不動産取引ガイド

もう少しリアルに人口減少問題を考えてみる

国立社会保障・人口問題研究所 所長の森田朗氏の記事が面白かったのでご紹介します。

”頑張ればまた、人口が増えて経済が発展していくんじゃないか?なんて漠然と考える人もいるが、そんなのは幻想でしかない”
http://www.minnanokaigo.com/news/special/akiramorita1/page3/

2040年には年間100万人の人が亡くなるそうです。恐ろしいですね。森田氏が仰る「人口が増えて経済が発展していく」幻想は、移民を受け入れるどころか、他国に統合されるレベルでないと実現できないのでしょう。

私たちは人口減少問題を多少甘く見ているのではないかと思います。インターネット・AI・ロボットなどともてはやされていますが、社会の礎は人であり、人に依存した社会構造である以上、その絶対数が減るという事実を重く受け止めるべきです。

2010年に1億2806万人だった総人口は、40年に1億728万人となって2078万人も減る見通しのようです。15%以上も減ってしまうと予想されています。
さらに深刻なのが高齢化に伴う生産年齢人口の減少です。2010年に8174万人だった生産年齢人口が2040年には5787万人と、2387万人も減ってしまうと予想されています。(約20%減少)

生産年齢人口6000万人割れに -2040年の日本、衝撃のシミュレーション
http://president.jp/articles/-/11641

こうして数字を見てみると、今の日本の社会があるいは今の常識が早晩通用しなくなると思われます。

住宅購入の話です。
これまでの常識では「家は一生で一回の買い物」で、一度家を買うと死ぬまでその家に住み続けると考えられていました。(後期高齢期の介護問題でこの考えは破たんしているのですが別の機会にします)
2017年に35年ローンを組んだ人はローン完済時は2052年です。果たしてその街は存続できているでしょうか。
破たんした自治体の惨状は夕張市の例で明らかです。全国最低レベルの行政サービスなのに全国最高レベルの税金が求められる。とても住んでいられないというのが普通の考えです。
自治体の問題は地方に限ったことではありません。東京都ではこれから急速に高齢者が増え続けることになります。自治体が破たんしないにしても、東京に住んでいるというだけで、他県よりも高い税負担になることは容易に予想できます。

一方、最近ではそんなに長く住むつもりはなく、子育てが終わって広さを持て余すようになったら売却して新しい住居へ住み替えることを想定して家を買う方も増えています。
仮に居住する期間を20年とします。今から20年後は2037年。2040年は目前ですね。生産年齢人口が20%減少するということは、それだけ家を買う人が減る、ということです。
あなたが検討している物件は、人口が2割減った時代でもなお「売れる」「貸せる」物件ですか?怖いのは住み続ける意思がなくても、物件を資金化できなければ移住ができない、という点です。不動産購入は「立地」が大切、というのはご理解いただけると思います。

※個人的な見解ですが、売りたくても売れない「負動産」問題(特にマンション)は、遅かれ早かれいずれ社会問題になると思います。

ちなみに人口が2割減ると、住宅会社も不動会社ももれなく2割不要になります。今まで以上に必死に住宅を売り込んでくる事業者が増えるでしょう。事業者の甘言に惑わされてはいけません。「夢のマイホーム」はもはや死語です。マイホームに浮かれていると、そのマイホームに人生を壊されかねません。住宅購入は冷静に、客観的に、多面的に検討することが大切です。

リニュアル仲介の稲瀬でした。

安心R住宅ってご存知ですか?前のページ

カフェテリアの様なこだわりのリノベーションが不動産の価値を劇的に下げてしまう理由次のページ

ピックアップ記事

  1. 立地適正化計画をご存知ですか?
  2. 建物インスペクションを実施する最適なタイミングとは?
  3. 土地価格の相場を知る方法
  4. 買ってはいけない物件を自分でチェック
  5. 住宅購入と 生涯の資金計画

関連記事

  1. 不動産取引ガイド

    土砂災害のリスク

    長雨や台風がもたらす大雨による災害が毎年懸念されており、今年もすでに大…

  2. 不動産取引ガイド

    不動産の贈与と注意点

    たまにですが、「マンションを妻名義にしたい」「親の土地を自分名義にして…

  3. お金・ローン・税金

    今後の不動産市況はどのようになっていくのか

    2023年の不動産市況も日々価格が上がっており、これからの展望が気にな…

  4. 不動産取引ガイド

    床面積を増やせる??そんな裏ワザがあるのはご存じですか?

    床面積の上限は、建蔽率や容積率で制限されるため、小さな土地に一定以上の…

  5. 不動産取引ガイド

    どのような戸建て住宅で雨水の浸入が多いかご存知ですか?

    2019年8月20日に日本木造住宅耐震補強事業者協同組合(略称:木耐協…

  6. 不動産取引ガイド

    家電が次世代型に変わると・・・

    パナソニックが次世代型「透明ディスプレイー」テレビを19年度にも国内販…

  1. 不動産取引ガイド

    購入する物件が決まった後にすること その6(ローンの金消契約について)
  2. お金・ローン・税金

    すまい給付金についての記事の紹介。
  3. 欠陥・トラブル

    気を付けたい「相続による不動産の共有」
  4. お金・ローン・税金

    親からの贈与などなど。贈与税はいくらからかかるかご存知ですか?
  5. 不動産取引ガイド

    中古戸建てを購入する際には「境界標」の事前確認を忘れずに!
PAGE TOP