熊本の地震で被災された皆様に心よりお見舞い申し上げるとともに、1日も早い復興をお祈り申し上げます。今回は万が一震災が発生した場合、どのような手続きを行えばよいのかについてご説明いたします。実際の震災時には窓口が混乱していて、受付対応が十分でなかったり、調査がずいぶん先になることも予想されますが、2次災害も考慮して冷静に対処する必要があります。
①やむを得ない場合でも緊急判断を求めましょう
倒壊または半壊した家屋に立ち入ることは危険です。相次ぐ余震で倒壊するかもしれません。薬など必要なものを取りに行かなければならない場合は、建築に携わったことのある人に意見を求めることが大切です。貴重品を持ち出したり、家の片づけを行いたい気持ちはわかりますが、建物の傾きや壁の亀裂など少しでも怪しいと思われる損傷が見られる場合は応急危険度判定までは家屋に立ち入らない方が良いです。
②建築士による応急危険度判定
応急危険度判定は公的な判定制度です。判定士の資格を持った建築士が全国から集まり、自治体を通じて「調査済み」「要注意」「危険」の判定をします。本来は急いで行う必要があるものですが、人命救助、最低限のライフラインの確保、避難所の整備等のほうが緊急性が高いため、少し落ち着いてから順次行われます。避難所生活の皆様は早く家に帰りたいところですが、まずは判定を受けることが大切です。
③自治体によるり災証明
ある程度状況が落ち着いたら自治体による被害認定を行います。「全壊」「大規模半壊」「半壊」「一部損壊」の判定で、「り災証明書」が発行されます。「り災証明書」は各種支援金や支援制度を申請する時に必要になります。
<参考>災害に関わる住家の被害認定基準運用方針
http://www.bousai.go.jp/taisaku/pdf/shishinall.pdf
④損害保険会社による損害認定調査
被保険者からの請求に応じて、専門の判定員が派遣され損害認定を行います。損害保険会社は全国から判定員となる建築士を募集して派遣するので、損害認定には多少時間がかかります。損害保険会社による損害認定と自治体によるり災証明の内容は同じではありません。自治体では全壊と認定されたのに損害保険会社で半損と認定されることがあります。
⑤住宅再建の際には建築士による耐震診断を
今までのものは、危険性の判定や被災状況の認定であり、構造の判断ではありません。状況が落ち着いて、家屋の片づけとともに被害住宅の修繕工事が始まりますが、被災家屋の構造的な判断は専門家でも困難な業務ですので、修繕工事の際に建築士に依頼して耐震性を確認し、必要な耐震改修工事を実施することが大切です。