不動産取引ガイド

中古住宅購入時のリフォーム会社を選ぶポイント

中古住宅購入時にリフォームを実施される方が多いです。
設備交換やクロスの貼り換え程度なら良いのですが、せっかくだから思い切ってリフォームしたい方にとっては、どんな事業者に任せればよいのか、判断に迷うところだと思います。
今回は中古住宅購入時のリフォーム会社を選ぶポイントについてご説明いたします。

■「より良いものをより安く」を過剰に求めるのは危険です

まず初めに、リフォーム業者の選定にあたって価格の安さを過剰に求めるのはあまり良い判断ではありません。
設備機器などの「モノ」は安いに越したことはないのですが、リフォーム費用の多くは「ヒト」にかかるコストであり、安さを追求するということは施工の質を考慮しないことと同義だからです。
特にリフォームは現場の状況を適切に判断し、その状況に適した造作を行わなければならない場面が多く、適切な判断や対処だできる技術者が他に比べて安いということはあり得ないので、コストばかり気にして事業者選びを行うと、質の悪い事業者を捕まえてしまう恐れがあります。
もちろん事業者の言いなりになって青天井で費用を負担するのは間違いなので、価格に対する警戒は必要なのですが、事業者の善し悪しを判断する上で、お金はあまりに具体的過ぎて、実績や技術力など見えにくい判断材料を見落としてしまう恐れがありますので、安心して取引を行いたい方は過剰に価格を追い求めるのは止めた方が良いと思います。

■事業者に対する警戒は希望する工事の程度による

リフォームと一口に言っても内容は様々です。
リフォーム事業者選びのリスクは工事の規模が大きくなればなるほど高まります。
例えば少し前に人気のあったリフォームをテーマとしたテレビ番組のように、その物件が抱える問題を解決するようなリフォームを希望する場合、現状を正しく把握し、生活改善案を設計し、きちんと施工するといったように、相応の技術力を持つ事業者でないと、希望するリフォームを実現することは難しいでしょう。
また、完成のイメージをご自身で明確にできる方も多くないと思いますので、皆さんの希望を丁寧にヒアリングし、設計に反映できる対応力も必要です。
築年数が古い戸建て住宅では、住宅性能に関する確かな技術が求められます。

反対に単に設備を交換するだけ、クロスを貼り換えるだけの軽微な工事の場合は、誰でも良いとは言いませんが、そこまで事業者選びのリスクを警戒しなくても良さそうです。

■万が一の体制を確認する

リフォーム事業者選びで欠かせないのが万が一の場合の対応です。
「うちはしっかりやりますので心配しなくて大丈夫ですよ」というような事業者を信用してはいけません。
施工における事故は、事業者の善し悪しに関わらず発生するものも多いからです。
ここで確認したいのが工事に対する保証です。
多くは1年程度なのですが、アフターがしっかりしている事業者は2年以上、場合によっては10年など長期間の保証メニューを用意している会社もあります。
また、施工後の点検やメンテナンスの体制も安心材料となります。
ここで判断を誤ってはいけないのが、この安心材料にはコストがかかるということです。
採算度外視で何でもかんでも無料で付けてくれる会社もありますが、基本的には手厚い体制には費用がかかると認識しておいた方が現実的です。
採算度外視のアフターサービスは確かに魅力的かもしれませんが、その会社が倒産してしまうと元も子もありません。
まずはしっかりとした体制を用意しているかを確認しましょう。

■補助金に関する情報提供を求める

ここからはクロスの貼り換えなどの軽微な工事ではなく、比較的まとまった規模のリフォームを想定します。
現在省エネや耐震など主に住宅性能を向上させる工事に対する様々な補助制度が設けられています。
単なる設備交換だったとしても、省エネ性能が高い製品を選ぶことで、補助制度の対象になることもあるので、希望するリフォームの内容がある程度まとまったら、利用できる補助制度がないか確認してもらいましょう。

いちいち投げかけないと情報が得られないのは不満に思えるかもしれません。
もちろん気の利いた事業者は先回りして情報提供や提案を行ってくれます。
しかしこういった事業者の好意におんぶにだっこでは思わぬトラブルに巻き込まれる原因となります。
リフォーム事業者と最終的に交わす契約は請負契約です。
発注者である皆さんが希望したものを、リフォーム事業者が実現するという建てつけです。
このように説明されると当たり前のようにスッと入ってくるかもしれませんが、この請負契約の関係を悪く表現すると、「言われたことはきっちりやるが、言われないことはやらない」ということになります。
請負契約で動く事業者は本質的に「受け身」であると認識した方が良いです。

