住宅ローンシリーズの3回目です。
今回はなぜ家を買う時に事業者が変動金利を勧めるのかについてご説明します。
なぜ仲介会社は提携ローンを勧めるのか?
さて、今回のシリーズの一番の問題点に入ろうと思う。
ここまで聞いて、住宅ローンどっちがいいって聞かれたら、変動金利と固定金利どっちを勧める?
人に勧めるなら固定金利ですね。
リスクよりも安心が大切です!
ところが多くの場合、仲介会社やデベロッパーなんかは、提携ローンとか言って変動金利を勧めてくる。
反対に固定金利のフラット35を勧める仲介会社は本当に少ない。
そうなんです!
提携ローンってよく聞きます!
また、同じ変動金利でもネット系はあまり勧めてこない。
変動金利ならどこでもあまり変わりませんよね?
そんなことはないよ(笑)
融資手数料とか保険とか銀行はがんばって商品設計してるから。
話の筋はそこじゃない。
本題はなぜ仲介会社は提携ローンを勧めるのか?ってところだ。
提携ってことは他社と違って金利が低く設定されているとか?
多少の割引はあると思うけどそうじゃない。
理由は手続きが事業者にとって楽だからだ。
えっ?
それって住宅購入者には関係ないですよね。
本質的にはその通り。
住宅ローンの手続きを仲介会社が行わなければならないわけではないけど、住宅ローンが組めないと取引が成立しないから、サポートする必要がある。
でも住宅ローン商品は本当に多岐に渡っていて、銀行ごとに審査基準も書類も変わるから、いちいちお客さんの要望を聞いていられない。
審査が微妙な時や、書類のミスなんかもあるから、仲介会社の担当者としては、よく知った金融機関を使いたい、というわけだ。
お金を借りるのは住宅購入者なんだから、任せればいいんじゃないですか?
それが最悪のパターンだね。
住宅ローン特約の関係で、住宅ローンの手続きには期限が設けられるんだけど、消費者は割と気軽に考えている人が多い。
ところが、住宅購入者の手続き遅延で契約が破断になりました、となると、最悪の場合住宅購入者が違約金を払わなければならなくなる事態に陥る。
あと、当然ながら担当した仲介会社の信用はガタ落ちで、以後まともに取引をさせてもらえなくなる。
仲介会社がネット系住宅ローンを嫌がる理由がこれ。
ネット系は住宅購入者が直接やり取りをしなければならないから、仲介会社が代行できない。
つまりはお客様の動きが全く見えない。
そんなに信用ないんでしょうか。
そうじゃない。
でも額が大きな取引だから、関係者も多いし、手続きもややこしい。
「やっぱやめました」「うっかりしてました」は通用しないんだよ。
だから、仲介の担当者は確実に取引できることを優先してしまう。
悪い言い方をすると、ローンが組めれば何でもいい、というのが事業者の本音だ。
なんだか太郎さんの話を聞くとモヤモヤします。
事実なんだから仕方がない。
事業者はあれこれ上手い理由を言ってくるけど、結局のところ、都合が良いように取引が進むことを優先しているだけだからね。
でも言われるがままにローンを組むのは納得いきません!
まあまあそう言わずに。
初めから一貫して固定金利を勧めている理由がここにもあって、不動産の取引っていろんなことを判断しなきゃいけないよね。
立地とか、家の状態とか、リフォームとかですか?
住宅ローン減税や瑕疵保険、インスペクション、火災保険なんかも出てくるよね。
頭がこんがらがってきます。
住宅ローンは金融商品だ。
当然リスクを伴う。
慎重に選びたいよね。
安心が第一です!
不動産取引のようにたくさんのことを決断しなければならないタイミングで、リスクを適切に判断して安い方を選ぶなんて、できると思うかな?
無理ですよ~。
だから、住宅ローンの話になると、リスクが吹っ飛んで、金利が高いか低いかだけが判断基準になってしまうんだ。
このシリーズの初めはチュースケもそうだっただろう?
はい…。
金額が出てくると安い方がいいって思っちゃいます。
余程金融に詳しい人は別だけど、普通の人、特に初めて家を買う人はとりあえずフラット35にしておく方が無難だ。
その後勉強して、きちんとリスクが判断できるようになってから、借り換えをすればよい。
でも融資手数料とか無駄になりますよね。
万が一が起こって返済に困るより何倍もいいと思うけどね。
それに仲介会社の言いなりにはなりたくないんだろう?
それはそうですね。
ところで太郎さん。
初めの変動金利と固定金利のどちらが良いですか?の質問に対する回答が少し変でしたよね。
ああ。
「このような質問をしてくる人には固定金利をお勧めしている」と言ったね。
金融に詳しい人は変動金利と固定金利のどちらが良いですか?なんて聞いてこないから。
だからこの質問が出る度にあなたは固定金利の方が無難だよって答えている。
そういうことだったんですか。
話の流れから、今回のシリーズのようなやり取りに繋がるわけで、結果的に適切な判断材料が提供できているよ。
住宅ローンは金融商品です。
各社ともメリットもあればデメリットもあります。
※当然ながらフラット35にもデメリットがあります。
本当はよく吟味して選択したいのですが、不動産の取引は、特に契約から引き渡しまで、かなり慌ただしく進行してしまうので、そうはいきません。
勉強するタイミングは住宅購入を検討する前が本当は最適なのですが、やはり家を買うぞ!と決めると、物件情報に目が行ってしまいがちです。
しかし、物件探しの前に住宅ローンの検討をされることを強くお勧めします。
物件が決まらないと相談できないと思われている方もいらっしゃるのですが、現在の住宅ローンの仕組みは物件に対してというよりは、借りる人の属性(年収やクレジットヒストリーなど)が重視されるので、物件が決まってなくてもどれくらいの金額の融資が受けられるか、判断することができます。
何より、予算が正確に把握できていない状態では、適切な物件探しは実現できません。
今は経済環境が大きく変動しているタイミングです。
こういった時には、将来のお金の話については、慎重に、安全に判断することをお勧めいたします。
最後に、今回は変動金利と固定金利のどちらが良いか?という設問からスタートしました。
でも実際には「良い」「悪い」の2軸ではなく、様々な判断材料があります。
これは住宅ローンに限ったことではありません。
不動産購入で判断に迷った時は「良い」「悪い」ではなく、なぜ良いのか?何が良いのか?判断基準を少し掘り下げることをお勧めします。
不動産購入は判断しなければならないことが多いのですが、なぜ?を書き出していくことで、意外とすっきり判断できるようになりますよ。