不動産取引ガイド

トラブルが相次いでいる?!「リースバック」の注意点について

自宅に住み続けながら資金を調達する方法として注目されている「リースバック」。
自宅をいったん売却し、その後は賃貸契約を結んで同じ家に住み続ける仕組みです。
従来は80代前後の高齢者が老後資金の確保を目的に利用するケースが多かったが、近年は50代・60代といった現役世代でも検討する人が増えています。

■自宅に住み続けながら資金を調達する「リースバック」について

背景には、住宅ローン負担の増加や収入不安、物価上昇など、家計を取り巻く環境の変化があるとみられます。
しかし、その利便性の一方で、契約内容を十分に理解しないまま利用すると、生活基盤そのものを揺るがしかねないリスクも潜んでいます。
例えば、50代の男性の相談事例では、退職後に無職となり、生活費不足から借金が約300万円に膨らみました。
手元資産は自宅のみで、リースバックによる資金調達を検討。
不動産会社からは約2000万円での買取提示を受けたが、この金額だけで判断するのは危険です。
売却後には家賃の支払いが発生し、さらに契約条件によっては長く住み続けられない可能性もあるためです。
短期的には資金繰りが改善しても、中長期的には住居と資金の両面で不安定になるケースも少なくありません。

■「リースバック」の売却価格は市場価格の7〜8割程度

一般的に、リースバックの売却価格は市場価格の7〜8割程度とされる。
これは仲介ではなく、不動産会社による直接買取であるためです。
スピーディーに現金化できる反面、本来得られるはずの売却益よりも低くなります。
また、売却後の賃貸契約にも注意が必要です。
契約形態には、更新が可能な「普通借家契約」と、期間満了で終了する「定期借家契約」があります。
後者の場合、契約期間終了後に再契約できる保証はなく、結果的に退去を迫られるリスクがあります。
その為、「自宅に住み続けながら資金を調達する」という文言だけで判断してしまうと思わぬトラブルとなる可能性があります。
さらに大きなポイントとなるのが賃料水準です。
事業者によって差はあるものの、年間賃料が売却価格の6〜10%程度に設定されるケースが多くあります。
仮に2000万円で売却し、年間家賃が160万円(8%)とすると、13年ほどで売却額に相当する金額を支払う計算になります。
勿論、更新料や値上げの可能性もあり、長期間住み続けるほど経済的負担が増していく構造となっています。

■トラブルが相次ぐ「リースバック」?!

見落とされがちなのが「再取得の難しさ」です。
一部のリースバック契約には買い戻し特約が付くこともありますが、その価格は売却時より高く設定されるのが一般的で、実際に買い戻せるケースは限定的といわれます。
つまり、一度手放した自宅を再び所有することは容易ではなく、将来的な選択肢が狭まる可能性もある事です。
こうした点から、専門家はリースバックだけに頼るのではなく、他の選択肢と比較検討する重要性を強調しています。
例えば、自宅を担保に資金を借りるリバースモーゲージであれば、借入額は物件価値の5〜6割程度にとどまるものの、所有権は維持される。
また、住宅ローンの返済が厳しい場合には、金融機関に返済条件の変更(リスケジュール)を相談することで、毎月の負担を軽減できる可能性もあります。
任意売却や住み替えといった手段も含め、状況に応じた選択が求められます。
一方で、リースバックが有効に機能する場面も確かに存在し、例えば、入居予定の高齢者施設が満室で、入居待ちの期間だけ資金を確保しながら住み続けたい場合や、相続対策として資産を現金化したいケースなどです。
また、事業資金や急な支出への対応として、短期間でまとまった現金が必要な場合にも一定のメリットがあります。
重要なのは、「今いくら手元に入るか」だけでなく、「その後の生活がどうなるか」という視点です。

■リースバックの利用は「その後の生活がどうなるか」で選択する!

家賃負担は継続的に発生し、契約内容次第では住居の安定性も左右されます。
さらに、高齢期に再び賃貸住宅を探すことの難しさも考慮すべきです。
特に単身高齢者の場合、保証人や収入面の問題から新たな住居確保が難航する可能性があります。
リースバックは、使い方次第で有効な資金調達手段となる一方、条件を誤れば生活の質を大きく損なうリスクもあります。
契約前には複数の不動産会社から見積もりや条件を取り寄せ、賃料や契約形態、将来の見通しを丁寧に比較することが不可欠です。
また、ファイナンシャルプランナーや不動産の専門家など第三者の意見を取り入れることで、より客観的な判断が可能になります。
目先の資金繰りだけにとらわれず、長期的な視点で住まいと資産のバランスをどう保つかを検討するべきです。
リースバックを検討する際には、その本質を正しく理解し、自身のライフプランに照らして慎重に判断することが求められています。
今後の参考にお役立てください。

法人営業部 犬木 裕

ローン特約条項について詳しく掘り下げる前のページ

中古戸建てを購入して建て替える場合の注意点次のページ

ピックアップ記事

  1. 買ってはいけない物件を自分でチェック
  2. 住宅購入と 生涯の資金計画
  3. その家は人口減少した将来でも売ることができる家ですか?
  4. 住宅購入は不安でいっぱい
  5. 土地価格の相場を知る方法

関連記事

  1. 不動産取引ガイド

    注文住宅づくりにかかる費用とは!

    家づくりには、家の本体工事以外にも様々な費用が必要になります。…

  2. 不動産取引ガイド

    スルガ銀行のシェアハウス問題から学ぶ住宅ローンの考え方

    スルガ銀行のシェアハウス問題を巡る投資トラブルが長期化しつつあります。…

  3. お金

    賃貸併用住宅の落とし穴?!収支に注意を!

    家主の自宅と賃貸案件を兼ねた賃貸併用住宅が増えているようです。家賃収入…

  4. 不動産取引ガイド

    戸建て住宅を検討されている方必見、外壁塗装診断で利用されるABCチェックについて

    戸建て住宅を購入する前・購入後に住宅のメンテナンスは必須です。■外…

  5. 不動産取引ガイド

    東京23区のアパートは空き家だらけ

    日本経済新聞の報道によれば、不動産調査会社が発表した2016年3月の賃…

  6. 不動産取引ガイド

    9月1日は防災の日。豪雨や地震に対する公的補償について

    9月1日は防災の日。台風や高潮、地震など自然災害について認識を高め、対…

  1. 不動産取引ガイド

    帰任に備えた海外赴任者 日本の家探し 5 【事前準備~売買契約締結 編 3/9】…
  2. 不動産取引ガイド

    マンションと戸建て、どちらが住みやすい?
  3. 不動産取引ガイド

    自民党「空き家の所有者情報の外部提供等、2017年6月めどに提言をまとめる方針」…
  4. お金・ローン・税金

    火災保険の家財の保険金額の設定方法はどう決定すれば良いのか…
  5. お金・ローン・税金

    中古住宅がもっと身近に!「平成30年度税制改正要望(国土交通省)」
PAGE TOP