不動産取引ガイド

増える「安心R住宅」中古不動産流通の促進に向けて

先日、国土交通省は「安心R住宅」の実施状況を公表しました。

「安心R住宅」は、既存住宅(中古物)の流通促進に向けて、「不安」「汚い」「わからない」といった従来のいわゆる中古住宅のマイナスイメージを払しょくし、「住みたい」「買いたい」既存住宅を選択できる環境の整備を図るため、平成29年に創設された制度です。

具体的には、「耐震性等の基礎的な品質を備えている」「リフォームを実施済み又はリフォーム提案が付いている」「点検記録等の保管状況について情報提供が行われる」といった要件を満たす既存住宅となっています。

「耐震性」に関しては、新耐震基準で建築された建物であることが要件ですので、一定程度の耐震性は確保されていることが確認できます。

ただ、現行の耐震基準よりは一昔前の基準になるため、新築建物と同等とまでは言えません。
もちろん、診断した結果現行の耐震基準も満たしているケースもあるとは思いますが、一概に安心ですとまでは言えないことに注意が必要です。

また、リフォームに関する項目も、リフォーム提案が付いていればOKということなので、既存住宅の汚いイメージを払しょくし切れるかと言うと、そうも言えません。

いくらリフォームすれば綺麗になる、と言われても、やはり見た目の印象は大きなマイナス材料となってしまいます。

さらに、点検記録等の保管状況については、保管している状況についての告知のみですので、
「保管していません」「点検していません」という結果だったとしても「安心R住宅」として認定されてしまいます。

この点に関しては、「しっかりと点検され、その記録が保管されていること」を要件にすべきだった気がします。

ただ、その要件を徹底してしまうと、「安心R住宅」に該当する建物が少なすぎて、制度自体が形骸化してしまう心配もあったのかもしれません。

このように、単純に「安心R住宅」だから安心、という結論にはならなそうですが、一つの目安として捉えることはできると思います。

こうした基準を参考にしつつ、実際にインスペクションを入れる、リフォーム後の物件を併せて見学することでイメージを膨らませる、などの方法を取り入れることで、本当に安心して既存住宅(中古住宅)を購入することができるのではないでしょうか。

既存住宅(中古住宅)には、新築建売の画一的なデザインや間取りとは違う、個性的な面白さがある建物もあります。

ぜひ、幅広い視野で、理想のお住まい探しを進められてください。

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