「家は一生に一回の買い物」「終の棲家」などかつては余程資産に余力がある方を除いて、家は一回買ったら亡くなるまで住み続けるのが常識でした。
中古住宅流通が活性化し、テレワークなどで就業環境も変化している中で「買った家に住み続けなければならない」ではなく「必要に応じて住み替えたい」と考える方が増えています。
今回は将来売ることを想定している方に知っておいていただきたいことをまとめました。
■買った家に住み続けることが難しくなるかもしれません
購入した家に愛着が湧き、近所付き合いも良好な場合、積極的に住み替えをしようとは思わないと思います。
子供が独立して遠くに暮らしている場合は、子供や孫が帰ってくる「実家」を維持したいという気持ちもあるでしょう。
しかし、これからの日本では購入した家に住み続けることは贅沢な選択と言えるかもしれません。
少し前に話題となった老後資金の問題です。
平均寿命が伸びる中、定年退職した後も長らく生活を維持しなければなりません。
年金だけでは心もとなく、政府は老後に向けての資産形成を呼びかけています。
病気などをせず、生活が維持できているうちは良いのですが、介護が必要な状況に陥るとそれまで先延ばしにしてきた問題が一気に顕在化します。
この時に資金面での問題を解決する選択肢になるのが持ち家という資産です。
自宅を売却した資金を施設への入居にかかる費用に充てることができれば、子供世代にかかる負担を軽減することができます。
「終の棲家」というのは一部の老後資産を形成することができた方だけが手にすることができる贅沢な選択になりつつあります。
■将来売れる家を買うことが重要です
将来売ることを想定している方が絶対にこれだけは気を付けなければならないのは、将来売ることが難しくなりそうなエリアを選ばないことです。
反対のことを言ったのがタイトルの「将来売れる家を買う」になるのですが、将来売れる家を見極めるのは難しいので、売れなくなる要素を排除していくのが現実的です。
20年も30年も先の話を予測することはできないからといって思考停止してはいけません。
不動産が売りやすいか売りにくいかは人口動態が影響するので、人口減少が懸念されるエリアを選ばないことで、将来売れなくなるリスクをある程度回避できます。
わかりやすい例を挙げると最寄り駅までの距離です。
車があるから大丈夫と軽く考えてしまいがちですが、高齢者の自動車事故は連日のように報道されています。歳を取ると運転できなくなるのです。
代替手段となるバスやタクシーも働き手不足でどんどん数を減らしています。
車があれば大丈夫を言い換えると「車がなければ不便」ということであり、車がなくても生活できるエリアに比べると”今でも”売れにくいエリアと言えます。
目先の価格に惑わされて、こういったエリアを軽く選択してしまうと、将来非常に困ることになります。
わかりやすい例をもう一つ。それは周辺の商業施設です。
中でもスーパーやコンビニは重要な指標となります。
これらの商業施設は人口が想定される下限を下回ると撤退してしまうからです。
「スーパーやコンビニが徒歩圏内にある」「1件ではなく数件存在する」などが所謂「生活が便利」と言われる条件と言えます。
反対に高齢者向け施設が目立つ、あるいは最近よく建設されているエリアは要注意です。
高齢者向け施設は人が集まる街に建てる必要がないため、これらの施設が多く見られるということは、人が集まらない街化が進行しているとも言えます。
最寄り駅からの距離、周辺の商業施設はわかりやすい指標なので参考にしてみてください。
■地元愛と相反する判断
将来売れなくなるエリアを選ばない判断は、所謂「地元愛」と相反する考え方です。
実家が近い、長年住んでいて愛着がある、といった経験や想いは、時として判断の邪魔にさえなるので気を付けたいところです。
地元愛でもう一点注意なのが、皆さんが相談される不動産会社は、地元密着で経営している会社が多いという点です。
その地域の不動産を取り扱う訳ですから、当然ながらその地域の良い面を積極的にアピールします。不動産会社と接する機会が少ないと「このエリアは大丈夫」と勘違いしてしまう恐れがありますので注意が必要です。
エリアの選定で重要なのは視野を広くすることです。
希望のエリアを想定すると、そのエリアの不動産情報しか見なくなる方がほとんどですが、これではエリアの検討ができません。
大都市圏と地方でどれくらい違うのか、同一県内であってもどれくらい違いがあるのか、など検討していないエリアの情報との比較を行うと、市場の動向や相場観を掴むことができます。
お勧めなのが「物件提案ロボ」です。
指定した条件に合致する新着物件情報を毎日メールでお届けする機能なのですが、価格や広さの条件は変えずに、エリアだけを変更して様子を見るという方法になります。
毎日届く新着物件情報数が多ければ予算とエリアの相場観がマッチしている状態で、反対に物件情報が少ない、まったくない状態だと予算と相場観がマッチしていないことがわかります。
例えば検討しているエリアから都市中心部よりのエリアに条件設定して、新着物件情報数や築年数が古い物件ばかり送られていないかなどをチェックします。
ここで送信される新着物件情報に問題がなければ、設定した予算だともっと都市中心部に寄せた「良い立地」を選択可能であることがわかります。
広範囲の検討は特に地元密着の不動産会社には嫌がられるかもしれないので、ネットツールを使ってご自身で調べるか、予め「購入希望エリアが決まっていない」と伝えて、相談に乗ってもらえるかを判断するのも一つの方法です。
■資産価値が下がりにくい家の買い方
ここまでは将来売りたくても売れないエリアを選ばないという話でした。人口減少、極端な少子高齢化、出生率おろか未婚を選択する人も増えている中で、住宅購入の常識がこれまで通りなわけがありません。
最後に資産価値が下がりにくい家の買い方についてご説明します。
資産価値が上がるではなく下がりにくいというのがポイントです。不動産は投機的な側面を持ちますが、投資を目的に購入する訳ではないので、価値が上がることは期待しない方が良いです。
建物の価値は経年で下がるのが普通なので、なるべく価値が下がらない家を選ぶことを目的とした方が良いです。
不動産の価値はほとんど立地です。
立地には広域立地と狭域立地の考え方があります。詳細は省きますが、なるべく都市中心部に近いエリアを選び、最寄り駅に近い立地を選ぶのが良いとされます。
また、特にマンションの場合は不動産価格が高いほど価値を維持しやすいという特徴もあるので、安ければ安いほど良いという考え方は持たない方が良いと思います。
そしてここが重要となりますが、資産価値重視の住宅購入は、個人的な満足と相反する傾向があります。
自己都合を追求した家は、他人にとっては何の魅力もない家ということです。
ただ、資産価値を重視するあまり我慢して生活するのもおかしな話なので、自分にとって60点、他人にとっても60点となるようなバランスがちょうど良いのではないでしょうか。
今の住宅購入が将来のご自身やご家族に大きな影響を及ぼします。
目先の価格や快適さに惑わされることがないよう、しっかりと検討したいものです。