です。
自宅の時価はマンションなら同じ建物内で売りに出ている例や、周辺で同程度の広さや築年数の物件の販売価格が参考になります。もし相場感を把握したい方は、下記の物件提案ロボというサービスの登録をしておいていただくと、ネットに公開された新着案件情報が毎日、お手元にメールで届きます。本来であれば、購入検討者・買い替え検討者の方にご利用いただくサービスですが、周辺の不動産情報を把握する事にもご活用いただけます。
<物件提案ロボのご案内はこちら>
https://self-in.net/rlp/index.php?id=rchukai2
繰り上げ返済に充てたり、ローン残高と自宅の時価の差を埋めたりするだけの資金がなければ、金利上昇への家計の余力は乏しいと判断されます。少しずつで良いので危機感を持って毎月の収支を見直し、貯蓄などで資金を確保できるようにしておいて欲しいと思います。
今後の参考にお役立て下さい。
法人営業部 犬木 裕