補助金の場合は、補助金の金額にも寄りますが、特に高額の補助となる場合は、結果的に制度が利用できない、では困ります。
そのため影響が大きいものについては、補助金の利用が前提であることを明文化しておくのが最低限の対策となります。
冗談みたいな話ですが、事業者の手続きミスで補助金が利用できなかった、というのはよくある失敗事例です。
何でもかんでもお任せ、は危険だということがご理解いただけると思います。

■資格者を確認する

特に木造戸建て住宅のまとまったリフォームをお考えの場合は、建築士が在籍し、建築士事務所登録を行っているというのが事業者選びの判断材料になります。
これは技術と制度の理由があります。

まず技術面ですが、リフォーム会社や工務店には必ず建築士が在籍していると思われている方が結構多いのですが、実は建築士が不在のリフォーム会社や工務店は意外と多いです。
建物の状況を判断し、適切に設計を行うのが建築士の役割なので、戸建て住宅でまとまったリフォームを行う場合は、建築士が不在だと心配です。
ちなみに何でもかんでも一級建築士にこだわる方がたまにいらっしゃいますが、戸建て住宅の範囲であれば二級建築士で十分なので、一級・二級と書かれると質の差と捉えてしまいがちですが、建築士にも様々ありますので、リフォーム専門で実績のある二級建築士の方が、大規模建築物の設計しかやってこなかった一級建築士よりも安心できるということも多くありますので、ご注意ください。

続いて制度面ですが、補助制度などを利用したい場合に、建築士事務所登録のある事業者に所属している建築士による証明が求められることがよくあります。
建築士事務所登録を行っていないリフォーム会社や、そもそも建築士が不在のリフォーム会社に頼むと、こういった証明が必要になった場合に、余分な費用が発生したり、最悪の場合は証明ができないので、制度が利用できないといった状況も起こり得ます。

以上のように、戸建て住宅でまとまったリフォームを検討する場合は、建築士が在籍している事業者を選ぶことが大切です。

■不動産取引に詳しい事業者を選ぶ

今回の記事は住んでいる家のリフォームではなく、中古住宅を購入してリフォームを実施することを想定していますので、事業者選びの基準には、当然ながら中古住宅取引に詳しいというポイントが挙げられます。
リフォーム工事そのものは不動産取引が終了して所有権が移転してからとなりますが、工事に至るまでに必要な現地調査、見積り、請負契約などは不動産取引と並行して実施しなければなりません。
特にリフォーム費用を住宅ローンに組み込むことをお考えの場合は、かなり早い段階でリフォームの見積り(場合によっては請負契約)が必要となります。
しかし売主の立場で考えると、取引が成立するかどうかも分からない段階で、あれこれ調査されるのは気持ちの良いものではないので、結果的に売買契約を行わないとリフォームについて具体的に動くことができない場合が多いです。
ただ、住宅ローンにリフォーム費用を組み込む場合は、住宅ローンの正式審査の段階でリフォーム内容を固めておかなければならないので、売買契約の前後はスケジュールがかなりタイトで、不動産取引の都合もリフォーム工事の都合も、どちらも理解している事業者でないとコントロールできないのです。

中古住宅を購入してリフォームしたいという希望だけでは、不動産取引に詳しいかどうか確認できないので、少し突っ込んで、「リフォーム費用を住宅ローンに組み込みたい」「これまで対応した事例を知りたい」「全体のスケジュールを知りたい」といったような具体的な質問を投げかけて、事業者が回答する様子で判断した方が良いでしょう。

不動産仲介とリフォーム業務のどちらも行っている事業者が良いように思えますが、不動産会社がリフォームも行っている場合、先に記載した建築士や建築士事務所登録が伴っていない会社が多いので、しっかり確認してください。

■リフォームに失敗しないコツは密なコミュニケーション

メッセージアプリやメールの存在で、事業者との直接のコミュニケーションを避ける風潮がありますが、リフォームにおいては全く逆で、事業者とのコミュニケーションを端折ることがトラブルの原因になります。
希望するリフォームと言っても、具体的に完成形をイメージできる方はほとんどいないと思います。
皆さんと事業者が想定している姿が共有できていないと、完成してから「こんな仕上がりとは思わなかった」とトラブルになるのです。
また、事業者選びについても、メッセージアプリやメールなどで得られる情報は限定的で、信頼できるかどうかは、実際に会って、話をしてみないとわからないことが多いです。

変に営業されるのではないかと慎重になる気持ちもわからなくはないですが、ネット通販ではないので、メッセージアプリやメールで薄く関係を始めたとしても、結局のところどこかで実際に会わないと取引を完了することができないので、物件探しの初期段階から積極的に事業者とコミュニケーションを取って、まずは信頼できる、相性の良い事業者探しを行うことをお勧めします。

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