不動産取引ガイド

改正地域公共交通活性化再生法をご存知ですか?将来、電車が走らないエリアも・・・?!

突然ではありますが、「ローカル路線」を取り巻く経営環境は厳しい状況が続いています。「ローカル路線」とは、一般的に地域や特定の地域内で運行される鉄道やバスなどの公共交通機関の路線を指します。これらの路線は、主に近隣の住民や通勤者など地域の利用者にサービスを提供することを目的としています。

■ローカル路線、地方34路線においては648億円の赤字!

JR東日本が11月21日に発表したデータによると、利用者が少ない地方34路線について、2022年度の営業収支が648億円の赤字だったようです。同社管内に限らず過疎が進む地方では赤字路線が多く、各地で存廃に向けた議論が始まっています。しかし、地域住民の足を維持するためのハードルは高く、今後は廃止決定のエリアも増えていくと思われます。勿論、このような状況は不動産の資産価値にも大きな影響を及ぼします。

JR東日本は1キロメートルあたりの1日の平均利用者数(輸送密度)が2019年度実績で2000人未満の線区の収支を公表しました。災害で一時不通などの線区を除き、対象の34路線62区間すべてが営業赤字だったようです。2021年度も650億円の赤字で不採算経営が続いており、コロナ禍に工夫をして、万年赤字だった千葉県のいすみ鉄道を復活させた事例は有名です。いすみ鉄道はムーミン列車やレストラン列車など、ユニークなアイデアを次々に打ち出して全国から観光客を集めました。その再建後は新潟県に転じ、再び赤字ローカル線の建て直しに取り組んでいる事例もあります。

■ローカル路線は運輸収支だけでは復活できない為、観光を味方につける必要がある?!

運輸収入100円を得るための経費(営業係数)が最もかかる区間は、久留里線の久留里―上総亀山間で1万6821円だったようです。同区間の輸送密度は1987年度に比べて7%の水準に落ち込んでおり、JR東日本は今後の再編に向けた協議を地元自治体に申し入れているようです。赤字ローカル路線はJR各社に共通する課題となり、JR東海を除く旅客各社は路線ごとの赤字額を公表し、各地で存廃を巡る協議に入ろうとしています。ちなみに、下記のような不採算路線が存在しています。今後のこのようなエリアで不動産購入をしてしまうと、資産価値を毀損する要因にもなりえる為、注意が必要です。

〇JR東日本の主な不採算路線
路線 区間 営業係数 赤字額
久留里線 久留里―上総亀山 1万6821円 2億4500万円
陸羽東線 鳴子温泉-最上 1万5184円 4億900万円
磐越西線 野沢―津川 1万3980円 8億8600万円
飯山線 戸狩野沢温泉―津南 1万2746円 9億4400万円
花輪線 荒屋新町―鹿角花輪 1万751円 4億9100万円

※本データは2022年度JR東日本の発表データより

協議を始めたとしても地域の足を維持するための解決策は難しい状況です。鉄道路線を維持するには自治体が鉄道インフラを保有して運用は企業に任せる「上下分離」方式や、経営主体と収益責任を地元に移す第三セクター化といった手段が候補に挙がっているようです。

〇ローカル鉄道の再構築における上下分離方式をめぐる課題
https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2022pdf/20221216028-1.pdf

上下分離方式はJR東日本では只見線の一部区間で導入したほか、私鉄の近江鉄道(滋賀県彦根市)も2024年度に取り入れる事になっています。しかし、地元自治体にとっては多額の負担が必要となります。また、赤字路線は、自然災害によってひとたび寸断されると、存廃議論が持ち上がりやすいという問題も抱えます。

■ローカル路線の赤字路線は自然災害を受けると不動産の資産価値が一気に下がる?!

2020年7月の豪雨災害で被災したJR肥薩線は、球磨川の氾濫により八代(熊本県八代市)―吉松(鹿児島県湧水町)間の約87キロメートルが不通となりました。復旧には235億円の費用がかかり、運転を再開できたとしても赤字路線であることがネックとなります。JR九州は熊本県などと協議を続けているようですが、鉄道での復旧に慎重な姿勢を崩していません。

歴史の古いローカル路線は山間部や河川を幾度も渡りながら縫うように進むため、土砂災害、河川氾濫の影響を受けやすいと言われています。自然災害の激甚化、頻発化により、復旧してもすぐに違う箇所が被災する繰り返しとなり、事業者の体力を奪っています。実はそのようなエリアの不動産は自然災害の影響を受けやすく、また、JR肥薩線のような事象が発生すると、不動産の資産価値が一気に下がる要素をはらんでいます。

■改正地域公共交通活性化再生法の施行により、今後、ローカル路線の存廃が懸念される!

赤字路線の存廃議論を促せるよう改正地域公共交通活性化再生法が2023年10月に施行されました。

〇改正地域公共交通活性化再生法
https://www.mlit.go.jp:8088/sogoseisaku/transport/sosei_transport_tk_000055.html

鉄道の維持を諦め、バス路線に切り替える手法も、バス運転手不足という問題が立ちはだかっています。JR北海道の鉄道路線を廃線にした後の代替バスに関する議論も停滞しているようです。勿論、バス運転手不足は自動運転等で代替えしていく事も検討されています。

いずれにせよ、車の完全自動化等のテクノロジーに代替えが進む事も考慮し、これから不動産購入をする際には、ローカル路線の廃線が議論されているようなエリアでは資産価値の事も考慮してください。

今後の参考にお役立て下さい。

法人営業部 犬木 裕

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